第30話 風雲急を告げる

 オレは倒れそうになる

 いひかを支えた。

 

「ありがとうタイガ......」

 

「はやく、エクスくんのところに行こう」


 ヒミコさんにうながされ、

 ラクリマと両方でいひかを支えながら、

 エクスさんの元へと急いだ。


 エクスさんはメタトロンを操り、

 なみいるキメラたちを弾き飛ばしていた。


「すごいな......

 いや手伝わないと!」


 オレとヒミコさんも手伝いキメラたちを掃討した。


「......いひかさん!

 無事でよかった......」


 そういってふらつくエクスさんを、

 ヒミコさんが支える。


「さすがにこの数を相手にしては、

 魔力も尽きるね」


 そういって意識の無いエクスさんを背負う。

 そしてオレたちは洞窟をあとにした。


 ヒミコさんの家につき、

 いひかをベットに運ぶと、

 エクスさんは目を覚ました。


「ふう、いひかさんが無事でよかった......

 とりあえず安心したので、

 一度帰り、教会に報告をします」


 そういってエクスさんは、

 帰っていった。


「さて、アルスタインから、この左足のペンダントと、

 心臓のキューブが手に入った」


「ヒミコさま、心臓はどのような魔法を

 お使いできるのですか」  

 

 ラクリマが聞いた。


「ふむ、

 心臓は時間操作タイムさ」


「オレの遅延ディレイとは違うんすか」


「そうだね。

 君の使う遅延ディレイは、

 時間を遅くするだけ、

 この時間操作タイムは、

 時間全てを操る」


「そんな強力な魔法、

 なぜ、アルスタインが使わなかったでしょう」


 ラクリマは不思議そうに聞いた。


「使わなかったのではなく、

 使えなかったのだろうね。

 これは僕の魔法中、最も魔力を消費する。

 僕でも使えばほとんどの魔力を失うんだ」


「なるほど、それで使えなかったのか......

 じゃあ、あと一つを持っているのは、

 闇の錬金術師アルケミストだけか」


「ああ、そしてその身体は残りの頭だね。

 それで全ての身体が揃うよ」


「全て......

 ついにえいちかっぷが完成する......」


「まだいってるんだ。

 徹頭徹尾とはこの事だね」


「もちろんっすよ!

 オレがここまできたのは、

 そのためなんすから!」


「はっはっは、

 わかった、わかった」


「あのヒミコさま、私をえいちかっぷに、

 できませんでしょうか」


 突然ラクリマがそう言い出す。


「なにいってんの!? 

 ラクリマ」


「マスターがえいちかっぷがいいとおっしゃるので......」


「ま、まあそうなんだけど、

 ラクリマみたいに童顔でえいちかっぷは、

 オレの感覚からは、なしなんだよな」


「だめですか」


 そういうラクリマはなぜか悲しそうに見えた。


「大丈夫。

 ラクリマはそのスレンダーなボディが、

 びったりだよ」


「そうですか」


 心なしかその無表情の顔が嬉しそうに見える。


「なにが大丈夫なんだい」


 ヒミコさんがあきれている。


「でも、ヒミコさん、

 もう九割身体が集まったんだから、

 身体は元に戻るんじゃないすか」


 オレは期待を込めてそういった。


「いや身体だけなら、

 前の状態でも戻るはずだったのだよ......

 しかし、この身体になってしまった」


「ヒミコさんでもわからないこともあるんすね」


「そりゃあね。

 この世界の全てを知ることは、

 人間には無理さ......」


 そういうヒミコさんは、

 いつもの飄々ひょうひょうとした感じと、

 違うように思えた。


 そのとき、オレのスマホがなった。


「だれだ?

 エクスさんかな。

 あっ、東金牧師か」


「......タ、タイガくん、

 すまない......助けてくれ、

 エクスが......」 


 東金牧師はそういうと、

 こちらの呼び掛けに反応しなくなった。

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