第14話 匣魔監獄《ごうまかんごく》

 オレが目を覚ますと、教会のベッドにいた。


「大丈夫ですか、マスター」

 

「大丈夫かい。

 ここまで運んでもらったのだよ」  


 ラクリマとヒミコさんがそういう。


「はあ、何とか死ななかったっすね」


「君が痛みでショック死するかと思ってヒヤヒヤしたよ」


「でもなんであの天使倒せたんすか?」


「ああ、それは君に向けていた、

 再生の魔法をあの天使に向けたのさ。

 そして魔力を使いきらせた」


「そうか、反射した魔法でオレが再生してたんすね」


「うむ、しかし痛覚まで操作できないからね。

 君と僕に痛みが走ったのさ、

 でもおかげで魔力を失って天使は消えた」


「そうっすか。

 で身体は水晶はバラバラに砕けましたけど」


「何とか君の意識のあるうちに圧縮して持っているよ」


 ヒミコさんに言われてポケットを探すと、

 中に小さな赤い水晶があった。


「ただ、これはものすごく魔力を使うから、君には使えない。

 僕も君への再生に魔力を使ってるから使えないね。

 魔力のブースターとして使おう」


 そう話をしていると、ドアがノックされた。


「はい、どうぞ」


 オレが答えると東金牧師とエクスさんが、

 部屋に入ってきた。


「ふむ、タイガくん、大丈夫そうだね」


「はあ、よかったタイガさん......」


「ええ、すみません運んでもらって」


「いやいや、君のおかげでビグラードを捕らえ、

 教団を崩壊させられた。

 そして、ウチのエクスも救ってくれたそうだね。

 こちらこそありがとう」


 そういって東金牧師は深く頭を下げる。

 

「本当にありがとうございました。

 それより何か食べたいものがありますか?」


 エクスさんがそう笑顔でいった。


「いや......」


 その瞬間お腹がなる。

 

「クスッ、すぐにお持ちしますね」


「私もお手伝いします」


 そういってエクスさんとラクリマは部屋から出ていく。


「で身体の方は回収できましたか?」


「ああ、なんとかね」


 東金牧師に聞かれてヒミコさんは答えた。


「それは何よりです。

 では次を探されるのですね」 


「うむ、何か知ってるのかね?」


「実は、ビグラードたちが探っていた場所を、

 捕らえた信者から聞き出せました。

 

「ほう、どこかね]


「樹海、島、そして神社です」


「いーんすかそんなの伝えて、

 東金牧師もヒミコさんの身体、

 手に入れようたいんじゃないすか」


「欲しくないといえば嘘になりますが、

 正直他の危険な魔法使いに所有されるよりは、

 本人が持つほうがいいかと思っています。

 過ぎた力は凡庸なものには毒ですからね」


「うん、妥当な判断だね。

 あれは並みの者には余る代物だ。

 きっとその力に振り回される」


 そうヒミコさんは嬉しそうにそういった。


「では次はどうします。

 ヒミコさん」


「さっきの情報も特定するのは難しい。

 まず確実に分かる場所にしたほうがいいね。

 囚人プリズナーを追うとしよう」


囚人プリズナー

 まさか匣魔監獄ごうまかんごくですか!?」


「うむ。

 島と囚人ならあそこに決まっている」


「ごうま監獄......

 絶対ヤバイ感じっすね」


「魔法使いでも重犯罪者が収監されている島です。

 五人が外の手引きで最近脱走したらしいので、

 こちらにも警戒の通知がきていました」


 そう東金牧師は考え込んでいった。


「あそこから逃げられた者がいるのか......

 まあ、それらも含めて一度いってみよう」


 次の日、匣魔監獄ごうまかんごくのある、

 蓬莱島ほうらいじまに向かうことになった。

 

「本当についてくるのエクスさん?」


「ええ、脱走者を捕らえれば、

 うちの教会のアピールもできますし、

 報償金で古くなった教会の修理もできますからね。

 彼らを野放しにしたら大変なことになりますから、

 それに......

 タイガさんに恩返しもしたいので......」


 そう蓬莱島いきの船上でエクスさんはいう。


(はあ、まずいな)


 昨日食事どき必ず付いていくという、

 エクスさんを説得できなかった東金牧師は、

 オレの首に日本刀を突きつけた。


「タイガどの。

 わかっているとは思うが、

 この子に何かしたら君のことを、

 地獄の果てまで追っていくからそのつもりで......」


 そう悪魔の形相でいったことを思い出した。


(なんかしたら、殺されるけど......

 島に女の子とお泊まりなんて我慢できるかな)


 そうはしゃぐエクスさんをみて不安になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る