第5話「入学試験の結果、1505人中1505番目」
「それじゃあ、私はSクラスに行くから。ハンスも自分の教室に向かいなさい。教室間違えたら駄目よ」
「そこまで馬鹿じゃないよ…て!リーフ、Sクラスなの!」
「当たり前でしょ、私今回の入学試験2位なんだから。ホントは1位を取りたかったけど、あのお貴族様に1番を取られちゃった…。悔しいけど、次こそは私が1番を取る!私も頑張るんだから、ハンスも頑張りなさいよ!」
リーフは拳を前に突き出した後、その場を立ち去って行った。
「リーフはSクラスか…。僕は…、安定のEクラス」
クラス表を見ると、今回の入学生は1505人。
クラスは入学テストの評価が高い順にランク付けされ、それによってクラスが分けられている。
クラスはSクラスからA、B、C、D、Eまであり、全てのクラス約250人で割り振られている。
中間試験の結果…その評価によると、僕は1505人中1505番目…つまり、最下位である。
「ま、分かってたけどさ。さてと…、それじゃあ、Eクラスに向かうとするかな」
教会を出て、僕はすぐクラス表に書かれていた場所まで歩いて向かった。
向かったはずだった。
――それにしても、この学園デカすぎる…ここ何処だ。ちゃんとクラス表に示されている通りに行っているつもりなんだけど…。
僕は、ここが何処かも分からない通路を歩いていた。
どうやら迷ってしまったらしい。
「本当にこっちであってるのか…」
僕は、むやみに歩くのはあまり得策ではないと思い、その場に立ち止まった。
もう1度クラス表に記載されている、地図を良く確認する。
「魔法実験室がここにあるということは…やっぱりこっちであってるよな」
それにしては、他の生徒を見つけられない、250人同じクラスの人がいるはずなんだけど…。
「あ…あの~、すみません…ちょっといですか?」
僕はいきなり後ろから声を掛けられた。
「え~と、何か用ですか?」
話しかけてきたのは、おそらく僕と同じ状況なのだろう、マギアを見ながらオドオドしている。
「あの~、Eクラスはこっちであってるんでしょうか?私、最近新しいマギアを買ってもらったばかりだから、あまりうまく使えなくって…」
そう言う彼女の手には最新の刀型式マギア『ジン』を持っている。
彼女からは田舎から出てきたのだろうと思わせる雰囲気が漂う。
ただ、凄くきれいな桜色の髪、大きな瞳には桜が咲いていると思わせるほどの綺麗な桜色…今の季節は春だが、ここにも桜が咲いていると錯覚さえする。
「あ…あの~、すみません?聞こえてますか?」
「は!は、はい…大丈夫です、ちょっと『ジン』を再起動してもらってもいいですか?」
「は…はい」
彼女は『ジン』に流す魔力を一時的に止め、『ジン』をシャットダウンさせる。
そして、もう一度魔力を流し、再起動を行った。
「再起動しました。次はどうすれば…」
「え~と、確かマギアの連絡画面に行ってもらって、学校からの連絡が表示されていると思うんですけど…」
「あ!ありました…これを押せばいいんですね」
彼女は連絡表示を押す。
すると、魔力の矢印が現れ、クラスまでの道筋を示す。
「これでEクラスまで行けると思います」
「ありがとうございました!マギア…全然使えないから、他の人に教えてもらおうと思ったんだけど…皆、『マギアで見れば分かるでしょ』って言われちゃって…へへ」
彼女は笑いながら髪を掻く、可愛い…。
「ほんとにありがとうございました!では、私はこれで」
そう言って彼女は、矢印に沿って走って行った。
「って!僕も急がないと!」
僕は、さっきの彼女を追いかける。
「はぁはぁはぁ!こ…ここか」
確かにEクラスと書かれている。
僕は扉を開けると、扇状の教室は既にクラスメイトでいっぱいになっていた。
「お!やっと来たか!君が最後の1人だ!自分の席に座りなさい」
扇状に広がった教室の中心に先生らしき人物が立ち、僕の席を指さしている。
「す…すみません…遅れました…」
「ま!この学校はデカすぎるからな、迷うのも無理はない」
先生らしき人は、スクリーンの前に立ち話始めた。
「おはよう諸君!私がこのEクラスの担任になった。『フミコ・ナカヤマ』だ!よろしく。私の使うマギアはこの、竹刀型マギア『バム』だ。担当は体育…って言っても、魔力を使った戦い方や、体の使い方を主に教えているから、普通の体育とはちょっと違う。もちろん普通の体育も行うが、試験では実際に試合を行ってもらうからそのつもりで。ビシバシ行くから、私にちゃんとついてこれば、運動が苦手な生徒でも大丈夫。これから1年頑張って行こう!」
フミコ先生は肩に『バム』を担ぎながら、何も持っていない手でガッツポーズをしている。
――これはまた…熱い先生が担任になってしまいましたな…。
「本当は、皆に1人ずつ自己紹介をしてもらいたい所だが…なんせ数が多いからな、マギア上に自己紹介ページを上げておいた。そこで自己紹介を行ってくれ。自分の名前と趣味、得意科目、自分の写真なんかを張り付けておくといいだろう。印象に残ることを書いたほうが、覚えられやすいぞ。それじゃあ、始めてくれ」
するとみんな一斉に自分のマギアを起動し始めた…
「どうしよう…」
いきなりピンチだ…僕はクラスメイトの誰にも覚えられることなく1日目が終わってしまう…。
――まぁ、僕なんかを覚えてもらう必要は無いんだけど…
「あ!そうそう、このクラスには今時珍しくマギアを使っていない生徒がいます。その子だけでも自己紹介してもらおうかな」
――いきなり、何を言い出すんだこの先生は…でも、誰にも覚えられないのも少し悲しいよな。名前ぐらいは覚えて行ってくれると良いな…。
「じゃあ!自己紹介してもらおうかな…。お!君がハンス君か…最後に来た子じゃないか。ほら、前の方に来て自己紹介をしてくれる」
「は…はい!」
僕は強引にスクリーンの前に立たされる…。
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