第16話 白雲《しらぐも》いひか

 集団はゾンビたちを攻撃している。


「あの制服は魔法管理局です!」


 凛音さんがそういった。


「大丈夫!?

 こっちへきなさい!」


 そのいって集団の中から、

 オレと同じぐらいの一人少女がでてきた。

 

「凛音、エクスさん、ラクリマ取りあえずついていこう!」


「そうですね!」


「ええタイガさん!」


「はいマスター」


 オレたちは少女たちについて森を走る。

 しばらくして森を抜けると巨大な建物が見える。

 

「ここが匣魔監獄ごうまかんごくです!」


 凛音さんがそういった。

 少女が合図を送ると、巨大な鉄門が音を響かせ開いた。

 オレたちは中に入った。


「魔法結界がはられているからここなら安全よ」


 宿舎のような建物に長い髪の少女は招いてくれた。

 そこにある椅子に座り一息つき、

 オレたちは少女に自分達の目的を少しぼかして話した。


「なるほど、神聖教会の方とその手伝いで、

 脱獄囚を捕らえるためか......

 確かに懸賞金も出てたわね」


 そう納得してくれた。


「で君は」


「私はいひか、白雲しらぐもいひか。

 魔法管理局局員。

 一応ある隊の副長をやっているわ」


「それで、いひかさん。

 あのゾンビは一体?」


「いひかでいいわよタイガ。

 実は私も最近ここにきたばかりなの......

 ここの職員たちも、

 この監獄より外にでてないらしいので、

 状況が飲み込めないのよ」


「凛音さんは?」


 オレは凛音さんに聞いてみた。

 凛音さんは首をかしげる。


「私もなにがなんだか、

 町には一ヶ月に一度食料の買い出しにいくぐらいで、

 私はここの受刑者さんのお話をきくのが任務なのです」

 

「じゃあ大分前から町の住人はゾンビに......」


 町にはいってたらと思うと背筋がゾッとした。


「この魔法は死霊魔法ネクロマンシー

 死者を操る魔法ね......

 しかもこの人数操るとは、とてつもない魔力だわ」


 いひかは腕を組んでそういった。


「強力な死霊魔法ネクロマンシーと言えば、

 死霊使い《ネクロマンサー》のマイルズ=バルディ......」


 エクスさんがそういうと、凛音さんはうなづく。


「脱獄囚の......

 しかし、なぜ逃げていないのでしょうね......」


「わからないけど、

 取りあえず、どうやってこの島からでるか......

 外と連絡はできないのかな、いひか」


「それがここの、連絡の手段は無線だけ、

 でもそれも通じない。

 多分、脱獄囚が壊していったのね」


「完全に孤立か、

 じゃあ助けがくるまで、

 ここにこもるしかないってことか」


 オレがいうといひかは首をふった。


「それが......

 ここの結界は局員による魔法。

 その結界魔法を使える者たちの魔力がつきれば、

 ここにもゾンビが押し寄せてくるわ......」


「えっ!」


「私たちは脱獄囚との戦闘で負傷した者たちの回収として

 志願してきたの。

 後から人員補充されるはずだったんだけど、

 なぜか到着しないのよ」


「それであと魔力は、どのぐらい持つんですか?」


「およそ一日......」


 エクスさんに聞かれ、

 言いづらそうにいひかは答えた。


「一日では助けもこない。

 もう死霊使い《ネクロマンサー》を探して倒す以外ないわ。

 タイガ協力してちょうだい!」


「......それは構わないけど、

 その魔法使い見つける方法があんの?

 このゾンビの数から逃げながらじゃ、無理だろ」


「大丈夫、私はかなり強力な、

 魔力探知サーチの魔法を使えるのよ。

 強い魔力の位置はわかってるわ。

 でもここにいる者たちは新人で、

 そこまでたどり着けないのよ」


「それでオレらも見つけてくれたのか」


「そう、大きい魔力だったので、

 敵の可能性もあったから警戒したけど、

 ほとんど魔力のない人がいたから近づいてみたの」


「私はほぼ使えませんから」


 自重気味に凛音さんが笑って答えた。


「とりあえず今日はここで寝て、

 少し魔力を回復させて、

 明日死霊使い《ネクロマンサー》を追い詰めましょう」


「ええ、いひかさん」


「わかった」


 オレたちは宿舎で休むことになった。


「どう思いますヒミコさん?」


「まあ、十中八九、マイルズだろうね。

 ただ、この数の死者を操るなんてちょっと考えられないな。

 魔力が足りないはずなんだけどね」


「ヒミコさんの身体を複数持って、

 魔力をブーストにしてるとか」


「理屈では可能ではあろうけど、

 そもそも普通の身体では僕の魔力に耐えきれない。

 魔力は生命力を奪い取ってしまう、

 使いすぎると危険といったのはその為さ。

 ほら、あのビグラードの身体をみたろ。

 あれは膨大な魔力に耐える為に、あの大きさだったからね」


「あれってそういうことだったのか......

 でもヒミコさんはなんなんすか?

 えいちかっぷってまさか!?」


「心配はいらないよ、

 僕の身体は魔力に耐えられるよう、

 魔法で改造しているからね。

 姿は普通のナイスバディさ」


 ウインクしながらヒミコさんはいった。


「ふう、焦った。

 ってか改造してんすか!?」


「僕がした訳じゃないがね......

 まあ、明日のこともある少し眠ろう。

 子守唄でも歌おうか」


 その話は少し気になったが、

 とりあえず明日のこともあるので眠ることにした。

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