新しい眷族

 テイムモンスター、ねぇ。

 俺の場合はテイマーじゃないので、正確には眷族なのだが、まぁ同じようなものだろう。

 さて、それよりも大事なのは、木人間ちゃんが眷族になるということだ。

 正直コミュ障である俺が多少お話できるモンスターと一緒にいて正気を保てるか? というところ。

 


 え? ライン?

 ほら、修行が終わったら多分別行動になるから(震え声)。



 でも眷族となったらそうはいかない。

 ドクも常に一緒にいるし(ローブの下にいるのでこれ以上ない近距離)、別行動も出来ないだろう。

 というか木人間ちゃんが俺と行動するとなると、不審者と動く人型の木のセットで悪役感すごい。

 通報されそう(小並感)。



 野生のラスボスとか言われたいな(願望)。



 ま、そこまでの強さは持っていないし、そもそも多くの人がプレイするゲームで、そんなバランスぶっ壊れな事出来ないだろうけどさ。

 いや、廃人と呼ばれるほどのプレイヤーになればいけるか?

 学生が本当の廃人に勝てるわけないんだよなぁ……。馬鹿野郎俺は勝つぞお前!(天下無双)



 で、木人間ちゃんは俺のことを期待に満ちた目で見つめてくる。

 ヤメローシニタクナーイ!



「……………………ダメ”、デズガ?」



「あっ、いや、全然いいよ?」



「わァ…………ぁ……」



 泣いちゃった!!!



 女の子を泣かすなんて、そんなクズどこにいるんだい???

 俺だ!!!!! ごめんなさい!!!!



 つーか、勢いで「いいよ」って言っちゃった。

 あーあ、コミュ障の辛いとこね、これ。

 何かお願いされたらすぐに受け入れちゃうんだよね。陰キャは押しに弱い(確信)。



 流石にここからやっぱりなしでなんて言えないし、心のなかでさんざん言い訳をしても最終的には眷族にするつもりだったので逆に時短だ。

 これはうま味ですね(RTA並感)。



「じゃあ……その、俺に、えぇ……眷族になりたいとか、そんなことを思ってもらって…………」



「あ”い”」



『ロウワースピリットが眷族になりたそうにしています。許可しますか? Yes/No』



 久しぶりに見たなこの画面。

 俺は震える手でYesを押すと、続いてこのような画面が出た。



『ロウワースピリットが眷族になりました。名付けを行ってください』



「……ッスー――――――」



「?」



 おうおう、木人間ちゃん並びに精霊さんや、そんな同じ動作で首を傾げないでおくれ。

 俺は来てしまった苦行というかイベントに、全力で逃げないようにしているのだから。

 はっきり言って、自分にネーミングセンスはない。

 どれほどないかと言うと、ポイズンスライムの眷族にドクって名付けたり、自分がぼっちだからポチとか名前をつけたりするレベルだ。



「えっと、あっ、こんな名前がいいな、とか、そんなのありますか……?」



「名前!?」



 何故か精霊さんが叫んだ。

 あ、名前ないとか言ってましたもんね……。



「な”、な”い”でず」



「そ、そっすか」



 マジかー、ないかー。

 ってことは、俺がつけないといけない感じですかね?

 多分このままじゃ一生進まないし。クソ、これだから若干眷族にするのに抵抗があったんだ。

 だって自分の名前とか一生モノだし、人につけるときとか滅茶苦茶考えないといけないでしょ?



「うーん、うーん…………」



 ロウワースピリットねぇ……。

 というか木人間ちゃんの種族名そんなのだったんだね。

 ロウワー…………うわー……驚愕ちゃん……駄目だ、いいのが思いつかない。



 俺は眷族につける名前を考えるために、頭を抱えて悩むのであった。




















 名付けに悩むこと十分。

 あまり時間がないのに堂々と時間を消費しつつ、俺はついに木人間ちゃんの名前を決めた。



「……『ロウ』は、どうですか…………?」



「わ”、わ”だじのな”ま”え”でずが」



「あっ、はい」



 ロウワースピリットだからロウ。

 ものすごく安易だが、俺にしては上出来だと思った。

 だってアレだよ? センスに任せて名付けをしたら多分人様の前に出られない名前になっちゃうよ?

