【ユニークモンスター?】吸血鬼の真祖倒したやつ優勝www

1.名無しの冒険者

 吸血鬼の真祖って知ってる?


2.名無しの冒険者

 あれでしょ、吸血鬼になった奴らが噂してる


3.名無しの冒険者

 どうも可愛いらしいよな


4.名無しの冒険者

 >>3 マジ? ちょっと出かけてくるわ(ヌッ!)


5.名無しの冒険者

 吸血鬼の真祖が何だよ


6.名無しの冒険者

 このゲームってユニークモンスターとか倒すといいアイテム落とすじゃん。だったら真祖の吸血鬼とか滅茶苦茶凄いものドロップしそうじゃね?


7.名無しの冒険者

 ( ゚д゚)ハッ!


8.名無しの冒険者

 たし蟹


9.名無しの冒険者

 言われてみれば……


10.名無しの冒険者

 そこに気が付くとは……流石>>6


11.名無しの冒険者

 だから倒してみたいなーって


12.名無しの冒険者

 でも、お強いんでしょ?


13.名無しの冒険者

 ところがどっこい


14.名無しの冒険者

 それが違うんです……!


15.名無しの冒険者

 ΩΩΩ<な、なんだってー!?


16.名無しの冒険者

 それはこのゲームのシステムに理由がある


17.名無しの冒険者

 >>16 まさかお前は……


18.名無しの冒険者

 知っているのか、>>17


19.名無しの冒険者

 あぁ、聞いたことがある……


20.名無しの冒険者

 ………………


21.名無しの冒険者

 何をだよ


22.名無しの冒険者

 おい、説明しろよ


23.名無しの冒険者

 このゲームは強力なモンスターと戦う時、人数に応じて強さが上下する。つまりはぼっちのためのシステムってことだ! 良かったな一緒にゲームする友達の居ない陰キャぼっち!


24.名無しの冒険者

 うっ


25.名無しの冒険者

 うっ


26.名無しの冒険者

 うっ


27.名無しの冒険者

 やめたれよ、何人か死んどる


28.名無しの冒険者

 あぁ……また哀れなぼっちが天に召されていく……


29.名無しの冒険者

 >>23 でもそういうモンスターって基本的に人数が多いほうが有利だから、別にソロプレイが良いわけじゃないでしょ


30.名無しの冒険者

 基本的にはな。というかソロプレイでゲームやるやつって何のためにVRMMOやってんの?(素朴な疑問)


31.名無しの冒険者

 こちとらやりたくてやってるわけじゃねぇわゴラァ!!!!!


32.名無しの冒険者

 ……すぞ


33.名無しの冒険者

 いい加減吸血鬼の真祖に話し戻してくれる?


34.名無しの冒険者

 とにかく、真祖倒したいんだ。誰か協力してくれるやつおるか?


35.名無しの冒険者

 ハハッ、そんな水臭いこと言うなよ。ここにいるみんな、協力してやるさ……!


36.名無しの冒険者

 >>35 おぉ……!


37.名無しの冒険者

 >>35 で、本音は?


38.名無しの冒険者

 そういうのって報酬の割り振りとかめんどくさそうだよね


39.名無しの冒険者

 あー、ラストアタックとかな


40.名無しの冒険者

 このゲームは親切設計だから、レイドバトルみたいなものが発生したらドロップアイテムは活躍に応じてドロップするぞ。しかも山分けじゃない


41.名無しの冒険者

 それって数が多ければ多いほど有利……ってコト!?


42.名無しの冒険者

 いや、数に応じて強くなるからある程度は絞ったほうが良いと思う


43.勇者

 それって僕も参加して良いのかな?


44.名無しの冒険者

 !?


45.名無しの冒険者

 !?


46.名無しの冒険者

 !?


47.名無しの冒険者 

 何故こんな過疎スレに勇者が……?


48.勇者

 武闘会って奴に参加しようと思ってたんだけど、リアルで都合があってね。で、最近は公式イベントもないし暇してたんだ


49.名無しの冒険者

 あぁ、廃人にとって暇はつらいよな


50.勇者

 失礼な。これでもリアル高校生だから結構生活が忙しいんだぞ


51.名無しの冒険者

 は?


