第15話 蓬莱島《ほうらいじま》

 夕方頃、島につくと、

 かなり近代的な町が遠く視界に入り驚いた。


「えっ? ここ監獄以外ないんじゃ......

 ネットでみた時なんもなかったのに」


「こういう、一見なにもないような所に、

 人払いや隠蔽の魔法をかけて、

 裏の人間は隠れているんです」


 エクスさんは笑顔でそういって町から外れた道を進む。


「町にはよらないの?」


「この町の住人は全員魔法犯罪者ですよ。

 下手には入れば命がないです」


「そうなの!?」


「ええ、重犯罪者しかいません。 

 さらに危険とされるものが、

 匣魔監獄ごうまかんごくへと収監されるのです。

 この先に協力してくれるという教会の支部かあるので、

 情報を得ましょう」

 

 少し進むとこじんまりとした教会が見えてくる。

 その教会は窓がなくなっているなど、とてもボロかった。


「なんか...... 

 あの、古いというかなんというか」


「......ですね。

 人がいるんでしょうか?」

 

 扉をノックすると、

 眼鏡のシスターが慌ててでてきた。


「あ、あのすみません!

 どなたさまでしょうか!」


「ええ、神聖教会の東金エクステントともうします。

 連絡をしたんですが?」


「す、すみません!

 なにぶん一人でここを任されてるので、

 監獄より逃亡した脱獄囚の対応でてんやわんやで」


 そういってシスターは眼鏡をあげる。


「そうっすか、

 その事でもお話をお聞かせくれませんか」


「はいもちろん!

 では中へ」


 そしてシスター凛音りんねに話を聞く。 

 

「で囚人が脱獄したって話なんすけど......」


「はい、およそ一ヶ月間ほど前に、

 突然あの匣魔監獄ごうまかんごくから、

 五人の魔法使いが脱獄しました」


「それは誰ですか?

 こちらにはまだ名前は届いてないので」


 エクスさんが聞いた。


「えーと、

 影君主シャドウロード織部 偶人おりべ ぐうじん

 死霊使い《ネクロマンサー》マイルズ=バルディ、

 魔法使い食らい《マジシャンズイーター》真鶴 結愛まなづる ゆいあ

 闇の錬金術師アルケミストレイデア=イーラル、

 死の道化師デスピエロアルスタイン=ジョイスです」


「全員名前だけは聞いたことある有名な魔法使いばかり......」


 エクスさんが驚いている。

 その反応からヤバイ奴らってことはわかった。


「その人たちってなんか共通性あるんすか?」


「ええ、みんな《永遠の魔女》に倒されて、

 収監された犯罪者たちです」


 凛音さんは困った顔でそういう。

 

「まあ、今日はお疲れでしょう。

 こちらでお泊まりしていってくださいね」


 そういって部屋に案内される。

 ラクリマとエクスさんの二人は別部屋だ。


「くう、やっぱり二人とは別か」


「僕が毎晩、添い寝してあげているじゃないか」


 そういってヒミコさんがウインクしたがスルーした。


「それにしてもタイガくん珍しいじゃないか、

 凛音くんは綺麗だし、

 胸も大きいのに反応が薄いね」


「そうなんすよね。

 なんか響かないってゆーか、

 なんとゆーか」


「パットかい」


「いえ、本物っす。

 オレにもそんなことがあるんすね。

 意外っすよ」


「これは僕にも興味なくなってしまったかな」


 少し残念そうにヒミコさんがいった。


「いえ、ヒミコさんには興味津々っす!

 いや、そんなことより、

 これ絶対ヒミコさん関係の話っすよ。

 だって全員ヒミコさんが捕まえたみたいなもんじゃないっすか」


「みたいだね。

 記憶が定かではないが、その五人は見知っている。

 たいてい悪い意味で名の知れた魔法使いさ。

 おそらくこの中の誰かか......

 もしくは全員が僕の残りの身体を持っているね」


「逃げ出したのが一ヶ月前ってことは、

 ヒミコさんを殺したのって、

 こいつらのうちの誰かか、

 もしくは全員で、とかすかね?」


「ふむ、可能性だけならばね......

 だが彼らは協力しあうような人間ではないと思うんたが......

 ......む、何かが来るな......」


「えっ?」


 窓ガラスに人影が映る。

 それは一人ではなく何人もいるようだ。

 隣で大きな音がした。


「エクスさん!!

 ラクリマ!!」


 オレはベッドから飛びおき二人の部屋に向かう。

 ドアを開けると、エクスさんが囲んでいる数人を、

 パジャマ姿で十字架をふりぶっとばしていた。


「大丈夫ですか!

 タイガさん!!」


「エクスさん!

 そんなおもいっきり叩くと死んじゃうよ!」


「大丈夫です......

 もう彼らは死んでますから」


 殴られたその人たちは、

 首がおれても立ち上がり迫ってくる。

 よくみるとそれはゾンビだった。

 

「ぎゃあああ! ゾンビイイイ!!」

 

 俺がそう叫ぶと窓や入り口から、

 続々とゾンビたちが入ってくる。


遅延ディレイ!!」

 

 ゾンビの動きを遅くしてオレたちは走る。


「くそっ! 足を遅くしても速い!

 映画とかと違う!

 ラクリマ、凛音さんは!!」


「たしか礼拝所にいるはずです」


 オレたちがゾンビを避け、

 礼拝所に入ると震えてうずくまる凛音さんがいた。


「凛音さん大丈夫っすか!」


「あ、ああ皆さんご無事でしたか......」


 オレたちは凛音さんと合流し教会の外に出た。

 そこはゾンビたちで溢れかえっている。


「気持ち悪いいいい!」


「こっちです!」


 そういうエクスさんについて走ると町を出て森の中に入る。

 

「凛音さん! 

 一体なんすかあのゾンビ!」


「わ、わかりません......

 でもあれは町の人たちでした......

 もう匣魔監獄『ごうまかんごく》に逃げ込みましょう!

 あそこには魔法管理局の方がたが、 

 多くいらっしゃいますから......」


「魔法管理局......」


「魔法使いを監督している自治組織です」


 そうエクスさんはいう。


「そういや、そんなこと前に聞いたな。

 じゃあさっそく監獄にいきましょう!」


 だが前からも多くのゾンビが迫ってくる。


「くそ囲まれてる!!

 魔力が持つ限り、

 遅延ディレイを広範囲に......」


 オレが魔法を使おうとすると、

 衝撃が起こり前にいたゾンビたちが吹き飛ぶ。


「なんだ!?」


 森の奥から複数の軍服のような服を着た集団が現れた。

 

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