第11話
『
三織 大地(みおり だいち)
植物魔法使い lv5
HP 193(+44)
MP 124(36)
攻め 21(8)
受け 44(16)
素早さ 9(4)
魔力 56(20)
使用可能魔法
植物操作lv3
植物品種改良lv3
レシピ 毒キノコ 痺れキノコ 火炎キノコ
植物成長lv3
植物素材化lv1
植物鑑定lv1
スキル
キノコ回復lv2
キノコ毒殺lv3
』
ステータスを確認するとやはりレベルが二つ上がっていた。
毒キノコ+が、辺り一帯の魔物を殺し過ぎているな。助かる。
レベルアップの恩恵は、今朝から体が軽く力が湧いてくるので凄く実感していた。
ステータスの中でも受けと魔力の伸びが相変わらず良い。
ミリーがいたときに、この世界のステータスの基準を聞いておくべきだったかな。
いや、もしかしてそこは繊細な部分かもしれない。
ステータスの高さでできることも増えるだろうし、前の世界でいう他人の年収を聞くようなものなのか?
そうだったら慎重になる必要があるか。
他人の年収を聞くのって、なぜあんなのにも抵抗感があるのだろうか?今となってはどうでもいい話だが。
どうでもいいと言えば、他人とステータスを比較するのもどうでもいいことだ。
俺はこの森で生きていくんだからな。
自衛さえできていれば、必要十分だ。ミリーにステータスのことを聞くのはやめにしよう。
攻めのステータスが伸びてあれだけ恩恵を感じられたから、受けと魔力はもっとすごいんじゃないだろうかと思った。
誰か俺にタックル決めてくれないか。実感したいんだ!生を!!
そんな自分でもわけわからない願望を放棄して、レベルの上がった植物操作の魔法を試してみる。
だんだんと距離が離れていても使えるようになってきたこの魔法は、今現在一番自衛に向いている魔法な気がしている。
少し離れた場所から、そこそこ太い木に干渉してみる。
枝葉は思うがまま動かせる。
ちょっとかわいそうだが、枝を折ったり、葉を勢いよく飛ばしたりなんかも可能だ。
そして、幹の部分は……。
「動いた……!」
本来固くてどっしりと構えている木の幹が、植物操作によってしなやかに動き出す。
レベル1で魔力の低かった時はびくともしなかったというのに、今じゃ少し重さを感じながらもほとんど自由に動かせてしまう。
木の繊維を破壊せず動かせるのは、やはり魔法のなせる業か。
これは……立派な自衛手段になりえる!
魔物が出た時に、常に対角線状に木がブロックするように操作してやれば、魔物も面倒がって逃げるんじゃないのか?
魔物「ちょっ、こいつ。なんだよ、邪魔だよ。めんど。他のやつ食べよ」的な。
植物魔法万能か?なんでもできちゃうな。
美味しい食べ物を与えてくれて、生活も便利になり、自衛もできる?
5大魔法ならぬ、6大魔法になる日も近いな。
木の操作をやめて、元の状態に戻しておく。
植物操作は途中でやめてしまうと、木が変な状態のままあり続けるから少し注意が必要だ。
曲がりなりにも植物魔法使いなのだ。植物たちはできるだけ大事に扱っていこう。
次に、新しく覚えた魔法を試す。
植物鑑定の魔法だ。
一体どこで使い方を覚えたのか、自然に動けた。
木に触れて植物鑑定と唱えると、自分のステータスと同じように情報が開示された。
『木 成長、素材化、品種改良が可能。植物操作90パーセント操作可能』
おおっ、情報が開示された。
木の情報だけでなく、使用可能魔法に関連する情報もありがたい。
木の幹を操作する際に重たく感じたのは、まだ100パーセント操作できていなかったからか。
図鑑を見ているようで楽しいので、キノコたちも鑑定していく。
『帝キノコ+ 成長、素材化、品種改良、植物操作可能。非常に美味』
帝キノコ+キノコの情報はほとんど知っている内容だった。
植物操作の数値が出ていないのは、完璧に操作が可能だからだろう。胞子をばら撒くくらいしか操作しないのだが、自分の指を動かすのと同じく自然にできるので親和性がとてもいいのだと思う。
小さいだけでなく、自分で育てたからとかそういう影響もあるのかな?
今度、木とかも植えて試してみるか。
『毒キノコ+ 成長、素材化、品種改良、植物操作可能。レベル10相当の魔物が食べれば即死する。植物操作で胞子拡散が可能。レベル8相当の魔物を即死させることが出来る』
毒キノコ+の鑑定はずいぶんと物騒なものだった。
レベル10相当の魔物がどれほどの強さか知らないが、この森は弱い魔物しかいないらしいから充分だと思われる。胞子を飛ばして毒殺するなんて方法もあったのか……。
恐ろしい子!!
『痺れキノコ+ 成長、素材化、品種改良、植物操作可能。レベル10相当の魔物が食べれば3日動きを拘束する。植物操作で胞子拡散が可能。レベル8相当の魔物を拘束することが出来る』
毒から痺れに効果が変わっただけみたいだ。
それにしても、毒キノコ+にしろ、痺れキノコ+にしろ、植物操作で胞子を飛ばして武器とするアイデアはなかった。
増殖のときしか使っていなかったから、こんな戦い方ができるとはとても大きな発見である。
植物操作を上手に扱えば、現状でも幅の広い戦闘が出来てしまうな!
