魔王様、家族になる。

「そうだ、ドラのことを家族に紹介するよ」

『世話になるからな。挨拶ぐらいはするにゃ』

「あ、でも喋らないでね?」

『む?なぜだ?』

「んー、まぁ大丈夫な気もするけど一応。家族が驚いちゃうからね」

『いや、お前驚いてなかったにゃ』


命は家族には猫を拾ったから飼うと言う主旨の話を昨晩していた。そして今日、家族に魔王様を合わせることになっていた。


「よし、じゃあ行こうか」

『に"ゃ!離せー!』

「ごめん、ごめん。でも部屋の場所とか分からないだろうし、この方が早いでしょ?」

『…今だけだからな。後で教えろにゃ』

「はーい」


命に自然な動きでサッと抱き上げられた魔王様は流さされそうになったがそれを拒否した。が、まぁ抱き上げた理由はそれなりに納得できるものだったためそこまで拒否はしなかった。

…命に下心がないとは言っていないが。

魔王様を抱き上げた命の脳内はモフモフと言う単語で埋め尽くされていた。




「母さん、連れて来たよ」


命はリビングの扉を開けると台所に立つ女性-命の母である香代子かよこ-に声を掛けた。

香代子さんはひょっこりと台所から顔を出すと魔王様を見て目を輝かせた。


「あら!可愛いわね〜」

「名前はドラ」

「ドラちゃんね!」

「母さんドラは男だよ」

「まぁ!そうなの?珍しいわねー」


ここで説明のお時間でーす!

魔王様がなった猫の姿というのは三毛猫の姿。メスの三毛猫は多くいる。が、なんとオスは確率が3万分の1の確率でしか産まれない。そのため大変珍しいのだ。それもあってかオスの三毛猫は昔から縁起が良いと言われているぞ!


ちなみにこの時命は、話せる猫なのだから三毛猫よりもよっぽど珍しいよな、と思っていた。


「命、ちゃんと面倒を見るんだぞ?」

「あれ?父さんいたの?」

「…あぁ、命が来る前からずっといたぞ?」

「あら?あなたいたのね?」

「香代子もか…」


項垂れる父、つかさ。たまに家族にも認知されない程影が薄い。香代子さんは気付いてはいるがいじるのが楽しくてやっている節がある。

それを察した魔王様は憐れみの篭った目で司さんを見る。


「俺は猫にも不憫に思われてんのかよ…」


と、その時扉が開いた。

そこには命の姉である清香きよかがいた。


「ただいまー」

「おかえりなさい」

「おかえり」

「姉さんおかえり」

「なにしてんの?」


命は清香に背を向けていて魔王様がちょうど隠れてしまい見えていないようだ。

清香が命の抱える魔王様を覗き込む。


「それが昨日言ってた子?ふーん、可愛いじゃん」

「よかったな、ドラ」

「へー、ドラね。よろしく」


清香は魔王様の頭を撫でた。

魔王様は気持ち良さげに「にゃーん」と鳴いた。


「ねぇ命、私にも抱っこさせてよ」

「いいよ」


清香に抱っこされる魔王様は命の時のように嫌がるそぶりを一切見せない。

心なしかデレデレとしているようにも見える。


「姉さんは猫好きなの?」

「まあまあかしら。私、犬派なのよね。従順な子っていいわよね」


ピシャンッと雷が落ちたかのように魔王様は固まった。

命は呆れた目をして清香から魔王様を受け取り部屋に戻る。

部屋の扉を閉めた瞬間、


『犬なんて嫌いだニャーー!!』


魔王様の悲しみの篭った叫びが響いた。



♢♢♢次回予告♢♢♢

女性にチヤホヤされるのは好きな魔王様。犬に負けても頑張って!負けるな魔王様!


この時、魔王は決意した。この世界を征服すると!


next:魔王様、にゃ王様。

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