勝敗
フェルドが母娘を抱えて逃げていくのを追いかけるかのように赤い獣が飛び跳ねる。
「そうはいきませんよ!」
エドルフは赤い獣の行く手を阻もうと攻撃魔法を仕掛ける。しかしそれを察したのか赤い獣が方向転換し、今度はエレナ達のほうへと突進するではないか。
「しまった!」
「きゃああ!」
自分たちの方へと向かってくる獣を目の前にしたエレナは先程まで受け取ったパンを地面へ落としてしまった。そのことさえも気づかずにエレナとピスマユルは悲鳴を上げる。
「あああああああ!!!」
するとエレナ達の後方からフェルドの叫び声が聞こえる。
カキン!
なにかが交わるような音がエレナたちの耳に響く。
そちらのほうへと視線をむけると、エレナたちの目の前にはフェルドの背中が見えた。
フェルドの手には長い棒らしきものが握られており、その棒が赤い獣の爪を食い込ませていた。そのまま棒を振るうとドーンと獣が地面に叩きつけられる。
「このやろう! せっかくのパンが台無しになったじゃねえか!!」
フェルドのすぐ足元にはパンが転がっている。
「フェルド。 それどころじゃないですよ」
エドルフはあきれながらツッコむ。
「エレナ!」
そうこうしているうちにラトラスとピスマユルがこちらのほうへと駆け寄ってきている、
「きちゃだめだ!」
エドルフが手をかざすと、こちらへ駆け寄ってきていたラトラスたちの動きが突然止まる。
「え? 動けない!?」
ラトラスたちは自分の身に何が起こったのかわからずに周囲を見回す。
「結界を貼りました。そこから動かないでください」
ラトラスたちは茫然とエドルフをみる。
「お前も下がってろ」
それを確認したフェルドが背を向けたまま言うと、エレナは下がる。
赤い獣は再び起き上がるとフェルドへ牙を向ける。フェルドはそれを避けるとすぐさま棒を振りかざした。赤い獣は後方へ飛び上がり、棒が地面に叩きつけられる。
「フェルド!」
エドルフが叫ぶ。
赤い獣は体制を整えると再びフェルドに飛びかかろうとする。
「このやろう! パンの恨みはらしてもらう!!」
「そこ違いますから!!」
フェルドはすぐさま棒をもちあげると野球バッドを構えるような姿勢をとる。。すると棒の先端から黒いものが吹き出してきて扇の形をした刃へと変化していった。
フェルドは両手で握りしめると自分のほうへと向かってくる赤い獣に振りかざした。獣はそれを後方へさける。
扇形の刃物が虚空を切るのとになり。フェルドは「逃げるな! 俺の刃をくやえ」とわめくと、獣へと突進する。それを避けようとする獣だったが、今度こそ扇形の刃物が獣の体を切り裂く。
切り裂かれた箇所から黒い血液が吹き出してフェルドの顔にかかる。それを気にすることもなくフェルドは目の前で倒れていく獣をじっとみつめる。
「すごい」
それを見ていたラトラスは思わず感嘆する。
しかし、獣は血をながしながらも再び立ち上がる。
「やっぱり無理かっ」
獣はフェルドに狙いを定めると襲いかかろうとする。それを再び刃で切り裂くのかとおもいきや、フェルドは突如として武器を捨てて獣からさけるべくして後方へと飛ぶ。
「うーん。やっぱり、食べたりねえや」
先程とはうってかわり、いかにもやるきなさそうな口調でつぶやくとラトラスたちのすぐ前であぐらをかきはじめた。
「……ということでエドルフ、あとはまかせた」
「あなたはどれくらい食べたら本気になるんですか!?」
「さあ? あとパン10個は必要かもな」
フェルドは頬杖をつきながらエドルフの質問に答えた。
「そうですか! 結界の維持頼みますよ!」
「オッケー!」
そんな話をしている間に赤き獣がエドルフに狙いをさだめて襲いかかる。エドルフはそれをかけるとすぐさま呪文を唱え始めた。するとエドルフの右手から光が生まれ、たちまち剣を形だった。
その鞘を握りしめるとすぐさま獣へと攻撃をしかける。それに気づいた獣がさけようとするとそれよりも早く獣の背中を切りさく。それと同時にエドルフは獣を通りすぎていき、少し距離をとって立ち止まる。
振り替えると同時に獣の体から再び黒い液体が吹き出していき、そのまま崩れ落ちていった。
次の更新予定
神聖クライシスハンター 野林緑里 @gswolf0718
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。神聖クライシスハンターの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます