第7話 オレの家
「むさ苦しいですがどうぞ」
「はい」
オレが座布団を進めると、
ラクリマはそういってちょこんと正座した。
ブラックマーケットから帰ったので、
ラクリマをオレの六畳一間のアパートにつれてきたのだった。
ヒミコさんの家は割れていると考えて、
また襲われないよう家に来たのだった。
「タイガくん。
ぶしつけな質問で申し訳ないが、君ご家族は」
ヒミコさんが聞いてきた。
「いないっす。
オレは赤ちゃんの頃、
児童養護施設に捨てられてたらしいっす」
「そうか......
それはすまない。
えちぃすぎて捨てられたのだな」
「えちぃすぎて捨てられたのですか?」
ラクリマも聞いてくる。
「そんなわけないでしょ!
どんな赤ちゃんすか!
ラクリマに変なこと教えないでくださいよ!」
「はっはっはっ、すまないな。
でもその境遇のわりにずいぶん明るいね」
「まあ、そっすね。
そもそも親がいたからって幸せとは限んないでしょ。
虐待とか親のケンカ、貧困とか、
オレは施設でそこそこ幸せに生きてきましたからね」
「なるほど、人によってはそうかもしれないね。
まあ家族がいないのは好都合、洗脳しなくても済みそうだ」
「洗脳するつもりだったんだ......
だったらオレを雇わずに洗脳すればよかったのでは?」
「可能ではあるけど、
できる限りはしたくない。
僕も偉大なる魔法使いとしての、
(人道的とかじゃないのが、ヒミコさんらしいな)
「まあ、取りあえずごはん食べ......
そういえばヒミコさん。
前に聞いたら気にしないでって言ってたんすけど、
ホントに食べなくていいんですか?」
「僕眼球だけだよ。
どうやって食べるんだい?
大丈夫、君の身体に融合してるから栄養素は取り込めるよ』
「じゃあ、食べますか。
コンビニで買ってきたインスタントラーメンがあるんす」
「タイガくん、自炊はしないのかね」
「軽くしかしないっすね。
独り暮らしなんてそんなもんすよ。
ゆえに食費の切り詰めっすね」
「まあ、僕も外に注文するだけだっだけど、
それだと身体に悪いぞ」
「そうはいっても、大したものつくれませんよ。
あっ! ホムンクルスって食べ物食べられるの?」
「はい」
「高位の魔法使いにつくられたホムンクルスは、
人間とほぼ変わらないからね。
ラクリマはおそらくかなりの魔法使いにつくられたのだろう」
「じゃあ、インスタントラーメンはかわいそうだな。
でもオレじゃ......」
「わたしがお作りしますが」
ラクリマがそういった。
「えっ? 作れるの?」
「はい、一通りの家事全般の知識はあります」
「じゃあ買い物行ってくるから、ここで待ってて」
オレがスーバーで買い物をして帰ると、
ラクリマは台所で調理をし始めた。
それはとても手際よく進んでいく。
「ほう、大したものだな。
しかし所有のホムンクルスに料理を教えるのは珍しいが」
ヒミコさんは感嘆しそういった。
「そうなんすか?」
「基本的にはロボットと同じで感情がないからね。
作業は得意でも、味みたいに人によって好みが異なり、
正解が流動的なものを作るのは不得意なんだよ。
まあ、料理もある程度正確なレシピを教えれば、
それなりのものは作れるのかもしれないが......」
そして食事が小さな簡易テーブルに置かれた。
それはワカメに豆腐のみそ汁、アジの塩焼き、
ほうれんそうのおひたし、買ってきたたくわんだった。
(ホムンクルスが作る純日本食か......
イメージと違った)
取りあえず食べてみた。
「!? う、うまい!! なんだこれ!!
普通の食材なのに!!
すごいよ! ラクリマ!!」
「ありがとうございます」
そういって表情を変えずに少女はいい前に座った。
「あっ、ラクリマも食べて」
「はい、いただきます」
ラクリマは器用に箸をつかい上品に食事をとりはじめる。
(ラクリマはなに人?
いやホムンクルスにそんなのないか、
でも日本語を話してるし......)
「なんか......
なんかモヤモヤするな」
ヒミコさんが少し不機嫌そうにいう。
「でも、食べらんないでしょう。
体が戻るまで我慢してくださいよ」
「君の協力があれば可能だが」
「協力......
まあいいっすけど、何をするんですか」
「いいのかい!
ちょっとまちたまえ」
一瞬意識が途切れ、また戻った。
「えっ? 今なに......」
「まあ、いいから食べてくれないか」
そういわれて食事を進める。
「うむ! 旨い!
これはなかなかだ!
最近ピザばかり食べていたので、たまらないな!
ラクリマは料理上手だ!」
「ありがとうございますヒミコさま」
ヒミコさんにいわれてラクリマは頭を下げた。
「えっ? どういうことです?
味がわかるってこと?」
「うむ、ちびっとだけ君を改造しただけさ」
さらりと言った。
「か、改造、オレをいじったんすか!!」
「君がいいと言っただろう。
少しいじって感覚共有しただけさ。
そんなことはいいから食べてくれないか」
(もう許可すんのは止めよう......)
ヒミコさんが喜ぶのを感じながら、
オレは自分のしたことを後悔した。
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