阿鼻叫喚のスレ
『まさかこの不審者が第三回戦まで生き残るとは……』
『そもそもどうして魔法使いが近接戦闘できるんですかねぇ』
『なんかのスキルでは? ボブは訝しんだ』
『おっ、そんな超絶強強スキルがあるんだったら皆使ってるって話する?』
『でもそれくらいじゃないと、さっきの挙動の説明がつかないからなぁ』
『そらもうアレよ、努力! 友情! 勝利! 的なサムシングで』
『そんなので遠距離職が近接職に勝てたら誰も苦労しねぇんだわ』
『というかどうして第三回戦はバトル・ロワイアルなんですかね』
『参加人数が多いからじゃない?(適当)』
『だったら最も人数が多い初戦にやれよ』
『ほら、運営が考えてたのよりも結構多かったんだよ』
『それを世間では計画不足と言います』
『まぁバトル・ロワイアルとなればあの不審者も勝てないだろうな』
『どうして? むしろ本領発揮だろ。だってフィールドが広くなるんだから、魔法とかも使いやすいだろうし』
『ヒント:バトル・ロワイアル特有のフィールド制限』
『まずこのゲームには体力があります。魔法使いは走らないです。そしてこの大会において設定されているのはステータスのみで、体力には変動がありません』
『あっ(察し)』
『ダメージウォールに巻き込まれて死ぬ……ってコト!?』
『車とかあるかもしれんやん』
『これは中世ヨーロッパ風のRPGだぞ』
『じゃあ無理だな』
『しゃーなし、切り替えていく』
『…………もうすぐで第三回戦が始まるな』
『おぉ、ホントにあの不審者もいる』
『棄権するかと思いました』
『ここまで来て棄権するやついる!? いねぇよなぁ!?』
『――試合開始!』
『おー、皆一目散に建物の中に入っていくな』
『そりゃあね、落ちている武器を拾うのは常識よ』
『あの、武器とかないです……』
『ファッ!?』
『何やそれ、そんなんでFPSとか名乗るのやめてもらっていいですか?』
『FPSじゃないんだよなぁ』
『あの不審者速攻芋ってるやんけwww』
『正面から戦ったら死ぬのが目に見えているからね、しょうがないね』
『!?』
『!?』
『!?』
『!?』
『!?』
『!?』
『は???????????????』
『どうしてあいつが参加してるんですか????????』
『?』
『一体何だこの流れは……』
『説明しよう!』
『オイオイオイ、死んだわあいつ』
『あああああああああああああああああああ(トラウマが刺激される音)』
『どうして皆苦しんでいるんです?』
『それはな?』
『このゲームには……一人のとびっきりのクズがおってな……』
『まぁ【暴虐王】っていうんですけど』
『トッププレイヤーやぞ』
『その称号持ってたらトッププレイヤー理論やめません?』
『でもトッププレイヤーじゃん』
『それはそう』
『【暴虐王】ってなんですか?』
『教えて偉い人!』
『しょうがねぇな〜(悟空)』
『【暴虐王】……それはな…………』
『このゲームで一番プレイヤーを殺している最悪のPKだ』
◇
ズガガガアン!!!
とてもナイフによって発生したとは思えない音を聞き流しながら、目の前の少女に蹴りを叩き込む。
それは俺と彼女の間に挟み込まれた防御用のナイフ――ご丁寧にもそれはこちらに刃が向けられていた――によって防がれた。
あえて空振りさせることで重心移動を行い、ダメージを負うことを回避する。
「すごい、すごい、すごい!」
キャハハハハハ、と彼女は笑う。
それが隙になるんじゃないかと思って攻撃を仕掛けてみても、哄笑しながらさばかれるのだから苦笑するしかない。
おいおいおい、強すぎないか?
「どうしてお兄さんはそんなに強いの!? 私こんなの初めて!」
「………………」
返答をする余裕はなく、拳でもって返す。
左右から向かってくるナイフをギリギリまで引き付け、リンボーダンスのように上体をそらして躱した。
そのままバネの勢いで跳ね上がり、頭突きをかます。
「――っ、いった〜い!」
よし、初めてまともに攻撃が入った。
今まで数分間の攻防をしていたが、ここに来て初めてのダメージ。
というかマジで強いな、この少女。
俺はこれにより気が緩んでしまい、おちゃらけた様子の彼女の奇襲にとっさに反応できなかった。
「――えい!」
「……ッ!」
浅く頬を切り裂かれながらも、何とか頭を狙った攻撃を躱せた。
少女の動きを見ながら、次に動くであろう行動の予測をしていてよかったぜ。
彼女はおそらく、「いかにも」な場所を狙って攻撃している。
例えば首。
例えば頭。
例えばみぞおち。
乙女の純情的なサムシングなのか何なのかは知らないが、金的はしてこない。
流石にこんな不審者の急所など狙いたくないということか。
お兄さん泣いちゃうよ……? いや別に狙ってほしいわけじゃないけどさ。俺は変態じゃないからね!
少女は片手を目いっぱいに伸ばして刺突してきたために、そちらのほうががら空きになっている。
俺は隙を見逃さず、容赦なく拳を叩き込んだ――。
「――と、思った?」
瞬間、体が吹き飛ぶ。
一瞬何が起きたのか理解できなかった。
クラクラと点滅する頭を振って戻し、空中で一回転して着地する。
少し地面に溝を残して止まった。足の裏が熱い。錯覚だけど。
彼女は先程、わざとこちらに隙を晒し、油断したところで蹴りを放ってきたのだ。
当然みぞおちに。
金的だって出来ただろうに……いや本当にしてほしいわけじゃないんだけどね?
今の今までナイフしか使ってこなかったから、てっきり手足を使えないものだと思っていた。
クソ、それすらもブラフか。
全て俺を騙し倒し切るための演技。
そしてさっきまではそのような手加減をする余裕があったということだ。
「…………あーあ、あそこから連撃するつもりだったんだけどなぁ。お兄さん反応早いね。なんで?」
少女が不思議そうに首を傾ける。
うーん、そう言われてもラインに理不尽な攻撃をされたり、当たり前のように奇襲をされたりしていただけだからなぁ……思い当たる節がない。
俺は肩をすくめて疑問に答えると、改めて気を入れ直した。
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