植物魔法とキノコたちがますます好きになりそうだ。
『火炎キノコ+ 成長、素材化、品種改良、植物操作可能。魔力を流すと3日燃え続ける。植物操作で胞子拡散が可能。飛ばしか胞子は引火可能』
火炎キノコ+は一番おっかない効果だった。
胞子を飛ばして、引火だと!?
それって広範囲に炎を飛ばせるということじゃないか。
ただの炎魔法でびっくりだ。
自分を知ることって大事なんだな、と植物鑑定魔法を通して学んだ。
まだ見ぬ可能性が誰にだってきっとあるんだ。
他人の評価なんてあてにならないどころか、まったくの無意味。
躓いて夢をあきらめるのは勝手だが、自分の可能性を自分で信じなくてどうする。
新しく覚えた植物鑑定の魔法は、俺に大事なものを思い出させてくれた。なんとも粋な魔法だぜ。
……さて、格好付けるだけ格好つけたし、もうそろそろいいかな。
植物鑑定の魔法を使って食えそうなもん探してくるかー。魔法は食べ物を見つけるのに使うのが一番!
できれば肉の臭みを消してくれるものがいいな。
スパイス系ももっと欲しいし、煮崩れしない野菜も欲しい。
いや、食えればなんでもいいか。
ひょっほー、植物鑑定の魔法最高だぜ。また食えるものが増えてラッキー!
森の探索と植物鑑定を兼ねての探検を始めた。
日に日に活動範囲が増えており、新しい道を覚えている。
全て獣道に見えて、やはり通りやすいルートというのはある。
ずっと真っ直ぐ突っ切るのはしんどいが、ちょっと迂回したり、倒れた大木の穴をくぐったりすれば通れたりする。
虫もいるし、変な草に引っかかれて肌がやられることもあったが、最近では受けのステータス上昇でそれらもほとんどダメージを受けなくなった。
道中、食べられそうな植物にことごとく植物鑑定の魔法を使っていく。
食べられそうな鑑定結果なら、その都度根っこから引き抜いて採取した。
根っこからとるのは、本拠地近くに植えなおすからだ。
本拠地近くにあれば、植物成長の魔法で食材を増やせる。
その日使えるMPは減ってしまうが、うまさのためなら惜しむようなものじゃない。
全てはうまい飯のために!
意外にも食べられる野草は多かった。
辛みの成分を含むもの、苦みはもちろん、甘みを出すものまで。
香りの強いものも多く、これは調理の幅が一気に広がったのではないだろうか。
更に、中には体力回復が可能な草もあった。
まさに薬草である。鑑定で出た名前も薬草だった。
俺はキノコ回復があるから必要ないのだが、薬草って響きが好きだ。
いかにも剣と魔法の世界って感じで好き。
そんな具合で順調に食材となる野草の回収をしていった。
野草はかさむので、植物素材化で作った簡易なザルにいれている。
リュックとか欲しいなと思った。
いや、全裸でリュックを背負うのはちょとあれかー。
全裸でザルもなかなかだから、やはりリュックでいいか。
自作できればいいが、細かい造りのモノはむずかしそうだ。
野草の回収はともて順調だったが、新しく踏み入った場所で今日何度目かの道を見失った。
道がない時は新しい道を作るまでだ。
今回はちょっと高い崖を乗り越えれば、その先に進めそうな気がした。
以前の俺なら崖なんて登れるわけがないのだが、ステータスのおかげですいすいと登れた。
籠を片手に持ちながらの壁登りだからそうとうな筋力である。
俺もたくましくなったものだ。
壁を這う途中、巨大な芋虫が顔の横にきた。
ブヨブヨと肉付きのよい芋虫だ。
さすがに食べようとは思わなかった。マツタケに出会わなければ、こいつを食べていた未来もあったのだろうか。
今後は食料に困ることはなさそうだが、こいつも念の為に食べておくか?
……んあやっぱ無理。あのぶよぶよ感、圧倒的に無理!
「よいしょっと」
芋虫を食べるか葛藤しながらも無事に崖を登り終える。
植物鑑定しまくってMPもほとんど残っていないし、崖上の様子を見たら今日は帰るとしよう。
たくさん野草も採れたし、収穫の多い道のりだった。
「あっ」
崖を登り終えて、顔を上げた俺の視線の先に魔物がいた。
額に宝石のようなものが埋め込まれた、獰猛なイノシシのような生物が目の前に。
牙が口には付いておらず、額に一本真っ直ぐと槍のようについているのが、いかにも魔物感全開だ。
なぜ獰猛と分かるかって?
よだれを垂らして、こちらを睨んでいるのだ。
後ろ足で土をごりごりと掘っているが、あれは助走の動作と見た方が良さそうだよな?
手には薬草、MPは枯渇、裸の俺は武器となるキノコも持ってきちゃいない。
……甘えた。
俺は異世界にいるというのに甘えてしまった。
服を着ていた頃は警戒してキノコを持ち歩いていたというのに、裸になった解放感と新しい魔法を覚えた高揚感で、すっかり警戒するということを忘れてしまっていた。
わりぃ、俺死んじまった。
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