魔王様、猫になる。

「ただいま」


命の家に着くが魔王様はまだ固まったままだった。命はまず洗面所へ行くとハンカチを濡らして魔王様の足を拭き、自室で降ろした。


「少し待っててね」


そう言うと再びどこかへ出掛けていった。

降ろされた魔王様は数秒遅れてハッとしたように意識を覚醒させた。


「ぼーっとしている場合ではない!我が猫とはどう言うことだ…?いや、だが……」


魔王様は部屋を見渡し鏡を探すが見当たらない。仕方なく窓ガラスを鏡の代わりにすることにした。

鏡のようにはっきりとは写らないものの姿は十分に確認できる。


「見間違いであれ!」


そう願いつつ写ったものを見る。そこには黒、白、薄茶の三毛猫がいた。

魔王様が手を上げればそこに写る猫も手を上げる。左に動けばそれも左へ。右に動けば右に。


「猫になってる⁈」


頭を抱えてゴロゴロと転がる。


「なぜだ!我のかーっこいーい姿がこんな姿に!」

「イダぁーーっっ‼︎」


ガンッとローテーブルの脚に頭をぶつけ静止した。魔王様は頭にたんこぶを作りながらこれからどうするかを考える。


「勇者を倒すのは後にした先ずはこの姿をどうにかしなければ」

「んーむ、この姿になった原因はやはり封印か?だとしたら……」


ブツブツと呟きながら考え込む魔王様。たんこぶで格好がつかない。

その時、ガチャリと扉が開いた。


「ただいま。ご飯買ってきたよ」

「む?飯か。久々だな」

「はい、猫缶だよ」


命は猫缶を開けると中身をお皿に出して魔王様の前においた。


「なんだこれは?これが食い物なのか?こんなもの食う訳がなかろう!肉をよこせ。肉を」

「どうした?お腹空いてないか?」


しかし美味しそうな匂いが漂い空っぽの腹を刺激する。


「まぁ、一口ぐらい食べてやろう」

「よかった。食べてくれた」


命は安心したようにホッと息をついた。

一方、魔王様は一口食べて思わず目を見開いた。


「うみゃい!!」


先程まで拒否していたのが嘘のように勢いよく食べ出した。

直ぐに皿は空になり魔王様のお腹は満たされた。


「ここにはうまい飯がある…それにこの全く知らぬ世界だ…」


「よし!今日からここは我の城だ!ふはははは!」


魔王様ー、盛り上がってるところ悪いですが口のまわりがベタベタになってますよ。それに命に生暖かい目で見られていますがそれでいいんですか⁈




♢♢♢次回予告♢♢♢

食って寝て起きたら魔力回復!

元に戻る為にも魔法で……て、あれ?どうしたのですか魔王様⁈


next:魔王様、魔法を使う。

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