第31話 闇の錬金術師《アルケミスト》

 オレたちが神聖教会に向かうと、

 教会から火の手があがっていて、

 東金牧師が、教会の前に倒れていた。

 

「大丈夫ですか!?」


「う、た、タイガくん」


「なにがあったんだい?

 東金くん」 


「ヒミコさん......

 いきなり襲われて、

 エクスが、エクステントがさらわれてしまった、

 すまない、

 助けてはもらえないか......」


「誰に襲われたんすか!!」


「あれは、ホムンクルスの大群、

 その中にレイデア、レイデア=イーラル......

 昔一度みたことがある」


「レイデアか......」


「知ってるすか!?」


「ああ、僕の弟子だった男だよ......」 


「弟子!?」 


「ラクリマ、東金くんを頼めるかい」


「はい、ヒミコさま」


「行こうタイガくん、

 エクスくんのところに」


「はい!」


 そういうとヒミコさんとオレはレイデアのもとに向かう。


 ヒミコさんにつれられある古い寺に来た。

 外からみるとそこからは朽ちた本堂が見えた。


夢限寺むげんじ......

 ここにエクスさんが」


「ああ、おそらく、

 かつてここに研究室を構えていたからね」


「レイデアって一体どんなやつなんですか?

 ヒミコさんの弟子っていってましたけど」

 

「そうだね」 


 ヒミコさんは語りだす。


「とても真面目で優しい男だったよ。

 錬金術アルケミーの才能もあり、

 その力を人々のために使いたいから、

 と僕に師事した。」


「そんな人が何で......」


「変わってしまったのさ、

 将来を違った恋人を病でなくしてね......

 彼女の病を治すよう懇願された」


「治してあげなかったんですか」


「治すのは可能だった......

 が、本人が頑なに拒否した。

 彼女は神聖教会の信徒だったんだ。

 魔法の力は使わないとね......

 今回エクスくんをさらったのは、

 その意趣返しなのかもしれないね」


「それでそのあとは......」


「お決まりのコースさ、

 死んだ彼女をよみがえらせる為か、

 ありとあらゆる実験を行ったという、

 そして僕は彼を捕縛したのさ」


「そうですか......

 それで人の復活なんか可能なんですか?」


「無理だね。

 過去に戻り、変えるぐらいすれば、

 可能かもしれないが......」


「だけど、アルスタインとか生きてましたよね」


「それは死ぬ前に魔法を使って、

 魂を分離してたからだ。

 死んでからでは、マイルズみたいに不死者アンデッドに、

 なるしかない」


「じゃあ、無駄な努力ですか、

 ......なんかやりきれないっすね」


「そうだね...... 

 やはりあのとき殺してあげればよかった」


 ヒミコさんは悲しそうにいった。


「それって優しさでしょう。

 だから殺せなかった」


「いいや違う......

 ただ人ならばこういうとき、

 こうするのだろうと、思ったことを真似てみただけさ」


 そういうとヒミコさんは沈黙した。

 

 寺の境内に入ると、

 外とは違い病院のような近代的な建物になっていた。


「まあ、こんなもんすね」


「君もずいぶんなれたね。

 おっと、さっそくお出迎えだ」

 

 目の前から狼のような獣たちが近づいてきた。


「キメラすか」


「いや、ホムンクルスだろう。

 人型ではないが、命令に忠実に動くロボットのようなものだ」

 

 オレは遅延ディレイでふれようとするも、

 のホムンクルスたちはすぐさま距離をとる。


「こいつら、触れさせない!?」


「この間の理性を無くしたキメラたちとは違い、

 見境なく攻撃はしてこない」


「じゃあ、遅らせてかわしますか!」


「いや......」


 そういうと、ヒミコさんは周囲を含めて全部吹き飛ばした。


「ぐおわっ!」


「かわせないように全部なぎ払う」


「むちゃくちゃだ!」


「さあ、さきを急ごう」


 オレたちは建物内を進む。

 次々人型のホムンクルスが出てくるが、

 その度ヒミコさんはためらいなく無慈悲に破壊する。


(これが本当の魔法使いか......

 目的の為なら躊躇しないか)


「......怖いかい」


 心を読んだかのようにヒミコさんは聞いてきた。


「......正直、今までのヒミコさんとは違うから、

 他の魔法使いたちもみてきましたが、

 でも本来、人もいろんなしがらみがなければ、

 こんな風なのかとも思うっす」


「そうだね。

 人間関係やら、理性やら、社会性やら、

 さまざまな制約で人は自らを律している。

 それがなくなると、人も僕たちみたいに、

 自らの為だけに生きる化物になるんだろうね」


「それは......」


「ルールや法や道徳なんてのは、

 他人を守るためにある訳じゃない。

 自分を守るためにあるんだよと、

 魔法使いをやってるとわかるだろ」


「うす......」

 

 オレたちは最下層フロアについた。

 そこの奥に大きな部屋があった。

 扉を蹴破ると、中央のベッドにエクスさんが横になっている。


「エクスさん!!」


「騒がしいですね......

 大事な研究の成果が無駄になるでしょう」


 そういって白衣を纏い、

 痩せ細った長身の男がこちらをみていった。


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