第2話 ママの名は
「……とにかく、まずは現状確認わよ……」
予定では、明日の夏祭りの夜、デーモン信者達が決起する。
奴らが魔獣を呼び出した後はじまるのは、避けようのない虐殺だ。
今から20時間後くらいか。
ルーシー覚醒のためのイベント。
衛兵達もこの町の代官も冒険者達も為す術なく、魔獣達に殺されていった。そして、ルーシーの母親であるこの俺も……。
そこで俺はふと思いつく。
この世界が例のクソゲーである『陰キャですけど世界救ったらみんな私のこと覚えててくれますか?』の世界と同じだとすれば、レベルやスキル、ステータスという概念もあるはず。
ルーシーの母という、死亡前提のある意味モブキャラにも、レベルは設定されてるのだろうか?
「どうすりゃわかるんだわ? とりあえず……『ステータス』わよ!」
異世界転生モノのWeb小説とかでよく見かける呪文を唱えてみる。
ピ、という音と共に黒いウィンドウがポップアップした。
これ、ゲームで見たものまんまだ。モブキャラにもちゃんとステータスは用意されてるんだな。
それはさておき、どれどれ……。
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ダークローズ Lv42
次のレベルまでの必要経験値 3060
職業:闇の踊り手
スキル
『封印術1』 Lv10
→敵(単体)を封印する
『封印術2』 Lv10
→敵(範囲内の全て)を封印する
『封印術3』 Lv10
→魔法を封印する
『換装』 Lv10
→装備の変更を短時間で行う
『踊り:魅惑』 Lv10
→周囲の目を引き付け魅了する
『真・封印術』 Lv3
→あらゆる事象を封印する
装備
『質素な服』
持ち物
『エッチな服』
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ダークローズ⁉
俺、いやルーシーママはダークローズなんて名前だったのか……。
知らんかった。
ゲーム内ではただ、ママとしか呼ばれてなかったから……。
ていうか、レベル42⁉
ゲーム内でルーシーがラスボスの災厄のデーモンに挑んだのがレベル35くらいなんだが……それより上?
しかも、何だこのスキル⁉
完全にルーシーと同じ封印術師そのものじゃねーか⁉
いや、それ以上か?
そりゃ、娘が封印術師だったんだからルーシーママも実は同じ力を持ってたとしてもおかしくないのかもしれないが……。
でも、こんな強かったらイベントで魔獣に襲われても死ななくね?
主人公であるルーシーを覚醒させるためだけに、強制的に死なされたのか?
ほんとにひでえゲームだな!
普通に戦えばラスボスにだって勝てるようなスキルのカンスト具合だし……。
ゲームでは、仲間の前衛が盾役をやっている間に、ルーシーが『封印術2』を発動して敵を異世界に封印。それで取り逃がした敵を『封印術1』で消していくみたいな感じだった。
ただ『封印術2』のレベルがなかなか上がらず、そのせいで取り逃がす敵が多くなってしまっていたのだが……それがママはレベルMAXまで行っている。
これなら開幕、『封印術2』一発で敵全て倒せるんじゃないか?
それに『換装』スキルがMAXなのも有能な封印術師の証だ。
このゲームの封印術は戦闘時、普段着から恥ずかしい服装に着替えてからでないと発動できない。
いろいろ言いたいことはある。
なんで? という問いに対する取ってつけたような理屈もある。
が、とにかくそういうシステムだから仕方ないのだ。
で、『換装』スキルはその着替えの時間を短くしてくれる。
それこそ、スキルMAXなら0.02秒で変身するくらいの勢いといえよう。
そうすれば、より速く隙なく敵に封印術を使えるようになるわけだ。
そして、『踊り:魅惑』スキル。
これも人の目をひきつけるという、より多くの人に恥ずかしい格好を見てもらうために有用なスキルだ。
封印術は恥ずかしい思いをすればするほど威力が上がる。
大勢の人にエッチな格好を見られるとなれば、どれだけ恥ずかしさが累積されることだろう。
実に封印術とマッチしたスキルを取っているな、ママ。
ただ……『真・封印術』などというスキルがあるのは知らなかった。
あらゆる事象を封印、とある。
なんでも封印できる、のか?
なら、これだけあれば他は要らないんじゃないか?
まあ、これは後でどんなスキルなのか検証してみよう。
最後に装備だが……。
普段は『質素な服』を着ているくせに、持ち物に『エッチな服』……!
これは完全に封印術師ですわ!
ていうか、ママ、いつでも『エッチな服』に着替えられるように持ち歩いてるんだな……。
大人って色々あるよな。
……ともかく、俺がルーシーのママで名前はダークローズということは間違いないようだ。
それにこの強さ……。
ゲームではろくな抵抗もせず襲われるまま死んでしまったダークローズママだったが……。
それはあのクソゲーのシナリオの都合のせい。
本来の力を使えるのなら、デーモン崇拝者達の決起を打ち破れるかもしれない。
となると、明日イベントが始まるまで待っているのは愚の骨頂……!
イベントが始まる前に……。
「先に、奴らを狩る……!」
そうすれば……あのかわいそうなルーシーに母親の死という惨劇を味合わせずに済むし、第一俺が生き残れる。
「……やってやるぜわよ……!」
俺はひそかに闘志を燃やした。
だから気付かなかったのだ。
俺の横でルーシーが俺のことを異物でも見るような目で見始めていることを……。
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