まるで戦闘職のようだ
「よぉ、三十分ぶりだな……!」
「うボアァァァァァァァァァァァ!!!!」
「何言ってるかわかんねぇよ!!」
はい、よーいスタート(棒読み)。
精霊を倒すRTAはぁじまぁるよぉ。
まずはダンジョンに来ます。
夜になるまで待ちます。
湖の畔に来ます。
木が生えてきます。
そこには精霊が宿っています。
殺します。
――了――
流石に嘘だが。
問題はその倒し方だ。
俺は目の前に佇む化け物を眺める。
もう三度目だろうか、こいつと戦うのは。
普通のモンスターだったら戦えば戦うほど戦闘は楽になるのだが、こいつの場合は俺に合わせて強くなりやがるため、一向に慣れない。
ステータスだけだったら常にジャイアントキリングをしているようなものなのでどうとでもなる。
しかしこいつは『技術』まで成長するのだ。
奴の全身は老木のようにひび割れており、一見すると雑魚モンスターにしか見えない。
だがそれは偽りの姿。
油断して「あっ、雑魚じゃ~ん♡」と近づいたらわからせ棒(全身)でわからされてしまう。
まぁ俺は今の所全戦全勝なんですがね?
つよつよなんだが???
まぁ、どういうことかと言うと、精霊の木が召喚するモンスターは人型だった。
シルエットだけなら普通の人間だが、直接見れば異常がわかる。
顔らしき場所に空いた三つの穴。
おそらく目と口だろう。近いもので言うと……ボウリングの球のアレ。
そろそろ俺はあの穴の中に指を突っ込んでやろうかと思っている。
多分クリティカルダメージ入るぜ。
ステータス的にそれほど与えられないけど。
悲しいなぁ。
「ウボァァァァァっ!!」
「……ッ」
木人間が拳を振ってくる。
それはスライムの体当たりなど比較にならないほどの速度で、初見だったら食らっていただろう。
「見えるんだよなぁ……!」
が、今回でこいつと戦うのも三回目。
流石にパターンを覚えた。
軽く首を傾けて拳を躱すと、ニィと唇を歪める。
「【反撃】――ッ!!」
「うボォァァァァ!?」
決まったァァァァァァァァァ!!!
ポチ選手、会心の一撃です!! 実況のポチさん、今のは何が起こったのでしょう?
そうですね、先程使用したのはアクティブスキル【反撃】です。あれは相手の攻撃を躱して、なおかつ自分の攻撃当たるときに、自身の攻撃力に相手に攻撃力の一割を上乗せするという強スキルですね。
なるほど! それでSTRがクソ雑魚ナメクジなポチ選手のパンチでも相手に通用したということですか!
そういうことですね。
つまりはそういうことだ。
「貴様の攻撃は見切った……! お前は俺に触れることは出来ず、カウンターを食らうだけなのだよ……!」
あー、楽しい。
アイテムを使って爆殺したりするのも楽しいが、こうやって殴り合うのも楽しいなぁ!
これぞゲームって感じ!
……アレ、俺って魔法職だよな?
なんで殴り合ってんだろう。不思議なこともあるもんだ。
戦闘狂とかじゃないのに。拳聖であるラインの癖的なやつが移ったのかな。
俺はギリギリのところで冷静になり、微妙な顔をして木人間を見つめた。
奴は驚いたように後ずさっていたが、やがて自分が攻撃を食らったことに怒りを覚えたのか、咆哮を放つ。
「……まぁ、良いか。続きやろう」
何だろう、俺ってば最強なのかしら。
目の前でうずくまる木人間を見ながら、ぼーっとそんな事を考えた。
あいつと戦うのもこれで五回目ほど。
既に【反撃】スキルは使いこなしていると言っても良い域に達しており、DEXさんの重要性がわかる。
やっぱり最強のステータスはDEXなんだよなぁ……。
きっとWikiとかでもDEX極振り安定とか言われてるんだろうな。
だって技術がものすごい勢いで上がるもん。
ステータス差なんて意味ないぜ。
「うボォァァァァ!」
「【反撃】」
拳を躱して、拳を返す。
その繰り返し。
たまに蹴りを入れてみたり、ドクに攻撃させてみたり、ポーションを投げつけてみたり。
ちなみに敵は木だからなのか、非常によく燃えた。
たっのしぃ〜(ご満悦)。
そんなふうにしている間に、奴はHPを全損させてポリゴンと化していた。
「だいぶ対人戦がうまくなったな」
「アッ…………そうすか?」
「あぁ。どうだ、次は私とやるか?」
「いやです」
即答した。
褒められたから少し照れたものの、この戦闘狂と戦うだって?
冗談も休み休み言ってくれ。
体が持たねぇよ。だってラインって一つも休憩いれないで一日中モンスターと戦い続けるんだもん。
ちょっとは自分も体力ついたなぁとは思うが、やはり彼女には全くかなわん。
ゲームの中で走り込みするって、これ何の意味があるんだろう。
そんな事を考えていたのも過去の話。
今ではとても意義あるものだと理解した。
まず、走ることで体力がつく。
このゲームには隠しステータス的なものがあり、体力はそれに含まれる。
激しい運動――例えば戦闘など――をすれば息が切れるし、現実のようにその状態になったら動けなくなる。これをずっと続けることで、ゲーム内体力が増えるのだ。
多分、今の自分と比較すると現実の自分のほうが体力少ないと思う。
まぁ、これが癖になって現実でも走り込みを始めたんですが。
これが良い習慣ってやつか。
ゲームは健康に良いです。
あと、体力だけでなく体の動かし方がわかるというのもメリットだ。
走ることで、全身に意識が集中する。
すると末端まで頭で理解して、意識的に動かすことが出来るようになるのだ。
これはDEXさんのおかげかもしれないが、ここにも彼の素晴らしさが現れている。
ありがとう、DEXさん!
最初のほうはラインの修行に何の意味があるんだと思っていたが、こんな意味があるんなんてなぁ。
流石は拳聖、と納得したものだ。
まぁ戦いたくはないですけどね。
やだよ、強いやつと戦うの。
俺は弱い者いじめがしたいの!
だからデバフを極めて、相手を弱化させてから勝負を挑みましょうね〜(クズの極み)。
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