魔王様、名を得る?

夕方になり魔王様はゴロゴロし始めた。命が学校へ行ってから先程までは朝に引き続き魔法を確認していた。しかしそれも終わり今は何もすることがない。


窓から差し込む夕日を浴びながら微睡んでいるとガチャリ、と扉が開く音がした。その音にに耳がピクリと動く。


「ただいま」


その声とともに部屋の扉が開いた。

帰ってきた命は鞄を置くと魔王様を撫でながら言った。


「お前はうちで飼うことになったけど名前どうする?」

「我は飼われるのではない!我がここにいてやるのだ!」

「それにしても名か…我の名は高貴だからな。呼ぶことすら憚れてしまうだろう。お前が我に渾名を付けることを許可しよう」


デデーンッ!と効果音が付きそうな程威張る。


「うーん、そうだなぁ。タマはどう?」

「我に相応しくない」


「タマ三郎」

「違う」

「ミケさん」

「やだ」

「シュウ」

「むっ」

「た〜ま」

「違うわ!」

「ワン太!」

「どこがだ!」


考える気があるのか無いのか。最後なんてどこをどう見てその名にしようとしたのかすらわからない。


「ええい!『我の名はドラクエルー・フィフレティ・バドラディノーレ・ミラクレリス2世にゃっ!』」

「えっ!」


命はいきなり聞こえた声に驚いた。

部屋には命と魔王様しかいない。命にとって今の魔王様はただの猫。命以外の人の声はするはずがなかったからだ。


では説明しよう!なぜ魔王様の言葉が通じているのかを。

数時間前に遡る。それは魔王様が元の姿に戻る方法を探していた時のこと。解呪を試しては改良してを繰り返していると偶然成功したのか言葉を話すことができたのだ。

しかしそれを元にさらに改良を重ねては見たものの姿が戻ることはなかった。


まぁ、そう上手くはいかないだろうと魔王様自身思っていた上にこれも成功とは言い切れないものだ。本来、魔王様はこれを使うつもりは無かった。


なぜなら、稀に語尾が「にゃ」になってしまうオプション付きだからだ。



『うぉぉぅー、やってしまった。我としたことが…』

「…しゃ、喋ったァァー‼︎」

『うるさいわ!』

「すっげぇ!どうなってんの?実はおもちゃなのか⁈それともU・M・Aとか⁈」


命は興奮した様子で魔王様に顔を近付ける。興奮のあまり足を机にぶつけるがその痛みが今起こっていることを現実だと証明し、より一層命の心を沸き上がらせる。


『そんなに触るでないわ!』

「夢じゃ、ない?」

『現実だ』


魔王様は軽やかにローテーブルに飛び乗って命を正面から見て言った。


『我は魔王、ドラクエルー・フィフレティ・バドラディノーレ・ミラクレリス2世。由緒正しき魔王だ!にゃっ』




♢♢♢次回予告♢♢♢

語尾のせいで微妙に格好がつかない魔王様。

ついに命は正体を知ったがその反応とは如何に…


そう言えば魔王様の名前ってどうなんの?


next:魔王様、名を得た。

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