魔王様、名を得た。

「ハァァァ!?」

『むふふふ、驚いただろう?我は誇り高き魔王だにゃっ!』

「は、え?…猫、喋る猫?新種のUMAじゃ?」

『これは勇者の呪いだ!我を恐れるあまり奴が我に掛けたのだにゃ!』

「UMAじゃ、ない。…俺のUMAぁ」

『我は馬でも猫でもない!偉大なる魔王だ!一緒にするでにゃい!』

「馬じゃねぇ!U!M!A!未確認生命体!至高の浪漫!」


項垂れていた命だが魔王様の言葉にがばりと顔を上げて語り出す。

それに負けじと魔王様も返す。


『なにをぉう!魔王である我こそが至高なる存在だ!』

「はぁ?魔王だかなんだか知ら、ね、……⁈魔王⁈」


ヒートアップしていた両者だったが命がピクリと動きを止めた。


「……魔王ってあの魔王?」

『ふん!その通り。全ての魔物の頂点に立ち、世界の真なる王となるものだ』

「そして、最期は必ず勇者に敗れるのがお約束という…」

『うむ。って、違うわ!余計なことを付け足すでにゃい!』


ふざけてみた命ではあるがこれは信じるしかないと考えていた。

いくら魔王様を撫でくり回してもチャックや電池は出でくることはなかった。つまりそれは魔王様は生きているということで、命にとって未知の生物ということでもあった。

命は魔王様が言っていることを額面どうりに受け取るしかないのだ。

命は高笑いをする魔王様を見て頬を引き攣らせながらそういえば、とボソリと呟いた。


「アイツも勇者がどうとか言っててそういう年頃のあれなのかと思ってだけど…まさか、マジのやつ?」


口許を抑え、ゴクリと息を呑む。


「え、やばい。興奮して来たんだけど…!」


そこには抑えきれない笑みが現れている。そんなことはいざ知らず。魔王様はハッとした様子で再び騒ぎ出す。


『そうだ名前だにゃ!名前ー!』

「え?名前?」

『なんだあのヘンテコで軟弱そうな名は!にゃっ』

「えっ、そんなに変だったかな?」

『そうだ!我には高貴な名があるにゃ!本来なら人間なんぞに呼ばせはしないが特別に呼ぶことを許可してやろう』

「えーと、確かドラドラ・フレーバーなんちゃら2世だったか?」

『ドラクエルー・フィフレティ・バドラディノーレ・ミラクレリス2世だぁ!にゃ!』

「じゃあそこから取って、ドラ2世はどうかな?」

『略すな!』

「えー、でも長いじゃん」

『なぜ最初と最後を取った?普通、ドラクとか、フィフレとかだろにゃっ』


真剣な顔で悩む命。命は一切ふざけていなかった。彼の中には独特のネーミングセンスがあるのだ。


「ドラフィフはどう『なぜそうなる⁈』」

『お前、話を聞いてなかったのかにゃ⁈』

「えー、でもいいと思うんだけどなぁ…ドラ2世もドラフィフも」


名前を考えても即座に拒否されてむくれる命。魔王様は命に名付けを任せてはいけないことを悟った。そしてため息を付き自身の呼び名を指定した。


『はぁ、ドラと呼べにゃ』

「分かった。ドラドラな!」

『分かってないではにゃいか!』

「ははは!冗談だよ。よろしくドラ」


今度は魔王様が顔を引き攣らせる。命の微妙ななネーミングセンスを目にしてドラドラが冗談だったとは思えなかった。

しかし命は魔王様を気にすることもなく、朗らかに笑っている。


「あ、そういえば自己紹介してなかったね。改めまして俺は佐々本ささもと みこと。高校一年」

『我は異界の魔王ドラクエルー・フィフレティ・バドラディノーレ・ミラクレリス2世。ドラと呼ぶことを特別に許すにゃ』

「ありがとう。これからよろしくね、ドラ」

『よろしく頼むにゃ』




♢♢♢次回予告♢♢♢

なんとか名前が決まった魔王様。人間と魔王の心が通わされた。


家族に魔王様を紹介することになるが命の家族はどんな人物なのか。この世界で命以外の人間に初めて会う。


next:魔王様、家族となる。

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