世界中の人が魔器具(マギア)を使うなか、僕だけが太古の遺物『魔法書』を使っている。~あれ? 『魔法書』詰んでないか~
コヨコヨ
第1話プロローグ:『新型マギア』
「私はこの4年間、ずっとこの日を待ち続けていた!」
僕のパパが多くの人の前で何かを話している。
「数十年に一度、全てを変えてしまうような者が現れる。一度でも何かを変える物を作れれば幸運だが、私は多くの機会に恵まれた。100年前、世界で大戦が起きた。その時、魔法の根本を変えてしまった。我々人類が開発したこの『魔法力補助器具』略して『マギア』によってだ。本日『新型マギア』の機能を三つ紹介しよう!」
僕にはパパが何の話をしているのか全く分からなかった。
「お爺ちゃん……。パパは何を話しているの?」
「そうじゃな。お爺ちゃんにもよく分からんのや。あ奴は何を話し取るんやろうな……」
僕はお爺ちゃんの膝に乗りながら、パパのよく分からない話をずっと聞いていた。
「もー、ハンスとハンスのお爺ちゃんは黙ってて! 今、ドンカーさんが凄いことしてるんだから!」
僕の幼馴染のリーフはパパの方へ指を向ける。
「そんなこと言ってもリーフ、何も分からなきゃ全然面白くないよ」
「ちゃんと聞いてれば分かるから! ほら、始まるよ!」
「一つ:『マギア』の小型化」
「二つ:『魔力変換効率』の最大化」
「三つ:小型マイクロチップにより、今までの魔法内蔵量より100倍の魔法を内蔵可能」
「『マギアの小型化』『魔力の変換効率』『魔法の内蔵量』この三つの大きな壁が今まで、マギアの進化の途中にありました。100年の長い間、不可能だとされていた『マギアの小型化』。魔法を使う際に起こってしまう『魔力変換効率』の悪さ。マギア内にプログラムできる、魔法の少なさ。この三つの問題がマギア開発の発展を妨げていたのです。しかし! 私は再開発した。それがこちらの『新型マギア』だ!」
会場のスクリーンに新型マギアが映し出される。
「おぉ……」
会場で小さな歓声が上がる。
「小さいな。ほんとにあれで『マギア』の効果が得られるのか?」
パパの前に座っている人達が小さな声で話していた。
「まず、従来の『旧型マギア』を見てもらいましょう」
スクリーンに『旧型マギア』の映像が流れる。
「この『旧マギア』は、全身に装備し、かつ、とてつもなく重い。使用するのに一人一つが限界だろう」
スクリーンには人の二倍から三倍はあろうかという大きな機械が映し出されていた。
「このような『旧型マギア』を使う際、魔力の枯渇が大問題となっていた。だが、魔法書を使うよりは誰でも簡単に魔法が使えるという点で大戦でも多く使用された。しかし、今の生活でこのような『旧型マギア』を使う場合は極めて低い! 今見てもらっている『旧型マギア』は大戦後一気に使用されなくなった」
スクリーンに錆びつき、小汚い大きな機会が映し出される。
その後、先ほどよりも少し小さくなった乗り物が映し出された。
「次に『旧第二型マギア』。こちらは比較的小さくなったがまだ大きい。この『旧第二型マギア』は今でも工事現場や警備隊、王国警備などに広く使われている。しかし、決定的な欠点がある。それは人の成長によって使用することが出来なくなって行くという点だ」
スクリーンには何台もの乗り物が映し出されていた。
「『マギア』は今や、世界中で使われている魔道具だが、それ故に用途によって買いなおしていく必要があった。理由は簡単、魔法をプログラムするメモリー不足。『旧第二型マギア』にはそれぞれ決まった魔法がプログラムされている。その為、後から魔法を書き換えることは不可能だった」
スクリーンには多種多様な機械が映し出されており、工事現場などの仕事風景が流れていた。
「そんな『マギア』だが。私が今から紹介する『新型マギア』は今までの『マギア』とはすべてが違う。それがこちらだ!」
パパは講演中、ずっと右手をスーツのポケットに入れていた。
その右手を今、ポケットから勢いよく出した。
「おーーーーーーー!」×会場にいる人。
会場からものすごい歓声が上がる。
「俺が思ってたよりも格段に小さいぞ! どういう原理だ! そんなに小さくすることが可能なのか!」
白衣を着たおじさん達がどよめき始めている。
「この『新型マギア』は『グローブ型マギア』名を『ガントレット』。そしてこちらにあるのが、それぞれの使用者に合わせた『新型マギア』達だ!」
後ろのスクリーンが天井に戻されていく。
すると、スクリーンの後ろ側に数多くの『新型マギア』が陳列されていた。
会場は言葉を失う。
『グローブ型』でさえ革命的であるにもかかわらず『魔法杖型』『刀型』『剣型』『銃型』『弓型』『槍型』『双剣型』…etc。
それぞれの用途に合わせた『新型マギア』がそこにあったのだ。
「それでは皆様。お待ちかねの実演と行きましょう! ガントレット『起動!』」
パパは左手でガントレットに触れる。
すると、ガントレットが『起動』し一瞬眩い光を放った。
「『新型マギア』の起動方法は簡単、魔力を流すだけ。魔力を補充することも魔力ケーブルも必要ありません。叫んだり、指を触れたり、握りしめたりするだけでも起動可能です。では今からスクリーンボードにガントレット内のプログラムされている魔法を紹介しましょう。皆さまご覧ください」
会場にいるすべての人の前に、電子スクリーンボードが現れ、数えきれないほどの魔法が記載されている。
「なんて数なんだ。ん、変更画面? ば、馬鹿な……。変更だと……」
「お気づきになりましたか? そう、魔法を自身の好きなように変更することが出来るのです。これにより用途によって『マギア』を買い替える必要はありません。ずっと同じ『マギア』を使用し続けられるです。そして肝心の能力ですが……」
会場の天井が開いていく。
「ん……。な、なんだ!」
会場の人々は周りを見渡し、気づく。
「おい! 何だ、あれは!」
天井にいたのは『旧第二型マギア』を使用している警備隊の兵士たちだった。
両腕に大きな砲撃部が付いており、パパに向って構えている。
既に観客席側には他者の『新型マギア』によって大きな透明状の膜が張られ、安全面の確保を行っていた。
そして、兵士は『旧第二型マギア』に搭載されている砲撃部から、巨大な火の玉をパパ目掛けて放ったのだ。
「ドンカーさん、危ない!」
幼馴染のリーフは席を立ち、叫ぶ。
「『シールド!』」
パパは右手を顔の前に翳す。
すると、パパの周りを淡い光がつつんでいった。
兵士たちが放った魔法はパパの前で爆発し、目の前が爆炎によって暗闇になる。
煙が少しずつ晴れていくと、そこには無傷のパパが立っていた。
「どうでしょうか、これが『ガントレット』にプログラムされている魔法の一つ、『シールド』です。『旧第二型マギア』の攻撃を受けても傷一つ付かない壁を張ることが可能です」
パパは透明な壁に触れ、コンコンと叩く。
「『シールド』を発動する際、使用される魔力量は『旧型マギア』の100分の1にまで抑えられています。どうでしょうか? これが『新型マギア』の力です。これでドンカー・アンデシュの講演を終了します。ご清聴ありがとうございました!」
会場は拍手喝采で包まれ、パパは講演を終えた。
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