天の川
Day7 天の川
さらさらと透き通った水の流れる川底に、色とりどりの石が沈んでいます。青白く光る石もあれば、ごつごつした灰色の石もありました。
小さな手がポチャンと水面を破り、切りそろえられた小さな爪の乗った指が水底の石をしっかり掴みます。そのまま引き揚げられた石は、小さい手のひらの上で水底と同じようにチカチカ瞬いていました。
「見てごらんよ。これ、ほら、黄色く光ってきれいだねぇ」
「こっちだってきれいだよ。リンゴみたいに赤いもの」
2人は自分たちの手にした石を光にかざしたり、目に近づけて覗き込んだり不思議そうにしています。
「これ、なんていう石? 色がついてるんだからきっとトクベツだよ」
「しらないけど、うんとトクベツだろうね。だって光るもの」
そうしてまた川を覗き込み、水を手でかきまわしたり石を転がしたりと遊びました。
「そうだ、名前をつけてやったらどうだろう。トクベツなものにはなんといっても名前がひつようだよ」
「それならすごくトクベツな名前にしなくちゃいけないね」
「よくよく考えないと。それに名前をつける石もえらばなくちゃ」
「ぜんぶにつけられないものね。どの石にしようかしら」
2人は楽しそうに石を拾っては、これでもないあれでもないと川へ投げ入れ、ぱちゃぱちゃ水を跳ねさせて遊びます。気持ちのいい川べりのキラキラする石で遊ぶのは、とても楽しいことでした。
きゃあきゃあ夢中になっていましたら、いつのまにやら空に茜色が差し込んでいます。
「おやいけない、もう帰らなくっちゃ。そうだな、ボクはこの石にする」
そう言って、ちょうど手に取っていた白く光る石を頭の上にかかげました。
「え、あ、じゃあ、ボクはこれ」
急に決まったトクベツに慌てて、目についた赤く光る石を川底から拾いました。
「次にきたときわかるように、ここにおいておこう」
「じゃあ、ボクはここ」
2人は川べりに石を置いて得意気に笑いました。家路につき、お腹が空いたと駆け出した影が遠ざかってゆきます。
白い石と赤い石は川を挟んで向かい合い、いつまでもチカチカ光っておりました。
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