中等部1年前期編
第2話入学式
『新型マギア』を発表した数年後…。
『ドンカー・アンデシュ』の発表した『新型マギア』は世界普及率99%を達成し、確実に世界を変えた。
今までの「旧第2型マギア」を開発していた研究者たちが何とかして『新型マギア』の欠点を探したが…全くと言っていいほど『新型マギア』の欠点が見つからなかった。
勇逸の苦し紛れで発表した欠点が…「赤子が魔法を使用する事が出来ない」というものだけだった。
これを発表した研究者たちは他の研究者たちから笑いものにされたのは言うまでもない。
「父さん…学園に行ってくるよ」
「ああ、行ってらっしゃい。ってハンス、マギア忘れてるぞ!講義で使うだろ」
「マギアは…要らない。それじゃ…言っていきます」
「ハンス…」
無駄に大きな玄関から僕は飛び出し、学園に向っていった。
「おーい!ハンス!おはよう」
「おはよう。リーフ今日も元気だね」
朝1番に顔を合わせるのは幼馴染のリーフだ。
いつも通り完璧な服装髪型、革靴までピカピカに磨いている。
「そりゃそうよ!今日から学園に行けると思ったら楽しみで仕方ないじゃん。ってまた、マギア忘れたの?どうして、ドンカーさんの息子がマギアを忘れるのよ」
「あ…ほんとだ、また忘れちゃった…ははは」
――忘れてなどいない、僕はあえて持って来なかったのだ。あんなもの絶対に使ったりしない…
「無理して嘘つかなくていいから。ちょっとからかっただけ」
「あはは…そうだよね…、同じ小学校だったし知ってるか。それにしてもリーフはそのマギアずっと使ってるね、確か…『ガントレット』だっけ、グローブ型のマギア」
「そう!しかもこれ、ドンカ―さんに譲ってもらったものなの!まさか、私に譲ってくれるなんて思ってなかったからすごく嬉しかった!私は、将来絶対にマギア研究者になりたいの、ドンカ―さんみたいにね!」
「ホントに…リーフはマギアオタクだな…」
「良いじゃない、マギアが好きなんだから!」
リーフと話しながら歩いていると…
「あ!見えてきた!ハンス、あれがドラグニティ魔法学園だよ。スッゴク大きい!」
「うわ…でっか…」
――外見からしてもうお城だよなあれ…僕からしたら絵本とかで見るような建物だよ…。
『ドラグニティ魔法学園』、それは…このジャパニ王国にある中高一貫の学園である。
僕の足取りは重い。
昨日に寝付けなかったからではない。
もっと別の理由だ。
「ハンス…大丈夫?小学校の頃のことまだ気にしてるの?」
「そんなことないけど…でもやっぱり行く気になれないな…」
僕は小学生の頃…
「なぁ!ハンスってさ、あのドンカ―さんの子供なんだろ!じゃあスゲーマギアいっぱい持っててすごく強いんだろ!頭もめっちゃ、いいって噂だし!」
「しかも、運動神経も滅茶苦茶いいらしいぜ、さすがドンカ―さんの息子だよな。やっぱり親が凄いと子供も凄いんだろうな!」
こんな噂話が小学校中に広まってしまい僕の居場所はなくなってしまった。
マギアは使わないし、強くもない、頭もそこまでよくないし、運動神経だって中の下だ。
父さんの息子だからってだけで、勝手に僕の姿が形作られていくのが凄く嫌だった。
「ハンス!あんなこと言われても気にしちゃダメ!ハンスはハンス!別にいいじゃない、他人に何言われたって、存分にカッコ悪い所見せてきなさいよ!私は知ってるんだから、ハンスは強くないし頭もよくない運動神経だってダメダメだってこと。みんなに知られてもきっと何も変わらないから、もし慰めてほしかったら私が慰めてあげる!」
リーフは小学生ながら…こんなことを言ってくれた。
僕はどれほど救われたか…
それでも、僕はいまだに小学生の頃を引きずっている…。
何故かというと、『ドラグニティ学園』に入れたのは父さんのおかげだからだ…
父さんと『ドラグニティ学園』の先生達は友達らしく、父さんが僕のことを話したら『ぜひうちの学園に』って言われたらしい…。それでずるずるとこの学園に入ることになってしまった。
「さてと、行きましょう!もうすぐ登校時間20分前になっちゃう。初日から遅刻しちゃうなんて、優等生としてあるまじき行為だわ!」
「リーフ、そんなに急がなくても…」
リーフは駆け足しながら僕の前を行く。
「もーじれったい!早く!」
リーフは僕の手を掴むと強く引っ張りながら走り出した。
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