 おそらくロウであれば、それなりのものだと思う。

 多分、きっと、おそらく。



「う”れ”じい”でず!!!」



「う、うぉっ」



 喜びを全身で表すかのように、俺に掴みかかってくる木人間ちゃん……もといロウ。

 やめてくれ、あなたのステータスでそんな行動をされると、クソザコナメクジなこちらは簡単に死んでしまう。

 街とかの安全圏だったらいいけど、ここはダンジョン。ダメージを受けるに違いない。



 ステイステイ、と言いながらロウを抑えると、どこからかアナウンスが聞こえてきた。



『眷族:ロウワースピリットの名前を、ロウ、に決定しました』



 そして、体から何かが抜けていく感覚。

 あっ、忘れてたッッッ!!!!!!!



 俺は急いでステータスを表示する。




【ステータス】

 名前:ポチ

 種族:吸血鬼

 職業:錬金術師Lv.49

 称号:■々の友達

    痛みと共に生きるもの

    悪辣なる悪魔

    蛮族

    曲芸師

    ラットキラー

    逃亡者

    強敵殺しジャイアントキリング

    夜の加護

    影に生きるもの

 HP:100/100

 MP:0/0【100】

 STR:0(0)

 VIT:0(0)

 AGI:(0+5)×2(10)

 DEX:590+100(690)

 INT:0(0)

 MND:0(0)

 LUK:0(0)

 スキル:器用上昇Lv.5

     強打Lv.4

     反撃Lv.4

     近接戦闘Lv.5

     格闘Lv.5

 種族スキル:吸血

       使役

       物理耐性

       日光弱化

       聖属性弱化

       光属性弱化

 ステータスポイント:0

【装備】

 武器:なし

 頭:なし

 体:黒霧のローブ

 足:なし

 靴:なし

 装飾品:ビックコックローチの脚

     破魔の短剣

【眷属】

 ポイズンスライム:ドクLv.52

 ロウワースピリット:ロウLv.1



 あ……あ…………(絶望)。

 MPが……MPがなくなっちゃった……。

 眷族を増やしたらMPがなくなるの、完全に忘れてました。

 俺は魔法使いなのに、MPがゼロとはこれ如何に。【強打】とか【反撃】とかが使えなくなってしまったじゃないか!



 ずーん。

 


 俺は落ち込んで、膝を地面について絶望していた。

 そのまま自然な動きで倒れ込み、ロウのステータスを確認する。



【ステータス】

 名前:ロウ

 種族:ロウワースピリットLv.1

 職業:眷属

 称号:吸血鬼の眷属

 HP:500/500

 MP:50/50

 STR:63

 VIT:12

 AGI:36

 DEX:68

 INT:2

 MND:4

 LUK:3

 種族スキル:木属性魔法

       模倣

       変身



 わぁ、極端〜〜〜〜〜〜〜〜〜(ブーメラン)。

 木属性魔法なんてスキルを持っているのに、どうして魔法系ステータスがこんなに低いのか。

 全く、誰に似たんだ……(目そらし)。



 というかレベル一のくせに俺よりも全体的なステータスが高いってどういうこと?

 HPは圧倒的だし、MPは…………ふっ(勝ち誇った笑み)。

 あっ、でも今は眷族を増やしたせいでMPゼロなんだ。アッハッハッハッハ。



 ずーん。



 ◇



 その後、なんとか回復した俺がちゃんと精霊さんに別れを告げた。

 彼女は自分の子(?)が旅立つということに涙腺を刺激されたのか、結構泣いていた。

 当然異性の涙に弱い陰キャコミュ障なので、それはもうオロオロオロオロ。

 どれくらい戸惑ったかと言うと、ラインにチョップを食らう程度には戸惑った。

 師匠ってば凄いんだよ。滅茶苦茶痛くて、足が地面に軽く埋まるくらいの威力だったのに、HP的にはダメージ殆どなかったんだ。

 これが手加減の神、か……。


 

 そういえば、ロウのスキルにあった【変身】ってなんなんだろう……。

 木属性魔法は文字通りだし、模倣も俺と戦っていたときにこちらの技術を習得したあれだろう。

 ただ、変身というのがちょっと予想つかない。



 あれかな、日曜の朝とかにやってる仮面をつけたり、数人で敵を囲んで倒すヒーローとかみたいな。

 変、身ッ!



 俺はその疑問を、後ろを数歩引いて歩いているロウに聞いてみた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る