サラサラと、月の砂漠にて

 Day8 さらさら


 白いお月さまがおぼろに浮かぶ夜のこと、広い砂漠を二頭のラクダが歩いておりました。金と銀の鞍に金糸と銀糸で刺繍された敷物の立派な拵えが、月明かりでチカチカ光ります。銀と金の甕がくくられた鞍の上には、王子さまとお姫さまが揺られておりました。

 サクサクサクと砂を踏みしめる音だけが聞こえる静かな夜です。後ろに続くラクダの足跡は、風に運ばれる砂ですぐに消えてゆきました。


 砂丘に差しかかったところで片方のラクダが足を止めました。片方が止まればもう片方も止まります。それからカクリと膝を折り、大きな体を重そうにして座りました。

 王子さまとお姫さまは鞍から降り、ラクダのあいだで身を寄せ合って優しく微笑みます。


「がんばりましたね」


 二人はラクダを撫でてから、空を見上げて星を眺めました。


「きれいな星だね」

「ええ、とても」

「疲れただろう? 眠るといいよ」

「あなたもゆっくり休んでくださいな」


 二人はとても疲れていました。途中の井戸が枯れていたので、銀と金の美しい甕には水の一滴も残っていないのです。

 重い体を横たえ、目を閉じた二人はすぐに深い眠りへ落ちました。


 砂漠の風は休むことなく、砂をサラサラ運びます。王子さまとお姫さまの白い上着が少しずつ、砂に埋もれてゆきました。


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