森の中

太陽が燦々と照る中、蒼くキラキラと輝く木の葉が風によって揺れている。 小鳥がさえずり、猿が枝の上で木の実を食べ、そのすぐ下ではウサギが耳を立てながら周囲を見回している。


サササッ


地面から延びきった草が揺れると猿もウサギも慌てたように森の奥深くへと逃げていく。


その光景をなんとなく眺めていたエドルフは、それとは対象にぶつぶつと文句をいいながら前方を歩く相棒の後ろ姿へと視線を向ける。


「くそおお。いつになったらつくわだよおお!おいっ! エドっ! 本当にこっちでいいのか~」


相棒のフェルドがお腹を押さえながら気だるそうな声を出しながら振り返った。



「多分、地図によれば、もうすぐ森をぬけられるはずですよ」


エドルフは『スマホ』と呼ばれるカードサイズの魔法アイテムへと視線を向けた。


そのカードには彼らの現在いる森とその周辺の地図が写し出されている。


それによりと彼らがいまから向かう目的地へ抜ける道はこのまま真っ直ぐに進むだけであった。時間はさほどかからない。


「あー。 あとどれくらいなんだよおお。腹減ったーー」


フェルドはなかなか森から抜けないこととさっきから鳴り響く己の腹の虫のおかげで気力を失いかけていた。


そのせいか本部を出たときにはキラキラと輝いていたコバルトブルーの瞳がどんよりと霞んでおり、茶色の癖っ毛の髪にも心なしか跳ねが落ち着いているように思える。


それも仕方ないことだろう。


この森に入ってからずいぶんと時間がたっており、入ったときには真上にあったはずの太陽がずいぶんと西に傾いている。


どれくらいの時間歩いてきたのだろうか。おそらく三時間は森のなかを歩いている。


通いなれない道。だから、正直いって本当に自分達の目指す場所へとたどり着くのかという不安はある。されど、『スマホ』に表示されている地図を信じるしかないのだ。


「うーん。まじで俺、腹減ってしにそうなんだけど~」


「さっき食べたばかりじゃないですか?」


「でも、腹減るんだよ。俺って食べ盛りだからさあ」


フェルドはエドルフにおねだりするかのような目でみる。


「もうないですよ。もってきた分全部食べたじゃないですか」


エドルフは食料を入れていた袋をフェルドに見せる。みごとに空っぽになっている。


「まじで?」


フェルドはそれを奪い取るとマジマジとみる。


どんなにみたところで食べ物が現れるわけだもない。


「とにかく、急ぎましょうか。街にでれば、すぐに腹ごしらえしましょう」


「よっし!急ごうぜ!」


さっきまで落ち込んでいたフェルドが顔をあげると歩き始める。


ものすごく単純だなあと思いながら、エドルフはその後ろを歩きだした。






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