君の隣で。

 どうやら今日で彼女から依頼を受けて、ちょうど一週間になるらしい。八月も後半に差し掛かり、道端にセミの抜け殻が、ちらほらと落ちていた。


 僕達はこの1週間、諸所を巡った。遊園地、祭り、映画館、ショッピングモール、カラオケなどなど。そして、今日は水族館だったよ。


 僕は水族館というものは、初めて来たが、浅い海を泳ぐ魚の姿は、華麗で儚く、僕は唖然とさせられた。そして、ちらっと隣にいる彼女の横顔を盗み見した。彼女は静かにまるで青い海のような澄んだ瞳に、魚を映していた。


「水族館って本当に魚が泳いでいるんですね」


「それは水族館だし、魚はいるだろう」


「でも私、今日初めて来るまで、水族館に魚がいるの信じていなかったんですよ。本当に。だって、こんな小さな海の箱の中に、何千何百匹の魚達が威勢に泳いでいるですよ。そんなの、おかしなことでしょ」


「確かに僕も今日、初めて来るまで水族館に魚が泳ぐ姿を想像できなかったわ」とそんな些細な会話すら。僕に幸せを与えた。いつまでも彼女の隣に居続けたいと思えたよ。


 しかし、もう時間がなかった。


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