第2話 協力

 兵隊人形が殺し合いデスゲームの開始を告げてから、俺はひとまず、周りにいる12人を把握しようとした。が、既に半数以上はいなくなっていた。どうやら、この状況を飲み込んでいち早く自分が優位になれるよう街の中へ入っていったらしい。


 俺は残った4人の顔を見渡す。知っている者はいなかった。

 それぞれが、どこか不安げな顔をしている中、一人の15歳にも満たない少女が一歩前へ出て自己紹介のようなものを始めた。


「わ、私の名前はヘトラ・スロスです。正直何が起こっているか全然理解できてなくて、その、えっと、よ、よろしくお願いします!」


 かなり緊張してしまう性格なのだろう。俺がそう考えていると、少女に触発されてか20代前半とみられる、髪を肩ほどまで伸ばした女性も淡々と話し始めた。


「ジレア・ボル。よろしく」


 続いて俺も、名前を名乗る。


「ルーブ・スタールだ。よろしく頼む」


 最後に、4人目の男が話す。


「ハリー・バーフッツだ」


 全員が名乗り終えたところで、バーフッツが一つの提案をした。


「私に案があるのだが、今先に街へと入っていった者たちはかなり手練れだと思う。そこでだ。我々4人で協力しないか」


 こいつが何を考えてこんなことを言ったかは知らないが、今は協力するのがベストか…


「まぁ、いいが……4人は多すぎないか。2人2人のペアで良いと思うが」


「賛成」

「賛成ですっ!」


 俺の意見に女性二人が賛同したこともあり、結果的に2人ペアで行動することになった。俺のペアはというとハリー・ブーフッツという30代半ばとみられる男になった。

 相手を信頼しきったわけではないが、ここで協力関係を築くことで生存確率は上がるはずだ。何より、こいつも「最強の暗殺者」と呼ばれているはずだから、実力に関しては申し分ないだろう。



 ブーフッツと共に、高層ビルが立ち並ぶ街へと足を踏み入れてから5分が経過した。いまだに他の暗殺者には会っていないばかりか、人の気配すら感じられない。流石は暗殺者たちだ。

 そういえば、ブーフッツの得意な殺し方は何だろうか。先程の兵隊人形の言い方からして、恐らく全員が何か1つの殺し方のスペシャリストなのだろう。見た感じ、筋力があるというわけでもないから接近戦向きではないはずだ。

 まぁ本人に聞くのが一番早いか。より連携したプレーを目指すためにも。


「なぁ、お前の得意な殺し方ってなんだ?」


「人に聞く前に自分が先に教えたらどうだい」


 こいつ腹立つな。まぁ正論だけど。正論だけど…。


「俺は短刀を用いた近接戦闘特化だ」


 俺がそう言うと、相手も少し不愛想に教えてくれた。


「私はガスを用いたものだ。基本的には待ち伏せタイプだな」


 信じるかどうかはおいておいて、コイツの能力を俺とどう合わせたらいいだろうか。


 そんな風に考えていると、突然、


“おいおいおイ。なさけねぇなァ。もう一人死んじまったってヨ。ほんとに最強の暗殺者なのかヨ。つまんねぇなァ。ちなみに死んだのはジレア・ボルだゾ”


 付近のスピーカーから、兵隊人形が先程まで一緒にいたジレア・ボルの死を告げた。

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蠱毒の壺の暗殺者 いと @ito_3830

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