君の隣で。
どうやら今日で彼女から依頼を受けて、ちょうど一週間になるらしい。八月も後半に差し掛かり、道端にセミの抜け殻が、ちらほらと落ちていた。
僕達はこの1週間、諸所を巡った。遊園地、祭り、映画館、ショッピングモール、カラオケなどなど。そして、今日は水族館だったよ。
僕は水族館というものは、初めて来たが、浅い海を泳ぐ魚の姿は、華麗で儚く、僕は唖然とさせられた。そして、ちらっと隣にいる彼女の横顔を盗み見した。彼女は静かにまるで青い海のような澄んだ瞳に、魚を映していた。
「水族館って本当に魚が泳いでいるんですね」
「それは水族館だし、魚はいるだろう」
「でも私、今日初めて来るまで、水族館に魚がいるの信じていなかったんですよ。本当に。だって、こんな小さな海の箱の中に、何千何百匹の魚達が威勢に泳いでいるですよ。そんなの、おかしなことでしょ」
「確かに僕も今日、初めて来るまで水族館に魚が泳ぐ姿を想像できなかったわ」とそんな些細な会話すら。僕に幸せを与えた。いつまでも彼女の隣に居続けたいと思えたよ。
しかし、もう時間がなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます