第21話 絶望そして光

「いい加減泣き止んだらどうだい。  

 あれから泣きどうしだよ」


 泣いてるオレにちっこいヒミコさんが聞いた。


「だってえええ、約束と、違うもんんん!!」


「どのくらい泣いてるかね。

 ラクリマ」


「私が到着してから、二時間と二十二分十八秒です」


「そんなに泣いてたら水分がなくなってしまうよ」


「ううう、うう、えいちかっぷぅぅぅぅ」


「仕方ありません。

 えいちかっぷはありませんが、私ので」


 そういってラクリマは服を脱ぎ出した。

 オレの涙がピタリと止まった。

 

「いったい、なによ、

 ずっと泣き声が聞こえると、

 気をつかうんだけど......

 

 その時、いひかとエクスさんが部屋に入ってきた。


「きゃあああああ!

 ラクリマさんになになさってるんですか!!

 それにその裸の女の子!!」


「あんたやっていいことと悪いことがあるわよ!」

 

 エクスさんにメタトロンでぶん殴られ、

 いひかに凍らされた。

 

「へぶあっ!」


 そしてオレは意識をなくした。

 

「う、うん」  


 目が覚めるとベッドの上にいた。


「うむ、目覚めたな。

 そのまま死ぬのかと思ったぞ」


「ええ、空中で制止したように八回転はして、

 落ちたところを凍らせられましたね」


 ちっこいヒミコさんとラクリマがそばでいった。


「す、すみません!

 あまりに唐突にラクリマさんと裸の女の子を見たもので......」 


「しかたないわよ。

 あんなのをみたら」


 エクスさんは平謝りしているが、

 いひかは腕を組んで不満そうだ、


「まあ、いいよ......」


「でも戦力強化のために、

 更なるホムンクルスを作るとは、

 タイガは錬金術アルケミーも使えたのね」


 いひかは身をのりだしそういった。


「へ?」


(面倒なのでそういうことにしておいた)


 ヒミコさんが頭に話しかけてきた。


「ま、まあね。

 見よう見まねで......」


「さすがです!

 見よう見まねで、

 ホムンクルスまで作れるなんて!」


 エクスさんは羨望の眼差しで見てくる。


「ま、まあ、

 オレにかかればこのぐらい楽勝、楽勝、

 はっはっはっ!」


「すごい!

 やはりタイガ!

 うちにきなさいよ!

 管理局に!!」


 いひかはオレの腕をとって抱きつく。


(む、胸があたるぅ)


「だめですいひかさん!

 タイガさんは神聖教会に、

 ご協力していただいているのですから!」


「別に所属ではないのよね。

 どう、私と一緒にこない?」


(グイグイ、胸があたるうぅぅ)


「だめです!」


「皆様、タイガさまは私のマスターなのですが」


 なんかラクリマも加わりもめはじめた。


(三人の胸があたるぅぅぅ)


「モテモテだねえタイガくん」


 ヒミコさんがニヤニヤしている。


「うれしい、うれしいはずなのに、

 このぽっかり空いた胸は埋まらないのです......」


 オレはベッドにへたりこむ。

 ......が胸の柔らかさは感じていた。


「まあ、全て取り戻せば、

 完全な姿へと戻れるよ」


 そういうヒミコさんをよく見る。

 子供の姿ながら、とても美しい。


(これが成長したら......

 えいちかっぷに......)


「うおおおおおお!! 

 やる気出てきたーーー!!」


「おお、復活したね」


 オレはやる気を取り戻した。


「それにしてもとても可愛いですね。

 タイガさん、この子の名前は」


「そうね。

 造形がなみじゃないわ」


「そうだろう。

 そうだろう。

 もっと誉めたまえ」


 いひかとエクスさんに誉められて、

 ちっこいヒミコさんは上機嫌だ。


「名前は......

 えっと、ヒミコかな」


「ヒミコさんか、

 よろしくねヒミコさん」


「ええ、ヒミコちゃん」


「ふむ、よろしく、エクスくん、いひかくん」


 その次の日船で陸に戻ると、

 いひかにつれられ繁華街へとやってきた。


 そこは昼なのに、大勢の酔っぱらいや、

 蛍光色の怪しげなお店が立ち並び、 

 えちぃな服を着たお姉さんが客寄せをしている。


「えっ、なんかいかがわしいとこなんだけど、

 本当にここにあるの、

 魔法管理局って」


「ええ」


 いひかが答える。


「ほら、こんな所に所属なんて、

 だめですよねタイガさん」


 エクスさんがそういってくる。


「オレ、なんか所属したくなってきたなあ」


「ええ!!?」


「でしょう。

 人とは弱いもの。

 欲望に容易く流されてしまう。

 その弱さ寄り添ってこそ、

 本当の人というものを知れるのよ」

 

 そういっていひかが上から目線でエクスさんを見る。


「くぅぅ......」

 

 エクスさんがなんか悔しがっている。


「なんか、あの二人いがみあってません?」


「ふむ、どうやらライバルといった感じだね」  


 ラクリマはオレにくっついてきた。


「ちょっと!

 ラクリマ離れなさいよ!」


「マスターは私のマスターです」


「マスターでも、

 女性が体をくっつけるのは、

 タイガさんに悪い影響をあたえかねません!

 少し距離をとってください!」


 三人はぎゃあぎゃあ言い合いをしている。


「なんか三人になった......」


「ふむ、青春だね。

 さあ見えてきた」


 そこにはビルに挟まれた小さな神社がひっそり建っている。

 鳥居をくぐると、そこは人々で埋めつくされ、

 奥に巨大な和風の建物がそびえ立つ。


「あれが、魔法管理局の本部よ。

 さあ行くわよ」

 

 いひかに招かれ、その和風の建物入った。

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