第1話 殺し合いの始まり

 ちょうど金曜日になるタイミングで俺のスマホが一通のメールを受信した。

 俺の番号を知っているのは協会の人間だけだから、きっと依頼か何かだろう。そう考え、俺はメールを確認する。

 


 こんにちは。ルーブくん。今回の標的は、我々とは別の協会の暗殺者だ。複数名の暗殺なので心してかかりたまえ。場所は○○街×-×××-×だ。任務遂行時刻は明日の土曜日の7:00で頼む。健闘を祈る。



 案の定、新しい依頼だった。以前の依頼から時間がたっていたため、久しぶりの仕事になる。

 俺は現地調査をするため、短刀を研ぎながら荷物を用意して出発する。


 目的地の廃墟と化したアパートに到着した。が、何の変哲もないただのネズミやクモの巣窟だった。建物内の構造も理解しようと、俺はアパートに立ち入る。


 階段を登って201号室に入り部屋の中を見渡す。部屋の中に明日の仕事で使えそうな物はなかった。以前住んでいた者がしっかりと新居へ持ち運んだのだろう。俺は続いて202号室、203号室、204号室と、やけに片付いている部屋を確認する。そして、2階の端っこの205号室のドアノブに手をかけたところで、異変に気付いた。中で人の気配がするのだ。俺は、静かに気配を殺して、音をたてないように部屋へ侵入しリビングへ進んだところで、思わず驚愕の声を漏らした。人が倒れていた。12人も。

 俺は生死を確認するために脈を測ろうと近づいた。途端、強烈な眠気が襲ってきた。眠らないよう朦朧とした意識の中、短刀で刺激しようとした――が―――――



「パーン‼」

 強烈な銃声で俺は、はっと目を覚ます。すぐさま周囲を確認するが、そこはもう俺の知っている場所ではなかった。代わりに、先程倒れていた者たちがいた。


「おイ!お前らよく聞ケ!お前ら13人を誘拐させてもらっタ!」


 先程銃声がした方を向くと、一体の兵隊人形が乗り捨てられた車の上から声を発していた。


「今からお前ら暗殺者に殺し合いをしてもらウ!それぞれが "最強の暗殺者" だなんて言われてるらしいけど、"最強の暗殺者" って13人もいるカ?俺は天才だから分かっちゃったんだけど、"最強" って1人でよくネ?てなわけで "最強" を決める殺し合いの始まりダ!」


 話の内容が全く分からなかった。頭が回らない。この兵隊人形は何を言っている。そもそもなぜオモチャが喋っている。俺が完全に混乱しきっていると、人形は続けて言葉を発する。


「ただし、そのまま殺し合いをさせてもつまらなイ!それぞれ得意な暗殺方法があるんダ!そこでダ!俺はお前らに能力を授けることにしタ!この能力を駆使して面白い戦いを見してくれヨ!」


 能力?またしても新しい情報に脳の処理が追い付かない。


「能力は各自潜在的な感覚で使えるはずだかラ。俺から伝えることはもう無イ!健闘を祈るゼ!」


 俺は一つだけ理解した。とんでもない殺し合いデスゲームに巻き込まれてしまったと。

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