第12話 真なる使徒《オルトアポストル》

「あの頃の私は血気盛んでしてね。

 何とか神聖教会復興を果たすべく、成果がほしかった。

 そこで最強の魔女たるあなたに無謀にも戦いを挑んだ」 


「うむ、もう一人いただろう。

 金髪の少女。

 ......そうかエクスにどこか見覚えがあると思ったら」


「ええ、あのこの母アリアです。

 もう亡くなりましたが......」


「そうか、かなり優秀だったが、残念だ」


「まあ、私よりは強かったですね。  

 ですが、私たち二人がかりで貴女と戦いましたが、

 全く歯が立たず、その調子にのった鼻っ柱をたたきおられました。

 全身の骨と共に」


「ひ、ひどいことしますねヒミコさん」


「仕方ないよ。

 だって、オレにはなにしてもいいから、この娘をたすけてくれ、

 といわれてね。

 そこまでいわれたら期待にそうしかないだろう」


「普通そういわれたらやらないでしょう」


「はっはっは、そうでした」


 東金牧師はわらっている。


「でも、ヒミコさんの強さがわかってたなら、

 なんでエクスさんを向かわせたんですか」


「すみません知らなかったのですよ。

 あのこは母の願いであった、

 神聖教会の復興を成したかったのでしょう。

 かつての私のように......

 そして、永遠の魔女を倒し名をあげれば、

 復興できると考えて行動したようですね」

 

「まあ、僕を倒せばこっち世界じゃ、

 一目は置かれるからね」


「なるほど、それでか。

 ああ、それで東金さん。

 オレたちヒミコさんの身体を探してるんすけど、

 どうやら真なる使徒オルトアポストルが持ってるらしいんす」


 オレがそういうと東金牧師は腕をくむ。


「......実は、真なる使徒オルトアポストルが、

 最近強大な魔法を手に入れ、

 他の小さな教会を力で支配し始めたと、

 こちらにも話しはきております」


「ふむ、僕の身体の魔法だね。

 それを使える程度の者がいるということか......

 ビグラードか」


「ええ、おそらく教祖のビグラードならば可能でしょう。

 都内の地下鉄に万魔殿パンデモニウムと呼ぶ、

 彼らの教会があります」


「でも、そんな情報をオレたちにいってもいいんすか?

 敵対してたのでは」


「まあ、悪人ではないことは知っております。

 こちらが一方的に仕掛けたあの時、

 ヒミコさんはアリアを無傷で見逃してくださいましたから」


「まあね。

 女の子を傷つけるとスッキリ目が覚めないからね」


「それに、あの者たちは悪い魔法使いのみならず、

 信仰に従わない者なら、

 誰彼かまわず殺害するカルト集団。

 いずれ全ての人々を自らの宗教に従わさせるため、

 あらゆる手段を使うでしょう。

 我々も彼らを殺さないというならば、

 拘束に力を貸しましょう」


「いいよ。

 別に殺す価値はないからね。

 ただ魔法は使えなくさせてもらう」


「それで結構です。

 ならば、エクスにそこまで案内させます。

 明日までに本部より人を呼びあとから動きますか、

 とりあえず今日はお休みください」


 そういって東金牧師は、オレたちを教会に泊めてくれた。


 その夜。

 ベッドで寝ていると、ヒミコさんが呟く。


「来たようだね」


「はあ、やっぱりか......」


 オレはベッドを抜け出して、教会の外にでる。

 そこには東金牧師とラクリマとエクスさんもいた。

 

「......先手を打たれたようですね」


 東金牧師はそういう。

 向こうから人影が現れた。

 その瞬間辺りが黒い柱と床の神殿に変わっていく。


「愚かにも我らの邪魔をするか腹立たしい」


「そうだな。

 でもあの二人の女の子は殺すなよ。

 俺のもんだ」


「めんどくさいな。

 さっさと殺すよ」


 口々にそういいながら五人が近づいてくる。


「すみませんタイガどの!

 私とエクスが一人づつ引き受けますので、

 残りをお願いします!」


 そういうと、東金牧師は何かを呟く。

 すると相手の二人と共に、

 エクスさんと東金牧師は消えた。


「うおっ!」


「ふむ、結界魔法だね」


「およ? マイヤとザグラスが消えた。

 東金のおっさんか......

 ちっ、あいつらあの女の子殺さないだろうな。

 まあいい、こっちの無表情の娘は最初にもらっちまうか」

 

 チャラそうな金髪の若い男がそういった。


「何よ!

 私の方がかわいいでしょ!」


 そう露出の高いぴったりとした修道服をきたシスターがいう。


「まさかこの小僧、この俺たち三人を相手にするつもりか、

 なめられたものだな」


 大柄の男がそう言う。


「俺は色欲のライセル、キミかわいいね。

 今日からオレのものだ。

 オレはエロいよ」


 ラクリマをみて薄ら笑いを浮かべる。


「誰がおまえのものだ!

 ラクリマはオレんだ!」


「あん? 

 男はお呼びじゃねーよ。

 そっさと死んどけ」


 そういうと、金髪の男ライセルから、

 デカイ球体が現れる。

 

「なんだあれ......」


「見るな!」


 ヒミコさんがそう言う前に球体が開く。

 

「目......

 うわっ!」


 オレの手から徐々に石になりはじめる。


「ひゃははは!

 俺のアスモデウスの目をみれば石化するんだよ!!」


「早く腕を切るのだタイガくん」


「やだーー! でも石になるのもやだーー!」


 オレの腕はポトリと落ちた。


「なっ! 腕を!?」


「このめんたまに効きますかね」


「もちろん効くさ」


 オレは目玉の横に移動してヒミコさんに聞いた。


「なに!? いつの間にここに!!」

 アスモデウ......」


 ライセルがいう前に目玉はバラバラになった。


「へ? 何で......

 ぐへぇぇ!!」


 オレは思いっきりライセルを殴った。


「お前よりオレのがえちぃわ!」


「なにを競ってるんだい?」


「なに今の!? ライセルが!」


「早く天使を出せハイラ!!」


 オレがでかいやつにハイラと呼ばれたシスターの前にあらわれた。


「どうしたんだいタイガくん。

 バストをじっと見て」


「ええ、大きいんすけど、

 この人パットなんすよね」


「なっ!?

 このガキ死ね!

 レヴィアタン!!」


 人よりでかい黒い蛇がオレを襲う。

 オレは横に移動した。


「このレビィアタンは並の魔法じゃ固くて効きゃしな......」


 そう言いきる前に蛇はバラバラになった。

 そしてシスターの頭に触れるとシスターはそのまま倒れる。


「なんだ貴様!

 あのレビィアタンを一撃だと!?

 それに切れた腕まで戻っている!!

 だが、この暴食の武蔵はそう簡単にやられはしない!

 いけ! ベルゼブブ!!」


 何も起きない。


「ベルゼブブ?」


「あ、あのそれもうやっちゃってます」


 そこには大きなバラバラになったハエが消えようとしていた。


「ええーーー!!」


 オレは武蔵という人の横に移動すると、

 ヒミコさんが気絶させ魔法を封じた。


「ふむ、かなり魔法の使い方がうまくなったねタイガくん」


「しごかれましたから、

 でもいきなり石化させられるとは思いませんでしたよ」


「まあ、僕が引き離せない限り、

 君はなかなか死なないから、

 命を張ってくれたまえ」


「嫌ですよ!」

 

 そう言っている間に黒い神殿は消え去り、

 オレは神聖教会の前にいた。

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