ステータスとスキル

【ステータス】

 名前:ポチ

 種族:吸血鬼

 職業:錬金術師Lv.21

 称号:■の友だち

    痛みを望むもの

    悪辣なる悪魔

    蛮族

    曲芸師

 HP:100/100

 MP:50/50【100】

 STR:0(0)

 VIT:0(0)

 AGI:(0+5)×2(10)

 DEX:300+80(380)

 INT:0(0)

 MND:0(0)

 LUK:0(0)

 スキル:器用上昇Lv.3

     強打Lv.1

     錬金術Lv.3

     近接戦闘Lv.4

     格闘Lv.5

 種族スキル:吸血

       使役

       物理耐性

       日光弱化

       聖属性弱化

       光属性弱化

 ステータスポイント:0

【装備】

 武器:なし

 頭:なし

 体:黒霧のローブ

 足:なし

 靴:なし

 装飾品:ビックコックローチの脚

【眷属】

 ポイズンスライム:ドクLv.7



 新しく更新したステータスを見て、少し驚きを感じた。

 ……AGIが、AGIがゼロじゃない!



 なんと、10もあるのだ! 

 それが、このゲームを始めた時の初期値だと言ってはいけない。

 ありがとう、吸血鬼。その種族ボーナスで、本来5であるAGIが二倍になっているよ。

 元はと言えば、吸血鬼になったせいで人族の種族ボーナスが無くなったのだが、まぁそれは置いておいて。

 DEX以外がゼロじゃないなんて、何か珍しいな。

 


 割と悲しい思考をしつつ、索敵は忘れない。

 キョロキョロとカンテラをかざして、スケルトンの有無を確認した。

 ……ヨシ! 誰もいないな! 



 そもそも、どうしてこの地下水道に悪魔以外のモンスターが存在しているのか。

 サラの話だと、ネズミが生息しているだけではなかったか?

 もしかして、悪魔が住み着いたせいでアンデットが生まれてしまったとか。もしそうなら、俺は悪魔を許さんぞ。必ずやこの地から消し去ってみせよう。



 ドクと一緒に歩きながら、時々出会うネズミは積極的に襲いに行く。

 どうも【ビックラット】とかいう名前らしいが、ただのデカいネズミだ。多分モンスターですらない。

 そのくせ、倒すと経験値を落とす。普段は、経験値稼ぎ=生死をかけた本気の戦いだから、こうした一方的な殺戮というのは初めてだ。

 いやぁ、実に楽しいなぁ! ほら、死ねっ!



 パァンと音を立てて、ポリゴンとなって弾けるビックラット。

 あら^〜。綺麗ですわー!!(ご満悦)



 ネズミだから、その攻撃手段は体当たりか噛み付いてくるだけ。

 他のモンスターに比べれば動きは遅いし、ダメージも低いから、気にせず戦うことが出来る。

 無双は楽しい。無双ゲーをやる人の気持ちを理解した俺であった。



「からからからからからからからからからからからッ!!」

「ぴえぇぇぇぇぇぇっ!?」



 が、こうやって戦っていると、どうしても音が発生してしまう。

 不運にも近くにスケルトンがいた場合、探知してこちらに襲いかかってくることがありますので、相手が一体だった時は戦闘、二体以上だった時は迷いなく逃げます。

 チキン? 言いたきゃ言ってろ。生き残ったやつが偉いんだよ。



 真っ暗なところから、急に全身骨格が現れるとか、軽くホラーだ。

 それ故に情けない声を上げながら逃げ出す俺だが、敵はなんと三体。

 三体に勝てる訳無いだろ! いい加減にしろ!

