フロンティアの少女

フロンティアはアウルティア大陸最大の魔法王国であるアメシスト王国の最も東に位置する港町だ。


西にはオオバロスというアメシスト最大の森があり、東にはドラゴンレイン海。その向こうにはアメシストとの貿易が盛んな同盟国龍背国がある。ゆえにフロンティアにはアメシスト人以外にも龍背人の姿も見受けられ、いくつかの言語がいきかっているのだ。



そんな港町でもっとも賑わいを見せているのが海沿いの市場テトロン。海で取れた魚介類、山や畑でとれた野菜などが売り出されているほかに衣類や雑貨といったさまざまなものが売り出されており、商売人以外にもおしゃれな女たちの姿も見受けられていた。



その中には年端もない学生らしい少女たちの姿もある。学校指定の制服をまとったふたりの少女たちが、たくさんの買い物袋を手に繁華街を楽しそうに話をしながらめぐっていた。


そのうち、どちらからともなく「いつものお店にいこう」と言い出すと人間たちで溢れるメインストリートから路地のほうへと歩みをむけた少女たちは何のためらいもなく、歩きだす。


メインストリートをぬけると人気は一気にへる。


店と店の間の小道をぬけると静かな住宅地やいくつかの飲食店が立ち並んでいた。


彼女たちは慣れていることもあり、なんの躊躇もなく目的の店へと歩きだす。


「あらあら、エレナとピスマユルじゃないかい。今日はお休みかい」


途中で花束をかかえたオバさんが話しかけてきた。


「はい!」


エレナが満面の笑顔を浮かべながらそう応えると、オバさんは「うちにも来なよ。きれいな花があるよ」というとそのまま歩き出した。


「でも、よかったのかしら」


花屋のオバさんを見送っているとふいにピスマユルがつぶやくと、エレナは「なにが?」と尋ねながら振り返る。


「エレナ、知らないの? 最近このあたりで妖魔が出現して人を襲っているらしいのよ」


「そういえば、そんなこといっていたわね」


ピスマユルはエレナのあっけらかんとした反応に肩を落とす。


「エレナ。あなたは不安にならないの? 妖魔よ。妖魔が襲ってくるのよ」


「うーん。いままでそんな妖魔みたことないもの。ピンとこないわよ。それに」


エレナは周囲を見回す。


「どうみても妖魔が襲ってきた雰囲気なくない? さっきの花屋のオバさんもいつも通りだし心配ないと思うわよ」


「そうかしら。でも、うちの生徒たちが襲われているという噂もあるし」


「大丈夫よ。噂は噂。なにかあったら、騎士団がなんとかしてくれるわよ。それよりもそろそろご飯にしない? 私、お腹すいちゃった」


エレナはお腹をさすりながら歩き出す。


「エレナ……」


ピスマユルは不安になりながらもエレナに従った。










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