第28話 アルスタイン

 オレたちは次の日ある湖に来ていた。


 昨日エクスさんが来て、神聖教会の情報網から、

 アルスタイン=ジョイスの居場所を特定したという。

 それがこの荒魂湖あらたまこだという。


「ここか、でも簡単に居場所がわかるのが何とも」


「まあ、罠だろうね」


 ヒミコさんは簡単にそういってすませた。

 

「ですが、いひかさんを救うには、

 飛び込むしかないでしょうね」


「エクスさん、アルスタインてどういう人間何ですか?」


「父がいうには、愉快犯のようなものだということです。

 特に目的などもなく行動し、

 魔法使い、普通の人関係なく、

 殺害する異常者だという話です」


「愉快犯か......

 変なやつしかいないな魔法使いって」


「まあね。

 前にも言ったけど、

 魔法は大抵の欲望を叶えるからね。

 人間本来持つを本能を抑えづらいのさ」


「残念ながらそうですね。

 だから、私たちのように教義や、

 魔法管理局のような縛りが必要なのです」


「なるほど......」


「あそこに洞窟が見えてきました」


 ラクリマにいわれてみると、

 湖の近くの岩場に洞窟がある。

 エクスさんが灯りの魔法を使い照らす。

 かなり深く奥まで続いている。

 オレたちは慎重に進む。

  

「なにか来るね」


 先の暗い場所けれ赤い目が複数光る。

 そして、獣たちが飛びかかってきた。


「うおっ!」


 エクスさんがメタトロンで吹き飛ばし、

 ヒミコさんが衝撃波ウェーブで破壊する。


 倒した獣を見ると、二つの頭のものや、

 蛇頭と狼の身体のような、

 異形の獣が数体いる。


「これもキメラっすか」


「そうですね。

 それにしても、生き物の命をこんな風に使うなんて......」


 エクスさんは哀しげに呟く。


「魔法使いとしては至極真っ当な方だよ。

 自らの願望を叶えるため、

 使えるものは命でも全て利用するんだからね」 


 それからもキメラたちが次々現れる。

 オレたちは排除しながら奥へと進む。

 

「どれだけいるんだ!?」


「さすがに疲れてきましたね......

 メタトロン操作もおぼつかなくなってきました」


「それにしても、

 この合成パターン数からみて、

 やはり実験体のようだね」


「みなさん少し明るい場所があります」


 ラクリマが、慎重に確認している。

 明るい方にいくと、大きな部屋のような場所にでた。

 さまざまな機械と書類が乱雑に放置され、

 大きなベッドが十以上置かれている。


「この大きな筒なんだ......」


 オレは複数設置してある、

 人より大きな円柱状の筒の中を覗き込む。


「人!?」


 中の緑色の液らしきものの中には、

 人の身体に獣の顔の生き物がいる。


「キメラだね。

 しかも人と獣の合成体だ」


 ヒミコさんがそういって他の筒をのぞいている。


「信じられない......

 人までキメラにするなんて......」


 エクスさんが絶句している。


「別におかしくはないでしょー、

 人間だってただの生物なんだもーん」


 そう声がした方向をみると、

 ピエロといひかがいる。


「いひかを返してもらう」


「んふう、ダメだよ。

 こんな強い魔法使い実験に、

 使うに決まってるじゃないか」


 そうアルスタインがいった瞬間、

 アルスタインの半分が無くなる。


「ヒミコさん!?」


「死んじゃいないよ」


「いーや死んださ、

 ひどいことするなーあ」


 半分になったアルスタインが、

 笑いながらそういった。


「不死なのですか......

 ならば!」


 エクスさんがメタトロンをほうり投げる。

 そのメタトロンを、

 神降ろしをした、いひかが銃撃し落とす。

  

「死んでるってばあ、

 死者をもてあそぶのはだめだよー」


 そういうと、奥から人型の獣人が次々と出てくる。

 

遅延ディレイ!!」


 その獣人たちを遅らせると、

 いひかが銃を撃った。

 オレたちはかわすが、

 当たったところから凍りついていく。


「アルスタインを倒せないんじゃ、

 どうしようもないっす!」


「彼は不死ではないはずさ、

 それなら僕に命乞いはしなかったろうからね」


 ヒミコさんはそういう。


「くひひ」

 

 いひかと笑うアルスタインは奥へとさった。


「キメラは私がうけもちます!

 二人はアルスタインといひかさんを!!」


 エクスさんはメタトロンを振り回し、

 獣人を吹き飛ばしながらそういった。


「お願いします!」


 オレとヒミコさんとラクリマは奥の部屋へと、

 アルスタインを追う。


 奥の部屋につくと、

 大量のキメラや人の死体が転がっている。

 その中に、さっきのアルスタインの姿もあった。


「これは......」


「死んでるね。

 しかも、僕がやったよりかなり前にだ。

 ということは......」


「んふぅ、ご明察!」


 そういいながら、いひかが現れた。


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