海に行きたいです、付添人さん。

 僕達がみていた光景は青で満ちていた。

 

 潮風が吹き、潮騒が響く、波が立つごとに磯臭さが匂う水天一碧のこの景色は、僕達をちっぽけにしていた。そして、そのときはじめて自分が海に来ているんだと、実感を得たんだ。


「海に行きたいです。付添人さん」

 そう、ユイは言ったよ。しかしさ、僕は海なんて、ちっとも興味なかった。でも、依頼人の頼みだったから仕方なく、彼女をスーパーカブの後部シートに乗せて、海に向かった。


 外は湿気でじめじめしていてさ、額に汗が浮かび、Tシャツは汗でびしょりだった。


 海に向かう道中、ユイは小さい体で僕の背中にしがみついていた。彼女の体の柔らかをはっきり感じられて、どうにも僕は落ち着かなかった。


 そして、海に着いた。

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