第34話 過去

「ど、どういうことですか!?」


 オレは動揺した。

 あのスーツの男がヒミコさんだと聞かされたからだ。


「ふむ、どう説明しようかね。

 かつて僕たちは一つだった。

 だが分かれた、いや分けたんだ」


「分けた......」 


「君も知っているだろう、

 僕が右目に記憶と魂を分けたのを」


「ええ、じゃあ」


「そうさ、元々一つだった僕は、

 その身体と魂を二つに分けた。

 その片割れが彼なのさ」 


「なんでそんなことを」

 

「さあ、その頃の記憶が曖昧でね。

 戯れなのか、それとも何か意味があったのか......」


 そういうと、思い出そうとするように、

 ヒミコさんは目をつぶりお茶を飲む。


「でその片割れが現れたのと、

 今回の事件と何の関係が......

 まさかその片割れがヒミコさんを殺した犯人!?」  


「いいや、彼が殺したんではないよ」


「なぜそう断言できるんですか」  


「何故なら彼は一人の人間に戻ろうとしているからさ」


「一人に戻る......」


「ああ、分かれた身体を一つにしようとしている。

 正確には魂だけどね。

 もし彼が僕を殺したならば、

 身体を奪い取るはずなのさ」 


「なるほど、

 でもヒミコさんは元に戻りたくはないんですか?」


「ふむ、なぜだかわからないが、

 彼とは一緒になりたくはないんだ」


「それじゃ犯人は......」


「多分君だタイガくん」  


 ヒミコさんが事も無げにいう。


「ええオレ!?

 どういうことすか!!」  


「ふむ、いった通りさ、

 僕は彼とは一緒になりたくはない。

 たから、君に身体をバラバラに散らせた」  


「オレが......

 身体を他の魔法使いに送ったのって」


「僕だ。

 奪わせないように、

 守らせたんだろうね」

 

「じゃあ!

 ちっこいヒミコさんはなんで、

 探してたんですか!?」


「多分記憶がなかったんだね。

 右目だけにそれほどの魂と記憶を持たせられないから、

 覚えてなかったんだろう」


「なんてことだ......

 全く意味がなかったなんて......」


「いや、そうでもない。

 君がいる」


「どういうことですか?」


「男の僕は、君のことを完全には知らない。

 右目と左足のことも、取り込み損ねた」


「じゃあ! 

 もとの時間に戻ってなんとかなるんすか!!」


「それは無理だね。

 僕が君を元の時間に戻せたとしても、

 僕自身が行けないし、

 まあ、いったとしても勝てるとも思えない」


「いや、どうするんすか!

 帰ってもオレじゃ、

 なんにもできないっすよ」 

 

「僕の身体を誰が持っていたか、

 教えてくれないかい?」


 そういわれてヒミコさんの身体を持っていた魔法使いの話をした。

 

「ふむ、なるほど、

 かなり癖のある者に渡したようだ......」


「何か意味があるんですか」


「多分......

 少し君の記憶を見せてほしいんだが、

 いいかな」


「いいすけど、記憶?」


「最後の頭、この魔法が記憶メモリーなんだ。

 相手の記憶をみることができる」


 そういうと、おもむろに立ち上がり、

 ヒミコさんはオレの頭を持ち引き寄せた。

 

「めちゃめちゃ、えいちかっぷが目の前にイイイ!!」


 オレか興奮していると、

 しばらくしてヒミコさんは呟く。


「なるほど......

 そういうことか......」


「どういうことすか?」


「身体を渡した面子には、

 適当に渡したわけじゃないのさ」


「ん? 

 こうなることを予見してたってことすか?」


「君がここにいるだろう。

 それで、僕は計画をたてたのだろうね」


「あっ! 

 過去にオレが飛んで、ヒミコさんに伝えたから!」


「そういうことだ。

 君とあったのは偶然じゃない。

 そして向こうの僕がそう動くように考えた。

 右目を残したのもそうだ」


「そういえば右目の魔法は知らない......」


「右目の魔法はあとで教えるよ。

 それより......」


 そういうと、ヒミコさんは声をかける。


「きなさい」


「はい、マスター」


 現れたのはラクリマだった。


「な、何でここにラクリマが」


「元々、レイデアが売ったものを僕が買ったんだ。

 彼女にデミウルゴスを封じたのは僕だったろう」


「そういえば......

 女性に仕えてたっていってた...... 

 ヒミコさんだったのか」


 オレは頭が混乱してきて、

 ソファーにうなだれて座った。

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