第4話新入生代表『キール・スプレイド』

「学園長先生ありがとうございました。只今より在校生の挨拶へと移行させていただきます。それでは現生徒会長の高等部3年『トーマ・グラリス君』よろしくお願いします」


「はい!」


「あの人が生徒会長…」


その姿は、優男といった感じで短く黒い髪、身長は170㎝くらい、男子の制服をゆったりと着こなしている。


生徒会長の両腰にはホルスターに入った銃型の『マギア』が2つ付いていた。


「皆さん、おはようございます。僕の名前はトーマ・グラリス、使うマギアはこの2つの銃型マギア名を『バレット』。中等部入学からずっと使っている、お気に入りのマギアです。皆さん入学おめでとうございます。僕は今でこそ生徒会長をという立場をやらせてもらっていますが、入学当初は落ちこぼれでした。しかし、学園の先生方に様々な指導をしていただき、多くの知識そして力を自分のものにしました。ですから皆さんも諦めず、自身の力を信じてください。応援しています。短いですが、これで僕の話を終わらせていただきます」


生徒会長は園長台の前から離れ、もともと座っていた椅子へ戻った。


「続いて、新入生の挨拶に移行します。代表『キール・スプレイド君』お願いします」


――キール・スプレイド…聞いたことあるな。


「リーフ…スプレイドって何か聞いたことあるんだけど、どっかのえらい人だっけ?」


「何言ってるの、スプレイドって言ったらあのスプレイド家のことでしょ」


「…あのスプロイド家…!そうだ有名な貴族じゃないか…」


「そう…しかも、私より入学テストで良い点を取っていることからすると、相当な実力者よ」


「リーフ…ちょっと自分のことを過信しすぎなんじゃないか…」


「何言ってるの。私はドンカーさんと一緒に働きたいのよ、それならこの学園で1番を取るつもりでいかないと…」


「いや…父さんならすぐ働かせてくれそうだけどな…」


こんな話をしている間に、キールは前のほうに歩いていく。


目を引く明るい髪、見るものすべてを怯えさせてしまいそうな鋭い目、身長は僕よりはるかに高く既に175㎝くらい有りそうだ。


とても同年代とは思えない。


左手には腕輪型のマギアを付けている。


同じ制服を着ているはずなのだが、放っているオーラが違うのか周りの人たちよりも輝いて見えた。


「俺の名前はキール・スプレイド、世界のトップに立つ男だ…」


会場がざわつき、皆キールの方を向く。


――なんか…いきなりすごいことを言い放った。世界のトップに立つということは意味的に考えて、パラディンになるという事かな…。


勝手に深い意味を考える。


「手始めに…お前を倒す」


そう言って、キールは生徒会長を指さした。


「いきなり、お前を倒すと言われてもね…」


生徒会長は驚きながらも…その顔は「少し面白そうだ」と言わんばかりに口角をあげている。


「お前の意見は聞いていない、俺はさっさとトップに立たなければならないんだ。お前はこの学園で2番目に強いのだろ、ホントは、パラディンの爺を叩き潰したかったのだが、どこに行ったか分からないんでな。手始めにお前を叩き潰してやろうってわけだ」


キールの鋭い目線が生徒会長を捉える。


「へ~、いうじゃん…」


生徒会長がその場に立ち上がり、キールへと迫る勢いで魔力を放出する。


2人の間は壇上と観覧席で離れているにも関わらず、僕の座っている場所でも感じる取れるくらいに、ものすごい魔力がぶつかり合っている…。


会場がきしみ出し、木が擦れるような音が教会内を反響する。


「ストップ!!!」


魔力を切り裂くように割って入ったのは生徒会長と同じ紋章を付けた女の人だった。


「ごめん、ごめん、リアーナちょっと面白そうだったから」


「誰だ…きさま」


生徒会長との睨み合いを止められ、呆気に取られているキールの顔は何が起こったかよく分からないといった表情だ。


その女の人は、はきはきと喋り出す。


「私は、この学園の風紀委員長をやっているリアーナ・トレントと言います!失礼ながら風紀の乱れを感じましたので、私のマギアによって魔力を切らせていただきました!」


――魔力を切る…凄い。


「ちっ!興覚めだ…俺はすぐきさまと戦い、その座から引きずりおろしてやる」


「楽しみにしているよ、キール君」


生徒会長は手を振り不気味に笑う、それを見たキールも笑みを浮かべた。


「え…えーと、以上を持ちまして新入生の入学式を終わりたと思います。皆さんのマギアにそれぞれのクラスを配布いたしましたので確認次第、それぞれの教室に向ってください」


「え…僕…マギア持ってないのに…」


「え!ちょっと、入学の時に自分のマギア登録したんじゃないの?マギアを使わなくても、それくらいしておきなさいよ」


「え!僕そんなことしてないよ、ただ『どんなマギアを使っていますか?』って質問されたとき僕は『マギアを使いません』って答えただけで、それ以外のマギアの話は一切聞いてないよ」


「呆れた…それじゃあどうするのよ、授業でもマギアを使うのに…、今からでもドンカーさんから借りてきたら」


「いや…どうしよう…ね」


苦笑いで何とかその場を乗り切ろうとしたが…実際焦っていた。


しかし…どうしようか本気で悩んでいたが、悩む心配はなかったらしい。


「え~、ハンス・アンデシュ君、前に来てもらってもいいですか」


新入生の前で僕の名前を大声で呼ばれる。


「アンデシュ!だって!」


新入生の殆どが前の方を向く。


――別にありきたりの苗字でしょ…。どうしてそんなにみんな驚くんだよ…。


「アンデシュって新型マギアを作った人の苗字だろ!」


「もしかしたら、その子供だったりして!」


「やべ~、友達になったらスゲーレアなマギア貰えたりして!」


「でもよ!クラスが同じか上のランクのクラスじゃないと父さんが話しちゃいけないって…」


「新型マギアを作った人の子供だぞ、ランクが高いクラスに決まってるだろ」


――またあんなこと言われてるよ…気にしない気にしない。


僕は呼ばれたので、前の方に向った。


「あの~、僕に何か…?」


「君が、ハンス・アンデシュ君?」


「はい…そうですけど」


「そう、それじゃあ…これ君のクラス」


そう言って僕にクラスが書かれたクラス表を手渡された。


「それじゃあ、確かに渡したからね」


僕だけが、このクラス表を貰った。

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