第23話 法務士《ローヤー》

 襖の奥から現れた男女は、

 明らかに異質な圧力をはなっていた。


「いひか......

 どういうつもりかしら」  


「裏切り者は処刑だぞ」  

 

「こいつらをやればいいのか」


「......なんで隊長たちが」  


「魔法管理局の隊長なら、

 私といひかさんで一人相手をします。

 タイガさんとお二人は残りをお願いします!」


 そういうとエクスさんは呪文を唱え、

 いひかと隊長一人がその場から消えた。


「ほう、結界魔法かやるな。

 あの娘、神聖教会のシスターか」 

  

 武士のような甲冑を着て人より大きな日本刀を持った、

 大男はそういう。


「このホムンクルスとお嬢ちゃんとしまりのない顔の子、

 この子達が本当に《永遠の魔女》の関係者なの?」

 

 花魁おいらん姿の女性は手に持った扇を口元に当てた。


「だれが!

 顔にしまりのない子ですか!

 妖艶なお姉さん!!」


 オレが抗議する。

 

「ふふっ、ごめんなさいね。

 でも永遠の魔女に関わるものは、

 殺せと命令されてるの」 


 そう笑みを浮かべながら呪文を唱え扇をふる。

 オレは遅延ディレイの魔法で横に移動すると、

 袖を掴むと魔法を使った。


「ごめんなさい、すっぽんぽんになってもらいます。

 あくまでも、これはしかたないことなんです。

 仕方ないんですぅ」 


 するとパシャという音と共に、その姿を消した。


「や、やっちまった!!

 オレはただすっぽんぽんにしたかっただけなのに!!」


「誰をやっちまったの?」


 そういう声が聞こえると、

 地面から大量の水が湧き濁流となってオレを流した。

 

「ぐはあ!!」


 その水をなんとか遅くして助かる。


「な、なんだ!?

 こんななにもないとこに水が!!」


「あれは神降ろしだよ。

 天使とかと同じ霊的存在を自らを依代として戦う魔法さ。

 いひかくんと同じさ」


 ヒミコさんはそういった。


「ふふっ、髄分詳しいのね。

 そう神降ろし、弟橘媛おとたちばなひめよ」


 そういって水が人の形となった。


「そっちの娘のほうが厄介そうだの、

 天手力男命たぢからのおのみこと参る」


 そういうとその巨体とは思えない速さで近づくと、

 巨大な日本刀をヒミコさんに振り下ろした。


「あぶっ......」 


 オレがいう前に、

 日本刀と男の甲冑は砕けちり男は吹き飛ぶ。

 その男はちいさな老人だった。


「なっ!? 

 バカな」


 そう水の女がいうと、

 横にヒミコさんが現れ手を女に触れる。

 すると、水が吸われ元の花魁の姿になった。


「そんな......

 魔力が吸われて神降ろしが解けた......

 がっ!!」


 すると、ヒミコさんがけとばし女は気絶した。


「すげえ!!

 それって反射と吸収すか!」


「あと空間移動さ。

 ただ魔法の威力も魔力もほとんどだせないね」


 そういってヒミコさんは腕を回している。


「その強さなら、

 もうオレ要らないじゃないすか」


「いいや、この身体では連発は無理のようだ。

 僕の身体の持ち主と戦うには僕一人じゃきつい。

 君の力が必要だ」


「そういわれたら、

 えいちかっぷの為に頑張るっす!」


「うむ、頼む」


「......エクスさんといひかさん、

 お二人とも大丈夫でしょうか?」


 ラクリマがそう聞いた。


「あの二人ならなんとか倒せるだろう。

 僕たちは、相卜くんを探して、

 身体を取り戻そう」


 オレたちは襖をあけ先程歩いた通路を走る。

 局員たちが行く手を塞ぐが、

 遅延ディレイで足止めして先を急ぐ。


 相卜がいた部屋に入る。

 そこには相卜が座っていた。


「逃げずに、ここにこられるとは、

 ずいぶん余裕なのですね。

 まあ、隊長を退けたのですから当然ですか......」


 そういうと呪文を唱える。

 部屋が端が見えないぐらい広く大きくなる。


「ふむ、空間拡張か......」


「ええ、管理局を潰すわけにはまいりませんので、永遠の魔女」 


 そういって目をつぶったままにっこり微笑む。


「やっぱり知ってたんすか......」


「私のこの目が教えてくれたのですよ」


 そういうと額の真ん中が左右に開き目が現れた。


「僕の左目か」


 オレが魔法を使おうとすると、

 ヒミコさんは制した。


「ダメだよタイガくん。

 あの目の魔法は模倣コピー

 魔法を使うと模倣されて使われる」


「ええ、ですが使わなくともわかります。

 天探女あめのさくめ......」


 そういうと相卜の身体を光りが包み、

 羽衣をかけた巫女姿へと変身した。


「相卜くん、

 君はどうして僕を殺そうとするんだい?」


「別にあなたを殺したいわけではありませんよ。

 ただ......

 あなたの力が欲しいのです」


「まさかまたコレクターっすか」


「いいえタイガさん。

 私はこの世に秩序を産み出したいだけです」


「秩序......」


「永らく魔法使いが非道をする様をみてきました。

 魔法はこの世界の害悪、

 もはや魔法そのものを排するしかないという、

 結論に至りました」


「なるほど......

 それであの匣魔監獄ごうまかんごくに、

 局員を送らなかったのかい」 


「ええ、あそこに身体の持ち主がいるのはわかっていました。

 ある者の助言でね......」


「ある者とは?」   


 そうヒミコさんが聞くと、相卜は首をふる。


「それはわからないわ......

 ......が直接私にこの目を送り、

 監獄の脱獄囚のことを伝えてきた。

 この目を手に入れる力の持ち主それだけで、

 信じるには十分でしょう」


「それで監獄を放置したんすか」


「彼らには殺しあってから、生き残った方も、

 と考えていたのですが......

 まさかあなた自らが関わるとは......

 あなたは死んだと聞かされたのでしたが、

 やはりそう簡単には行きませんね」


 そういうとその手をこちらに向けた。

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