 後ろから迫りくる奴に意識を向ければ、前から退路を断ちに来る。横に逃げれば、最後の一体がお出迎えをしてくれる。



「【強打】――ッ!」



 スキルを使用して目の前の敵の頭蓋骨を吹き飛ばすと、奴は動かなくなった。

 このまま放っておけば、いずれは自然とHPが全損して経験値となるのだが、残念ながらそんな時間はない。

 


 残った首から下を足場にして、跳躍。

 頭だけが俺を目で追っているが、完璧に無視して、そのまま逃げ去る。

 五度目のスケルトンの遭遇から、何とか逃げおおせたのだった。


















【強打】の消費MPは十らしい。

 何回かスケルトンから逃げるのに使って、MPの減り方と使用回数から計算した。

 MPは自動回復するので、もしかしたらずれているかもしれないが、きりが良いので多分そうだろう。



 残りのMPを気にしながら冒険するなんて、何だか魔法職みたいだ。

 俺は錬金術師だし、間違いなく魔法職のはずなんだけどね!(攻撃方法:近づいて殴る)



 カンテラで照らした通路は、石畳が敷かれた立派なものなのだが、いかんせん湿気のせいか苔の楽園と化している。

 そのおかげで足の裏には気持ち悪い感触が常にしているし、普通に動きづらいので、戦闘中にもイライラさせられた。

 こんなところを住処とするなんて、悪魔ってのはナメクジなのかな?



 塩持ってたかな……とアイテムボックスを確認するが、残念なことになかった。

 まぁ、塩なんて俺が持っていたら、ダメージを受けるかもしれないんだが。料理すら出来ないなんて、吸血鬼可哀想。



 じゅ〜。

 じゅわ〜。



 なんか変な音がする。



 足元を見ると、ドクがそこらへんの苔をむしゃむしゃしていた。



「ちょ、何してんだ」



 慌てて地面から引っ剥がすと、不機嫌そうに抗議の声を上げ始めた。

 まるで赤ちゃんのように高い高いしていたら、すぐに腕が疲れてきたので、仕方なく下ろした。

 すると、またもやむしゃむしゃし始めたので、果たしてこの行動には何の意味があるのだろうか、と疑問が湧いてくる。



 ドクはその紫色の体を震わせると、地面に張り付いている苔を体内に取り込む。

 毒を使って界面活性剤的なものを作り出しているのだろうか。そうだとしたら凄い便利だな。一家に一体、ポイズンスライム。害虫を退治してくれたり、洗剤代わりになります。

 体内に取り込まれた苔は、じわじわと時間をかけながら溶けていった。



『ドクのレベルが上がりました』



「ん?」



 唐突なアナウンスに困惑。

 何処かにレベルアップする理由があっただろうか。

 


 近くにモンスターでもいるんじゃないだろうな、と見渡してみるが、それらしき影はない。

 だったら何でレベルが上ったんだろう、と考えていたら、ドクがぷるぷると震えて動き出した。

 どうもさっきまでいたところの苔を全て食べてしまったようだ。



「あ」



 もしかして、これ・・か?



 俺は足元をじっと見つめると、HPバーと名前が表示された。



『ダンジョンモス』



 …………この苔、モンスターだったのか。

 別にドクはお腹が空いたから、ちょうど生えていた苔をむしゃむしゃしていた訳ではない、と。

 それどころか敵の存在に気付かない俺の代わりに、戦ってくれていた。

 いや、動かない奴相手に戦うも何もないけど。それでも、モンスター扱いされているのなら、攻撃してきたかもしれないし。



「きゅー」



 おぉ、やっと気付いたのかい? 全く、勘の鈍い坊っちゃんだぜ。ここは俺に任せて、お前は楽にしてな。

 とでも言うように、ドクが鳴いた。

 君ってそんなキャラだっけ? 俺の感じ方が悪いのかな。



 試しに俺もダンジョンモスを踏んづけてみたが、ダメージは与えられない。

 火とかが使えたら一瞬で全滅させられそうなのだが、魔法使えないからなぁ。

 一応アイテムボックスを見てみたが、火が付きそうなものもなかった。

 じゃあ、戦闘はドクに任せるしかないのかー、とため息を付きかけたとき、はたと気付いた。



 ……このまま掃除していったら、足場の確保も出来るしレベル上げにもなるんじゃね?

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