気持ち悪さ陳列罪で訴えられそう

 プレイヤーを大量虐殺するRTA、はぁじまぁるよぉ〜。

 まず前提条件として、クローフィを付け狙うロリコンの変態さん達が掲示板を初めとして大量発生しています。まるで夏場の羽虫のようですね。気持ち悪さもひとしお。

 そのような薄気味悪い存在を撲滅するべく、正義の不審者系吸血鬼立ち上がる……! さてさて問題なのは、その正義の味方さんがクソザコナメクジなせいで、おそらくソロプレイヤーすら真正面から戦ったら相手に出来ないということだ。



 はぁ〜〜〜〜〜〜〜(クソでかため息)。

 やめたらこの防衛戦?(限りなくゼロ度に近い鋭角並みの攻撃)



 はい、心の中のざぁこ♡ざぁこ♡ポチくんが逃げたそうにしていますが、身体ふん縛ってそこら辺に放置しておきましょうね。どけ!!! 俺はしまっちゃうおじさんだぞ!!!(収納)

 陰キャクソボッチことポチくんは、一度関わった相手に非常に恩義と言うか謎の粘着質な感情を抱いておりますから、クローフィが討伐されることに嫌悪感をそれはもう山のように持ち合わせているんですね。

 それなので誘蛾灯に群がる虫の如く、もしくはランドセルに群がる紳士のように発生するプレイヤーをどうするか考えたのだが。



「やはり爆発か……いつ起爆する? 私も共犯する」

  


 ぼっち院。



 そんなこんなで現在励んでおりますのは爆発ポーションを作るための草集め。AGIが低いせいで移動に滅茶苦茶時間がかかり、生態系に影響を与えるレベルで草を乱獲したら別の場所に行くというフェーズに時間が食われていた。いつ変態共が行動を起こすかわからないのに……!



 俺は焦りを抱きながら、しかし手元は狂わないようにしっかりと集中する。

 幸運なことに少し前に長期休みに入ったから、食事や睡眠、その他健康で文化的な最低限度の生活を送るために必要なことをしている時間以外はゲームに当てられる。え? 友達との予定ですか? 夏休みなら友達と一緒に遊ぶ予定くらいはあるだろって? あるわけねぇだろ??????? 良いんか、高校生にもなったいい男が人目も憚らず大泣きするぞ???? 小さい子が見たらトラウマだぜ????



 自分も黒歴史トラウマが増えそうだなぁ、とか考えつつ時計を確認。時刻はリアルタイムにして二十一時であるが、ゲーム内は真っ昼間だ。時間感覚こわれちゃ^〜うとか思われた杞憂民は安心して欲しい。ログインするための機械に、時間感覚調節機能はばっちりついている。だから色々と問題にならずに遊べているんですね。



「そろそろ良いか」



 ホログラムウィンドウを開いてアイテムボックスを確認すれば、そこには大量の爆草の姿が。きっと今警察とかに職務質問されたら問答無用で刑務所にぶち込まれるだろうが、ここには国家権力が存在しないので安心ですね! いぇ〜い、警察君、見ってるぅ? 今から君の大好きな平和をぉ、犯していきていと思いまーす!

 これは正義の味方の鑑。もはや聖人ですらある。イエス・キリスト、マザーテレサ、俺だろ。



「きゅー」



 ぐへへへへ、と気持ちの悪い笑みを浮かべていると、足元にいたドクが全力で引いたような声を出した。

 幽霊みたいなやつに倒されてしまったドクだったが、しばらく休んでいたら復活した。当然といえば当然だが、そのときには経験値が減少しており、いくらかレベルダウンしてしまっていたが。

 それでも無事に復活できたのは良かった良かった。これでおじさんも一安心だよ。



 俺はドクを抱き上げて、くるくると舞い踊った。

 これ美少女だから許される行動であって、俺みたいな不審者コミュ障陰キャがやっても気持ち悪いだけだな、と気づいたのは数分後のこと。

















「…………………………」



 ちらりと草の陰からプレイヤーを覗き見る。彼は随分とかっこいいデザインの鎧を着込んでおり、生半可な攻撃では通用しないであろうと想像させた。

 俺は手に握った武器を眺め、唾を嚥下する。



「………………」



 音を立てないようにソロソロと移動し、限界まで近づけば、既にそこは彼のプレイヤーまで後三メートルもないほどの距離。これが相手の注意力が欠如しているのか、それとも俺のスニーキング力が高いのかどちらか分からないが、とりあえずバレないなら良いだろう。

 一先ず足元に落ちていた石を放り投げて、こちらとは大分違う方向で音を発生させた。流石ソロプレイヤーをやっているだけあって、彼はすぐさまそちらに向き合うと、腰に佩いていた剣を抜き放つ。しかしそこには何も居ない。あるのは草むらだけである。



「…………」



 ご丁寧にそんな事を説明するわけもなく、俺はどんどんと近づいていく。

 ほら、ちょっと飛べば手が届くぞ、ほら、ほら、ほらほらほらほら……。



「失礼しまーす」

「え!?」

「あ、お邪魔しましたー」



 俺はプレイヤーの鎧の隙間に爆発ポーションをねじ込むと、反撃される前に距離を取った。彼は突然の闖入者に酷く動揺しているようであるが、果たしてそのような暇はあるのだろうか。

 こちらもまた知らない人に話しかけ、あまつさえ爆弾を仕掛けるという陽キャもびっくりな行動に滅茶苦茶動揺しているが、それは中学生が喜びそうな狐の面によってしっかり隠されている。それに加えて真っ黒なローブまで被っているのだから、俺の感情を読み取ることなど不可能である。



 いつ爆発するかな、早くしてくれないかな、と湧苦湧苦ワクワク動悸動悸ドキドキしていたら、勢い余ってローブの中からドクが飛び出してしまった!



「きゅー!」



 突如現れたモンスターに、相当ゲームをやり込んでいそうなプレイヤーが取る行動は何か?

 そう、反撃である。綺麗な太刀筋にあわや死の危機か、と思ったのだが、固い鎧の隙間に割れやすい下等なガラスで作ったポーションが入っているのだ。その状態で激しい動きをしたら何が起こるのかは簡単に予想ができるであろう。



 バキッ。



 軽い、何かに罅が入るような音がすると、俺はドクを抱えてプレイヤーから全力で逃げた。反射的に掬い取ったおかげでドクにダメージはなく、彼は確実に取ったと思っていた相手が目の前から居なくなって驚いているようだ。

 そして俺がファーストインプレッションを最悪にしてまで行った行為は何を生み出したかと言うと……。



「え、ちょ、はああああああああああああああああああああ!?」



 ちゅどーん、と。

 何処か気の抜けるような音を発して、プレイヤーは爆発した。こうして俺の初めての暗殺は達成されたのであった(スニーキングしてない)。

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