第24話
昨日はこの世界に来て、初めて筋トレをしてみた。
MPが枯渇していたのが行動の理由だ。
キノコを食べてMPを回復させてみたが、満足行く数値ではなかったので思い切って違うことをしてみた。
それで思いついたのが筋トレである。
ステータスが伸びているので筋トレが捗る、捗る。
腕立て伏100回、腹筋100回、スクワット100回とランニング10kmという某作品に出てくる黄金トレーニング。
結果、あまり負荷はかからず、レベルも上がらなかった。
最強にはなれず、ほとんど無意味だったという訳だ。
この世界で強くなるのに筋トレは不要という知見を得た。
無駄な行動ではなかったからね。これ大事。
そこからはいつものローテーションで毒キノコ+をあたりに撒いておき、拠点の残骸たちは素材化して木の板などにしておいた。
寝床は木の上で臨時の場所を確保して、夜を明かす。
目が覚めると同時に、レベルアップのアナウンスもあり、俺は晴れてレベル10となった。
いつもの通り夜に毒キノコ+を魔物が食べたみたいだ。
品種改良と同時に、そろそろキノコ+の成長もやっていきたい。
たしか毒キノコ+はレベル10までの魔物に効果がある。胞子を飛ばした場合はレベル7の相手にしか効かなくなってしまう。
俺は現状レベル10まで上がったので、同じレベルの相手だとキノコに頼る必要もないのではないか?
キノコが一番猛威を振るうのは格上相手である。
毒キノコ+は仕掛けておけば、格上レベルの魔物をほいほいと仕留めて経験値稼ぎをしてくれる。これは他のキノコたちも同様で、格上相手に非常に効果的だ。
試合の日までには新しい段階まで成長させておこう。前は急激にMPが削られてしまい叶わなかったが、今ならそれが可能な気がしている。
目が覚めてからは乾燥肉をもぐもぐ噛みながら、黒羊ちゃんのお胸をさわさわ触らせて貰った。
乳を搾るために肌をならしているだけで、やましい意味合いは決してない。
森の神に誓ってやましい思いはない!
黒羊ちゃんの胸をひとしきり触ったので、乳を搾ってコップに注いでいく。
すぐに飲んだ。しぼりたてが一番うまいんだから。
およそ三日ぶりのミルクは、やはり濃厚で旨味がけた違いである。
「うんまっ」
シンプルな感想が口を突いて出てくる。
塩気の聞いた干し肉を食べながらだと、余計に甘みが際立って美味い。
丁寧に咀嚼しつつ、干し肉を食べ尽くす。
ミルクも最後の一滴まで、あんぐりと口を開けて飲み干した。
昨晩と今朝で干し肉は減ってしまった。今晩食べたらもうなくなってしまうだろう。
食料が尽きる……これは働かねば。
キノコ大量生産計画始動である。
計画通り、縦10メートル、横10メートルのスペースを確保していく。
まずは拠点である。
邪魔な木や大きめの植物を全て素材して、使う予定のない分をまとめて一か所に置いておく。
さっそくやってみると、MPの消費はあるものの、比較的スムーズに進んでいく。
思ったよりも素材が積み重なってしまった。
拠点とキノコ飼育スペースの他に資材置場としてのスペースも用意しておこう。
拠点となる場所は平らな土地に出来た。
ここは森の中なので、下は綺麗な土という訳には行かないが、それでも平らになっただけいろいろと建築しやすくなる。
隣の区画を作る前に、通路も整備する。
通路の幅は2メートルを予定している。少し広い気もするが大きな運びものがあるかもしれない。
森は広いんだ。豪快に使っていこう。
あまり木を大量に素材化しすぎるとキノコの生育に良くない気がした。
日が差し込みすぎるのは相応しい環境ではない。
空を覆う木の葉が薄くなるけど、日差しを遮るという状態くらいに木は残しておいた。
残しておいた木は通路の端や、区画の端に来るように意識する。
少し邪魔だが、日が入りすぎるのを防ぐためだ。仕方がない。
日差しが入る過ぎるとキノコにもよろしくないし、俺の裸生活にも悪影響である。
薄暗い森の中なら堂々としていられるが、明るくなりすぎるとちょっと恥ずかしい。
社会が悪い。裸が恥ずかしいと決めつけた社会の価値観が悪い!