52.名無しの冒険者

 嘘乙。リアル学生じゃランカーにはなれないから


53.名無しの冒険者

 これ高校生エアプだろ


54.名無しの冒険者

 勇者が参加するなら俺も行くわ


55.名無しの冒険者

 ワイも


56.名無しの冒険者

 多分ほとんどの人が参加すると思うんですがそれは……


57.名無しの冒険者 

 すごい一体感を感じる。今までにない何か熱い一体感を。

 風……なんだろう吹いてきている確実に、着実に、俺たちのほうに。

 中途半端はやめよう、とにかく最後までやってやろうじゃん。

 ネットの画面の向こうには沢山の仲間がいる。決して一人じゃない。

 信じよう。そしてともに戦おう。

 アンチや邪魔は入るだろうけど、絶対に流されるなよ。




































【久遠の亡霊】を倒したことで残りの試練は三つ。これと同じくらいの難易度のものが三つもあるのか……と絶望しそうになるが、そこは何とか頬を張ってやる気を改めた。

 倒されてしまったドクはどうしたら良いのだろうか、とホログラムウィンドウを開いてみれば、そこには『眷属:ドク 回復まであと46:21』という表記が。 

 ドクが斃れてからの時間を計算すると、およそ一時間位で回復するのだろうか。



「……よかった」



 ほっと胸をなでおろす。

 ないとは思っていたが、もしかしたら復活不可能の可能性もあったから。流石にこのゲームでそんなことはなかったか。良かった良かった。

 これにはロウも一安心だろう。ドクが復活することを伝えると、嬉しそうに震えていた。



 さて、と。

 このままここに居ても何もなさそうだから、とりあえずクローフィの屋敷に戻るか? 続けて連戦も良いかもしれないが、いくら俺でも精神力が持たない。

 彼女の屋敷は一時的に自分の拠点扱いになっているようで、あそこにいるときは回復速度が上がったり、なんとバフがかかったりするのだ。ステータスの低い俺にとってこれは僥倖。厳しい試練を乗り越えるためにも、屋敷に戻ることは必要だろう。移動時間でバフ切れるかもしれないけど。



「やっぱり雰囲気おどろおどろしいなぁ」



 キョロキョロとあたりを見渡してみれば、やはり変わらぬ恐怖の墓場。

 そこにいるのが俺という真っ黒ローブの不審者なのだから、見る人がいれば「ゾンビか何かを復活させようとしているネクロマンサーか?」と疑うことがあるかも。

 まぁ俺はそんな御大層なものではなく、ろくな魔法が使えない半分近接戦闘職なのだが。魔法使いて~。何のために錬金術師になったって、魔法を使うためなんだよ!


 

 くだらないことを考えて恐怖を紛らわせて、気持ち速めに歩く。

 元々の速度が速度だから大して変わらないが、やらないよりかはまし。



「空気が美味しい」



 そうしていると墓場を脱出することが出来、久しぶりに日光の元へと出た。



「……眩し」



 曇天のところに居たから、急に目に入ってきた陽の光が痛い。

 そうでなくとも吸血鬼という種族だから日光は天敵なんだけど。

 アイテムボックスから地図を取り出して、クローフィの屋敷へ急ぐ。



 修行も兼ねて全力疾走してみるか。



 ◇



「……ん?」



 走り出してから十五分。

 流石に全力疾走でそんな時間は無理なので、早々に長距離走ペースにした。

 そんな感じで走っていると、やけにプレイヤーが目に入ってくる。行きのときはこんなに多くなかったんだが……。時間帯か?



 何にせよ陰キャコミュ障的には辛い状況だ。とりあえず全力で存在感を消して、以前のように話しかけられないようにする。今の俺ならバスケで無双できるかもしれない。それかかくれんぼ。



 偶に行き違いそうになったら茂みに身を隠してやり過ごす。

 気分はまるで脱獄した犯罪者だ。別に悪いことしたわけじゃないのにこんなムーブをしてしまうのは、おそらく前世でなにかやらかしてしまったのだろう。多分コミュニケーション能力もそこで失ってきた。

 ちらりと観察したプレイヤーはホログラムウィンドウを開きながら、おそらくパーティーメンバーだと思われるプレイヤーと話している。くっ、俺にはそんなもの居ないのに……!



「一体真祖って何処にいるんだろうなー」



「倒したら凄いアイテム落とすらしいぜ」



「あと多分称号持ちになれるよな」



「ワンチャンランカーになれるかも……?」



「えー、流石にそれは無理っしょー」



 なーんてコミュ力の高い(当社比)会話をしながら過ぎ去っていく。

 どうにも内容に心当たりしかないですねぇ……! 俺、クローフィと知り合いだってバレたら殺されるんじゃない? お前もなにかアイテムを落とすんじゃないかー、って。見た目真っ黒な不審者スタイルだし。新種のモンスターって言ってもバレなさそう。



 そんなことを繰り返して三十分ほど、ついに屋敷へと帰還した。



「この辺にはプレイヤー居ないけど、なんでバレてないんだ?」



 クローフィを探しているなら滅茶苦茶怪しいだろうに。

 狐の面の下で訝しんでいると、背中から急に声をかけられた。びっくり。



「それは認識阻害の魔法をかけているからよ」



「くくくくくくくくくくクローフィ!?」



「いかにも。驚きすぎじゃないか?」



 そりゃ(基本的に誰とも離すことがないコミュ障が急に後ろから話しかけられたら)そう(やって飛び跳ねるほど無様に驚く)よ。あたりまえだよなぁ?

 自己弁護を完璧に行いつつ、元気にアップを始めた心臓を落ち着ける。



「………………認識、阻害?」



「よくあるじゃろ? それがかかっているものは見えているのに、見えない。聞いているのに聞こえない。嗅いでいるのに嗅げなくなるというのが」



 確かにそういうのはよく見るが……。流石ゲーム、裏切らないなぁ。



 だとすればこの屋敷に居れば彼女はプレイヤーに見つからないわけか。

 数少ない知り合いを危険に晒すような真似はしたくないので、クローフィに「冒険者がめっちゃ君のこと探してるよ」と伝えた。勿論こんな口調じゃないし、スムーズじゃなかったが。



「…………ほう……妾を、か」



 何処か影のあるような表情で、彼女はそう言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る