えっ、ぼっちでも美少女と友達になれるんですか!?
『えっと、その……元気、出してください?』
薔薇窓の中の神様が、心配そうに俺に話しかけてくる。
しかしそれにも構うことが出来ず、人間椅子スタイルは崩さない。
いや、別に考えていたことが口に出てたのはいいんだ。よくないけど。
いいんだけど、それ以上に「友達」発言を聞かれたのがデカい。
だってさ、考えてみろよ。俺みたいな全身真っ黒不審者コミュ障ぼっち陰キャが、神様(美少女)相手に友達だとほざく。
――痛々しすぎる!!!
ああああああああ、と叫び出したいレベルで辛い。
事実、あまりの恥ずかしさに全身から脂汗が吹き出しており、その姿はさながら雨に濡れた子犬だ。そんな可愛いもんじゃないけど。
イザベルは気にするなと言ってくるが、長年人との関わりを絶ってきた熟練の「ぼっち」が、気にせずにいられるだろうか? いやいられない。
冷静に考えれば、今やっていることだって黒歴史になるのだが、恥が常識を上塗りしていた。
『…………友達でいいですから! 元気出してください!』
「うぉっ!?」
その言葉とともに、うなだれていた俺の体が勝手に前を向いた。
勢いよく顔が上がったため、首から鳴ってはいけない音が発せられていたのだが、それは置いておいて。
『もう……大丈夫ですか?』
「え、あ、はい」
『そうですか。なら良かったです』
混乱の最中にいる俺に、にっこりと笑いかけてくるイザベル。
その表情は非常に破壊力が高く、平時の自分だったら即死していたことは間違いないが、そのようなことよりも何故勝手に動いたのか、だ。
不思議そうな顔をしている俺に、その理由を話してくれた。
『ふふふ……全然話を聞いてくれなかったので、神様ぱわーを使っちゃいました』
すげぇな、神様ぱわー。
特に「パワー」じゃなくて「ぱわー」なところに頭お花畑味を感じる。
『そ、それでですね…………私、友達って初めて出来たんですけど、何をすればいいんですかね?』
「え?」
『あ、いや、違いますよ!? 別にぼっちだったとかそういう訳じゃなくて、今まで関わってきた相手が人だけだったので、畏れられちゃってそんな気安い間柄になれなかったというか!』
俺はイザベルの友達発言に対して「え?」と言ったんだが。
何もしていないのに、どんどん墓穴をほっていく女神。
どことなくシンパシーを感じて、思わず孫を見つめるおじいちゃんのような暖かな笑顔を浮かべてしまった。
というか、友達か。
友達ってどうやってなるのか分からないんだが、こんな感じでいいのだろうか。
デーアさんのときは何をしたんだっけ……と思い返していたとき、アナウンスが聞こえてきた。
『称号【■の友達】が【■々の友達】に変化しました』
ノイズが走るアナウンス。
それによって一部を聞き取ることが出来なかったが、何かの称号が変化したらしい。
何かの友達っていう称号がここで変化したということは、ゲームにもイザベルは友達だと認められたのか。
それが何だかむず痒さと、若干の歓喜を呼び起こして、俺は目を逸らした。
【■々の友達】
■々の友となったものに与えられる称号。人の身で■と友好を結ぶなど、最早神話に語られる英雄の所業。彼の者には、英雄たるに相応しい試練が降りかかるであろう。
■との繋がりを得る。
新しく手に入れた称号を確認してみたら、これ。
……文字化けが多くて、何が書いてあるか分からん。
だがしかし、俺に身に何か良くないことが起こるのだけは分かった。
『友達……うへへ、友達かぁ……』
頬に手を当てて、腰をくねくねさせる
その行動に若干引きつつ、しかし自分も友達が出来たらあんなふうになるだろうなぁ、と思ったら評価はプラスになった。
『あっ、そうだ! ポチさん、貴方に私の加護を授けます!』
唐突だなぁ、おい。
加護とは何ぞや、と呟く前に、イザベルはこちらを指差して来る。
反射的に固まってしまった俺だが、数秒後全身が淡い光に包まれて、それと同時に高揚感を得た。
思わず手をまじまじと見つめてしまい、彼女の苦笑を貰ってしまう。
『新しいスキルを手に入れました』
『私の加護を授かった人は、皆最初そんな反応をするんですよ…………と言っても、最近はサラにしかあげてないんですけど。これでも、
ほーん、と納得して、手をニギニギ。
再びホログラムウィンドウを開いて、新しいスキルを確認する。
【夜の加護】
夜を司る存在によって与えられたスキル。
夜の時、全ステータス50%アップ。闇属性のダメージを30%軽減。【影魔法】を習得する。
……影魔法!?
夜になったらステータスアップというのはだいぶありがたいが、それよりも見るべきは【影魔法】だろう。
もともと俺は、錬金術師というは魔法職だと思っていた。
しかし、どうも魔法を使っている感じがしなかった。MPだってあまり消費しないし。
何かこれって詐欺じゃね? と思いつつも、わざわざ口に出すことなく今までプレイしてきた。
だが、このスキルによって魔法が使えるようになるというのならば。
俺は胸を張って、「魔法使いだ!」と名乗ることが出来るはずだ。
輝かしい未来を妄想しながら、【影魔法】の説明を表示させる。
【影魔法】
影を操る術を得る。使用できる魔法は、魔力の量によって決まる。
使用可能魔法:【
か、かっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!
俺は自他共に認める(他はいない)中二病なので、このようなルビが大好物なのだ。
いいよな、ルビ。
このようなものには「長文にルビ」タイプと、「単語にルビ」タイプがあると思うが、どちらが好きだろうか。ちなみに俺はどっちも大好きだ。
ズルい回答だとは思うが、その拳を収めてくれ。どうどう。
スキルスロットから【錬金術】を外し、【夜の加護】をセットする。
ワクテカしながら、俺は魔法を放とうとして……はたと気付いた。
あれ、魔法ってどうやって使うの?
というか、詠唱とかいる? いるんだったら朗々と語って、その後は詠唱破棄を決めていく所存だが。
そもそも、もしもこの魔法が破壊力の高いものだった場合、ただでさえボロボロな教会に致命傷を与えてしまうのではないだろうか。
ピタッと止まった俺に、イザベルが微笑みながら魔法の使い方を教えてくれた。
何だこの包容感。これが赤ちゃんプレイってやつですか。違いますよね。
どうやら、使用可能魔法というところに書いてある魔法名を唱えれば、魔法が使えるようだ。
では詠唱が出来ないのかと言うとそうではなく、魔法名単体は基礎の基礎。オリジナルの詠唱を行うことで、追加のMPを込めることが出来、魔法の威力が上がるそうだ。
しかしパッとは詠唱なんてオサレなもの思いつかないので、今回だけは魔法名だけでいいだろう。
身振り手振りを全開で活用しつつ、力の宿る言葉を紡ぐ。
目標は、机の上に置かれたティーカップ。
影魔法の最初のものは、属性を付与するものらしいからな。割ってしまうだとか、その様な心配はない。
さぁ、右手を突き出して、一言。
「――――【
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