そういう複合的な理由で、所々大木を数本残してある。
移動の邪魔や、区画、通路が狭くなったりするが仕方がない。全て社会が悪い。
拠点の隣に、計画していた通り通路もしっかりと整備できた。
まずは東方面から開拓していく。
通路の隣に、二つ目の区画を作っていく。
基本的に、作業は植物素材化魔法の連続使用だ。
出来上がった素材はひとまとめにしておく。
大きな丸太を運ぶのも今じゃ慣れたものだ。肉体労働できるって素晴らしい。
ステータスに感謝だ。
淡々と作業をこなしていくと、二つ目の区画もすぐにできた。
良いペースである。
今度は今作った区画の南側に通路を作り、同じ要領で新しい区画も作っていく。
この繰り返しで、夕日が差し込むくらいになった頃には全9区画を作り上げたのだった。
拠点を中心に、次に東に一区画造り、そこから左回りに同じ要領で作っていき、合計9区画出来上がった。
形は綺麗な正方形とはいかないが、悪くない仕上がりである。
区画ごとも綺麗に整備できたし、全体で見ても正方形に近い。
とても満足な仕上がりである。
MPの消費と素材の運搬でだいぶ疲弊した。それだけの収穫はあったので満足だ。
区画に数字を振っていく。
左上から1だとして、真ん中の拠点は5番となる。
5番にはキノコは植えない。
ここは居住区とする予定なので、快適に整理するつもりだ。
とりあえず大量に出来上がった素材たちは9番の区画に持っていく。
ここはやたらと日の当たりが強いので、素材置き場とした。
1番には帝キノコ。
2番にはキノコ300
3番には火炎キノコ
4番には痺れキノコ
5番にはキノコマスター
6番には毒キノコ
7番には寄生キノコ
8番には黒羊ちゃんの囲い
9番が資材置き場
以上である。
うむ、我ながら上手に区画を整備できた。
キノコの胞子は森の中に手当たり次第にばらまいているのだが、この区画で育てるキノコたちはそういった野生のキノコとはレベルが違う。
エリート中のエリートとして、俺が管理し魔力を注いで育てていくキノコたちだ。
世界に広がるキノコは全てここからスタートする。
そういった場所にしていきたい。
……ふっ、ちょっとカッコつけすぎたか?
ここのキノコたちみたいに、俺の下半身にぶら下がっているキノコも成長したらいいんだがな。
……ふっ、ちょっときも過ぎたか?
流石にきも過ぎだな。反省である。
成長するのはキノコたちだけでいい。
このキノコ農園が完成したとき、俺の壮大な世界キノコ化計画が一歩前進していく。
いずれは森全体に広げていき、更にその向こう側までも!
計画した区画に、植物操作の魔法で胞子を撒いていく。
今日はここまでの作業でMPがかなり減った。
軽く水を撒く程度にして、明日から植物成長魔法で成長、収穫を繰り返していこう。
農園がキノコ一杯になる光景を想像する。
ふふっ、明日にはその光景が見られることだろう。
残ったMPは素材を拠点に運んで、家の組み立てに入る。
木製のログハウスとベッドを作っておきたい。
いつまでも外で寝るのは嫌だ。
そろそろマイホームが欲しいところだ。
植物操作をして丸太を組み立てつつ、つなぎ目も植物操作の魔法でくっつけておく。
床は素材を植物操作で加工して平らな床をつくり、壁と三角屋根は丸太で組み合わせて作る。
窓ガラスがないので、木の窓を作る。
軸となる気を
ちょっと荒い造りだが、隙間も植物操作で閉じればオールおっけーである。
この世界にやってきたときに思い描いたログハウスが出来た。
部屋の中にも小さい素材を組み立てて簡易なベッドを作る。
こちらはログハウスに比べてはるかに簡単にできた。
嬉しくてすぐに横たわった。
「かって」
当然だが木のベッドは固い。
しかし、ログハウス内は木の香りに包まれて素敵だ。
森での快適生活が始まろうとしていた。
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