【なんか不審者系PKに殺されまくるのやが】

 どうも。クローフィの命令に対してしっかりと拒否を叩きつけてきたポチ君だぜ。俺はちゃんとNOを言える日本人なんだよなぁ……。

 さて、というわけでプレイヤーを倒していかなければならなくなったわけだが、正直今までしてきたことと大して変わらないので、あまり嫌な感じはしない。

 


 しかし困るのが、まだプレイヤーはポツポツと現れるだけで、数が少ないから一向に減った気がしないということだね。いやまぁプレイヤーに減るもなにもないけどさ。これはデスゲームじゃないから、死んでも余裕で生き返ることができるし。

 つまり俺の勝利条件はクローフィの噂が静まるまでPKを続けること……?

 なにそれゲキツラじゃ〜ん! なきそ。



「社畜ってこんな気持なのかな……」

「きゅー」

「ゲームしてるだけだから、ホントの社畜には怒られるかもしれないけど」



 俺は地面に座り込んで、くるぶしあたりまで伸びた草と戯れているドクを撫でる。

 お前はいいなぁ、気楽そうで。こっちは常日頃からコミュニケーションとかに悩んでいるっていうのに。



「……ま、いいか。いい感じに力抜いて、そこそこ頑張ってPKしてけば」



 よっ、と声を上げながら立ち上がり、慌ててローブの中に入ってくるドクを眺めた。

 草原には気持ちのいい風が吹き抜け、一面からさわさわと波のような音が流れてくる。

 ゲームだからか、崩れたところを見たことがない空は見事に晴れ渡り、今日も今日とて俺を殺しにかかっているのだ。マジファッキン。



「まさかそんな、俺が噂とかになってるってわけでもないだろうし。気楽に行きましょうや」



 ◇



【なんか不審者系PKに殺されまくるのやが】



『真祖の吸血鬼を倒しに行ったら、気づいたらデスルーラしていた件』


『わっかるぅ〜!』


『PKか?』


『スレタイで言ってるだろ』


『不審者ってなんやねん』


『そりゃ怪しいやつやろ』


『PKとか全員怪しいだろ』


『え? でも暴虐王とかは見た目怪しくないですよ?』


『あいつは異常だから』


『平均の話をしてるときに外れ値出してくんなよ』


『あんな出会ったら終わりの天災みたいなやつを例に上げるな』


『あ、俺もその不審者系PKに殺されたわ』


『マジ? 俺もソーナノ』


『結構被害者いんねぇ!』 


『雑魚乙www』


『いや、一回戦ってみ? なんか死ぬから』


『なんか死ぬってなんだよ。そんな強いのか?』


『うーん……』


『いや……』


『強いってほどじゃないよな』


『暴虐王みたいにわかりやすい強さじゃない』


『わかりにくい強さってなんだよ』 


『知略とかじゃね』


『MMOのPKに知略も糞もあるか』


『じゃあわからん。解散解散』


『おつかれさまっした〜』 


『待て待て、まだ話は終わってないぞ』


『えー?』


『早くしろよ。彼女とのデートに遅れちまう』


『嘘つくなよ』


『こんなところにいるやつが彼女持ってるわけ無いだろ』


『エイプリルフールはもう過ぎたぜ?』


『データとデートするってかwww』


『は?』


『は?』


『は?』


『は?』


『は?』


『は?』


『は?』


『はー、ねんまつ』


『もうすぐ一年が終わるのか……』


『その不審者系PKはな、テイムモンスターを使うねん』


『へぇ』


『だからなんだよ』


『いや、わからないか? あの不遇職テイマーでPKしてくるんやぞ?』


『不遇……?』


『それ初期の話だろ。今じゃ検証班とかが働いてだいぶ強くなっとるぞ』


『情弱かな?』


『普通に考えて圧倒的に弱い種族とか職業とかないよね。これMMOだぜ? 沢山の人がプレイするゲームで、そこまでバランス崩れることないやろ』


『錬金術師……(ボソッ)』


『やめてさしあげろ』


『いや別に弱くないし他の生産職と同じようなもの作れるし確かに他の生産職に比べればクオリティは下がるかもしれないけどその分色々なものが作れるから実質勝ってるっていうかやっぱり生産職のステータスって言えばDEXだし他の生産職はDEXの他にも違うステータスで成功率上がるらしいけどそれはもう浮気と言っても過言ではないよね逃げでしょありえないわもしも生産職をやりたいって言うなら錬金術師一択だし職業も幅広い選択肢がある人間一択だよね』


『うわぁ……』


『もしかして人間の上に錬金術師になっちゃったのかな? かな?』


『不遇プラス不遇じゃーん!!!!!!』


『ウケる』


『っぱ錬金術師って雑魚だわ』


『はいここでつよつよ種族吸血鬼を召喚します』


『と、おやぁ……?』


『魔法系ステータスを捨てることで物理ステータスを強化する種族特性によって、錬金術師の強化が!』


『されないんだなぁこれが』


『だって錬金術師ってDEXにしか補正かかりませんもんね(笑)』


『馬鹿なんじゃないの〜?』


『ただ弱点が増えるだけなんだよなぁ』


『話戻そ?』


『DEXとかリアルスキルでどうとでもなるし、振るだけ意味のないステータスだと思うんですけど』


『いやでもリアルじゃできないことに補正かかるんで。俺とか弓使いだけどDEX足りないせいで泣く泣く近距離戦闘してるぞ?』


『弓使い is 何』


『近づいて殴る弓使いってそれはもう戦士なんよ』


『お前らスレタイ見たことある? PKについてだぞ』


『あーはいはい不審者PKね』


『PKは全員不審者っていう話もう一回する?』


『いいかな……』


『遠慮しとくわ』


『てか結局イッチは何を言いたいんや?』


『いやまぁみんな気をつけてねって』


『小学校の先生かな?』


『あ、じゃあ僕がなんとかしてみようか』


『お、勇者くんじゃん』


『なーんでこんな過疎スレに……』


『暇人なんだろ。ランカーなんて皆そう』


『勇者がPK討伐するってマジ? 善行ポイント稼ぎすぎだろ……流石討伐ランキング三位かつ善行ポイント二位』


『善行ポイントってなんすか?』


『ランキング見ろよ』


『カルマ値の高いプレイヤーを倒したり、NPCのお願いを聞いたりしてたら上がるやつ。あんまりするメリットがないから廃人が少ないランキングだぞ。狙うならここだ!』


『PKなんて皆カルマ値高いですからね。善行ポイントの稼ぎどころさんですよ』


『はいここでカルマ値一位の暴虐王召喚』


『あんなやつを相手にしてまでランカーになろうとは思わんわ』


『勇者が行くなら俺も行こうかな……』


『真祖の吸血鬼も一緒に討伐しとくかー』


『盛り上がってきたな』

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