第13話 万魔殿《パンデモニウム》

 元に戻るとエクスさんと東金さんも、

 相手を倒して帰ってきた。

 

「大丈夫だった、エクスさん、東金牧師」


「ええ!?

 タイガさん全くの無傷ですか!!

 彼らは三人もいたのに!?

 助勢に行こうと思っていたのですが......」


 エクスさんは信じられないという風に驚いてそういった、


「わたしは年ゆえか少し傷をおいました。

 本部のものと後で追い付きます。

 エクスと先にいっていてください......」


「わかりました」


 手傷をおった東金牧師をラクリマに任せて、

 オレとエクスさんは地下鉄へと向かった。

 駅で待っていると電車がくる。


「これに乗ってください」


 エクスさんにそういわれて乗ると、

 そこは電車ではなく禍々しい黒い異形の神殿だった。


「空間拡張ってやつか......」 


「ええ、それに結界魔法です。

 さあ行きましょう」


 神殿に乗り込むと信徒らしきものが次々と現れる。

 オレとエクスさんでなぎ倒し進むと、

 大きな柱が多く立つ大部屋についた。

 その奥の玉座のような椅子に座る太った男がいる。

 男はクチャクチャとフライドチキンを食べている。


「みずからやってくるとはな......」


 こちらをみながら、

 常人とは思えない大きさに太った牧師風の男は、

 そう低い声で言った。


「あなたがビグラードね!

 悪行もこれまでです!

 他の教会の人たちを解放なさい」


 エクスさんはそうビグラードという男をにらんでいった。


「ぐふふっ、なにをいう。

 我らの教義こそが至高。

 ゆえにそれ以外など必要ない

 神を崇めるものは我らに跪くのが道理だ」


「異端のカルト教団など、誰も認めない!」


「お前たちから認められる必要はない......

 我は神の代行者だからだ。

 我の言葉は神の言葉。

 従わないものは誰一人例外なく死んで天へと還るのだ」


「まさかのイカれ発言っすね。

 本当に宗教家っすか?」


「まあ結局、彼らは神など信じてはいないのさ。

 信じてないからこそ、神が禁忌と定めた殺人すら行うのだよ。

 本当に信じているなら、

 何もせずとも神が導いてくれるのだからね。

 とんでもない不信心者さ」

 

 ヒミコさんがあきれたように呟く。


「いけ! メタトロン!」


 エクスさんがネックレスを操る。

 巨大になった十字架は高速で、

 一直線にビグラードに向かう。

 

「ルシファー......」 


 そう呟くと、床に十字架がものすごい勢いで落ちる。


「くっ! どうしたのメタトロン!」


 十字架は揺れてはいるが床ににめり込んでいる。

 ビグラードの横に六枚翼が生えた水晶が現れる。


「きゃあ!!」


 エクスさんは膝をおり地面に伏せる。


「エクスさん!!」


「来てはだめ!!

 こ、これは重力を操ってるようです......

 私は奇跡で耐えますのでビグラードを」


 オレが駆け寄ろうとするのをエクスさんは止める。


「あの天使のせいか.....」


「どうします!?

 あのビグラードってやつ、

 ヒミコさんの身体持ってるんすよね!?」


「ああ、反応を感じる......

 なにかわからないけれどね」


「ちょっと試してみます!

 ついでにあの天使を消し去ってきます!」


「ああ、気を付けるんだよ」


 オレは遅延ディレイを使い、

 天使の横に移動すると、黒い翼の天使に触れ魔法を使う。

 その瞬間オレの腕が切れた。


「なっ!?」


 オレが危険を感じ離れると、ビグラードがにやつく。


「なるほど......

 お前の魔法は場所ごとに物体の動きを遅くして、

 そのずれで切るのだな......」


「......やべーすヒミコさん」


「ああ、見破られたな。 

 だが、やつか持っているのは僕の身体はわかった。

 胴体だね。

 あの真ん中の水晶きっとあれだ。

 そして胴体にある魔法は反射リフレクト魔法を反射する」


「反射!?

 魔法が跳ね返されるってことすか!」


「お前の持っている聖遺骸、

 我に渡すがよい。

 でなければその娘、

 肉塊とかすぞ」


 そういうとビグラードは手を前に差しだす。


「きゃああああ!!!!」


「ヤバイっす!

 エクスさんが!!」


「落ち着きたまえ、

 反射リフレクトを使うには魔力が大量にいる」


「片腕を犠牲にして、回復してを繰り返せば」


「......いやそうなんだが、

 普通にすると魔力が足りない。

 他の方法がああるにはあるが、

 君はかなり痛いが構わないかな」


 地面に膝をついてエクスさんが、

 苦しんでいるのが目にはいる。


「しゃーないっすね。

 腹をくくります」


「よしでは水晶に撃てるだけ、

 魔法を撃ち込むんだ。

 あとはこちらでする」


「りょーかい!」


 オレはまた遅延の《ディレイ》の魔法を使って天使のそばいいく。

 そして水晶に触れ魔法を使った。

 その時腕が切れ凄まじい痛みが右手を襲う。


「ぐわぁぁぁぁあ!!!」


「バカなことを......

 そんなことをしても反射されるだけ、

 あの女がつぶれれば次は貴様だ」


 オレの腕が戻ると、

 またオレは魔法を水晶に触れ魔法を使う。


「ぐわぁぁぁぁあ!!!」


 腕が切れるが回復し、またオレは魔法を使う。


「ぐふふっ、無駄だ、何度やっても......」


 ビグラードがそう笑みを浮かべたとき、

 水晶にヒビが入り、そして砕けた。

 黒い翼の天使は光となって消えていく。


「なっ!? バカな!!!」


「メタトロン!!」


 そうエクスさんの声がすると、

 ビグラードの巨体が十字架に空に舞い上げられ、

 宙を舞っておちた。


「ぶへえええ!!!」


 ビグラードのその汚い声を聞きながら、

 オレはゆっくりと意識を失った。

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