第8話 桃源郷《シャングリラ》
「で、ヒミコさんネットに接続するんすか?」
次の日、朝食をラクリマに作ってもらって食べたあと、
オレたちはヒミコさんの家に向かっていた。
「そうだよ」
「それなら、これでもよくないっすか」
オレはスマホを見せる。
「それじゃ、ダメなのさ。
まあいけばわかる」
その話を聞きながら、オレは腕にはめた一つの指輪をみていた。
「これが、ヒミコさんのあのキレイなおみ足すか、
こんな変わり果てた姿になって......」
昨日ヒミコさんが
右足から作った腕輪だ。
「さすがに足を直に持ち歩くのは邪魔だしね。
それに僕も、もう身体を取り込めないから、
君が持つといい。
魔法を使うときは
「ヒミコさまは
そうラクリマはいう。
「ふふん、僕はあらゆる魔術に精通しているのだよ」
ヒミコさんは得意気に言った。
そうしてヒミコさんの家につくと、、
ヒミコさんがなにやら魔法を使いながら、
書斎のパソコンを起動する。
「タイガくん。
そのフォルダの中のファイルをあけてくれたまえ」
「これっすか」
オレがそのファイルをクリックすると、
パソコンのモニターに膨大な文字列と紋様が並ぶ、
そして、モニターが眩しく紫の光りを放った。
「うわっ!!」
そして目を開ける。
「えっ?」
オレは驚いた。
そこはさっきいた書斎ではなく、草原の中だった。
「なんすか!? ここ!!」
「転移魔法......
結界......
いえ意識、魂をデータ化したのですか」
驚いてパニクるオレを尻目にラクリマは冷静にそういう。
「うむ。
ラクリマのいうとおり、
意識、魂をデータ化し電脳世界へ移した。
ここは
「
意識、魂をデータ化......
じゃあ、これ本当の身体じゃないんすか」
動かしてみるが、どう考えても自分の身体のようだ。
「そうだ。
本当の肉体はモニターの前で眠っているよ」
「でも、本当の身体じゃないなら、
ここでヒミコさんの身体は見つかんないんじゃないすか?」
「そのものはね。
でも世界中の情報はほぼここに集まる。
どうも現実じゃ僕の身体の反応がないんだ。
多分魔法で隠されたんだよ」
「それでここにきたんすか」
「ああ、それもあるがもうひとつ......
まあ先に町にいこう」
オレたちはヒミコさんにいわれ町があるという。
西に向かう。
歩いていると、ヒミコさんが不意に言った。
「ふむ、来るな」
「えっ、何がです?」
その時後ろから土煙がまい地面が大きくゆれる。
土煙の中から家ぐらい巨大な岩の人形が現れる。
「なっ!
なんすかあれ!?」
「ゴーレムさ」
「ゴーレム?」
「泥や土、粘土などで作られる動く人形です」
ラクリマが説明してくれた。
「まあ、本来魔法使いが作る召し使いなのだけど、
ここにいるのは、たまたま電脳世界に入り込んだ、
霊的存在が取り込んだ魔力により形をなしたものだね」
「電脳世界に霊的なものが入り込むんすか」
「電波やデータは霊的、魔術的なものと親和性が高いんだ」
「そうなんすか。
あのデカイのこっち来てる!!
いや、ここで死んでも大丈夫か」
「いや、肉体こそないが意識、魂を壊されると、
もとに戻れなくなるよ」
「ええーーー!!」
オレはソッコー逃げた。
だが、ゴーレムは地響きを起こしながら迫ってくる。
「追いかけてくるーー!
そうだ!
オレがそう言うとゴーレムの動きがゆっくりになる。
「ふう、助かった」
「いや、そうでもない。
よくみたまえ」
後ろをみるとラクリマの動きもゆっくりしている。
「ラクリマもゆっくりになってる!!」
「そう、その魔法は今君以外の時間を遅くしているんだ。
つまり......」
「あのゴーレムをオレに倒せってことすか!!
無理でしょあんなバカでかいの!
ヒミコさんお願いしますよ!」
「ここに来たのは情報をえるだけではないのさ。
君の魔法使いとしてのレベルアップも目的なのさ」
「オレのレベルアップ!!?」
「正直僕は偉大な魔法使いだが、
この眼球に全ての記憶や魔法を覚えさせるのは無理だった。
当然のことながら、ほとんどの力と記憶を失っているわけだ。
いま僕の身体を所有してるのは、
膨大な魔力を隠蔽できるレベルの者たち......
少々厳しいかもしれない」
「それでオレも強くならないといけないってことすか?」
「ああ、その中には身体を、
複数所有してる者もいるかもしれない。
又は個人ではないかも...... ね」
「でも、オレこの
ヒミコさんの再生しかないっすけど」
「そうだね。
あと、これから基本僕は、魔法を使わない。
厳密には君の再生のみに魔法使うことにするからね。
あのときみたいに隙を突かれて遅れたからね」
「それで、あのホムンクルスの時すぐ治ったのか......」
「そう、でも即死なり、封印なり、石化なり、
または僕の寄生してる左腕が、
君から離れたりすると間に合わくなるかもしれない。
気を付けたまえ、あとは......」
「うっ......」
オレは一瞬意識が遠退く。
「そう、それだ。
ずっと君の魔力は消耗し続け、限界が来ると気絶し死ぬ。
君はラクリマへの魔力も供給しているからね」
「えーー!! 先それいってくださいよ。
解除......
いや今解除したら殺されますよ!
どうしたらいいんすか!!」
「今君は魔力最大で
意識して効果範囲を狭めれば魔力消費は抑えられるし、
面白いことにもなる」
「面白い? 範囲......
意識して狭める。
なら足か」
オレはゴーレムの足に意識を集中してみる。
動きは止まらない。
「ヤバい! ラクリマにどんどん近づいてる!
片足だけでも!!」
オレは前に走り自分の方に誘導する。
そして右足に集中する。
すると右足がゆっくりになり、
左足とあわなくなったゴーレムは前のめりに倒れた。
「なんとか......
やれた」
「いいぞタイガくん。
そうやって一部を遅くすることで有効になるのさ」
オレはその場にへたりこんだ。
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