第5話
満腹の幸福感に包まれて、横になりながらステータスの確認をしてみた。
『
三織 大地(みおり だいち)
植物魔法使い lv3
HP 171(+22)
MP 106(18)
攻め 17(4)
受け 36(8)
素早さ 7(2)
魔力 46(10)
使用可能魔法
植物操作lv2
植物品種改良lv2
レシピ 毒キノコ 痺れキノコ 火炎キノコ
植物成長lv2
植物素材化lv1
スキル
キノコ回復lv1
キノコ毒殺lv2
』
レベルが3に上がって、ステータスが順調に伸びている。
日々やれることが増え、拠点が徐々に過ごしやすくなり、食べ物への不安も少なくなってきた。
この上ステータスでの成長まで感じられるとは、なんとも充実した日々である。
娯楽が少ない今、自分のステータスを見るのは結構楽しいイベントだ。
基準がないからまだわかってはいないが、おそらく俺のステータスは低めなんじゃないだろうか。何となくそんな気がする。
受けと魔力の伸びが少し良いみたいだけど、全体的に戦闘向けじゃない魔法を見ればステータスにもあまり期待できない。
あまり荒事な戦闘展開は避けていきたいものだ。
植物品種改良もレベルが上がり、新しく植物素材化魔法まで覚えた。
植物品種改良のレベルが上がったことで、どういう違いが出てくるのか気になる。新しい魔法も気になる。
試してみたいことは尽きない。
森での生活は楽しいな。
昼前の太陽の日差しが気持ちよくなってきたので、ようやく起き上がって生産的な一日にしていこうと決めた。
MPが増えてきたので、盛大に使っていくことにする。
まずやるのは植物品種改良魔法を使って、レシピに従って作っていく。
マツタケ+を品種改良して、毒キノコ、痺れキノコ、火炎キノコを一つずつ。
マツタケ+を素材として使っているため、当然といっちゃ当然なのかもしれないのだが、出来上がったどれもが普通サイズの2倍はあった。これは嬉しい予想外な結果だ。
名付けるなら、毒キノコ+、痺れキノコ+、火炎キノコ+といったところか。
我ながら安直なネーミングセンスに少し悲しくなる。
マツタケ+はサイズだけでなく、その旨味も非常に強いものがあった。
ということはだ。毒キノコ+たちにも効果の増加が期待できる?
なんだ、この倍々ゲームみたいなシステムは。植物魔法最強か?
ただし、全てが全て、そううまくは行かなかった。
+種の制作にかかったMPは通常の品種改良よりも多く、消費MPがちょうど倍となっていた。
既にMPは半分近くになっている。
やれることが一気に減った気分だ。
どこの世界でも活力と体力があるやつが強いのは変わらないみたいだ。
レベルをどんどん上げてMPを増やしていきたいものだな。
次に胞子を大量に撒いていく。
植物操作を使って+種から搾れるだけの胞子を絞っておいた。
これが本当の搾取だ。
拠点には現在、寝床のハンモック、火炎キノコを使った焚火ポイントがある。
その東方向にマツタケ+と毒キノコ+、火炎キノコの胞子を撒いておいたので、地面に向かって植物成長の魔法を使ってキノコたちを生産していく。
植物成長魔法の途中で気づいたのだが、マツタケ+と同じ大きさまで成長した後、まだ成長の余地があった。
マツタケからはマツタケ+のサイズに成長させるのが限界だった。
それが、マツタケ+からスタートするとまだ上があったとは。これは近いうちにマツタケ++を味わえる日が来るのか?
なぜ近い日だと言ったのかというと、マツタケ+のサイズを超えて成長させようとした途端、急にMPの消費が激しくなった。
一気に枯渇してしまいそうな勢いに慌てて魔法を止めたのだ。
これは植物成長の魔法レベルと魔力によって、成長具合と消費MPが変わってきそうである。急いで作る必要もないので、今日はマツタケ+10本と毒キノコ+を10本、火炎キノコ10本を製作しておいた。
毒キノコ+と火炎キノコ+は当然収穫するとして、マツタケ+は全てそのままにしておく。食べる直前に収穫しておいた方がうまいんじゃないか?という考えに至ったからである。
ここは拠点にも近い。ずっと持ち歩いている必要もないだろう。食事の直前に収穫しに来よう。
毒キノコ+と火炎キノコ+は少しかさばるので、寝床のハンモックの下に大きな葉を敷いて、その上に置いてきた。
夜になる前に、辺りに毒キノコ+を撒いておこう。
レベリングは大事だ。いやいや、護身用だったな。
毒キノコ+と火炎キノコ+はそれぞれ、一本ずつポケットにしまった。
まだ魔物と遭遇していないのだが、もしもの時のためだ。
役に立つか怪しいが、まあないよりはましだ。
南方面へと歩いていき、今朝がたウサギが取れた辺りに良い場所を見つけ、痺れキノコの胞子をまき散らしておく。
植物成長の魔法で魔力を注いでやれば、たちまち痺れキノコ+が5本出来上がった。
俺の植物成長の魔法も結構上達してきたな。
痺れキノコは4本だけ収穫しておく。
一本は植えたままだ。こちらも新鮮なほうがおいしいだろう。ウサギもどきへの気遣いは忘れない。
一本だけ残したのは、あまり多く獲物が取れても困るからだ。
俺の手で捌いて食べるので、命の重みが凄く伝わる。食材を無駄にはできない。
今の環境ではそのありがたみが、かつての何倍にもわかる。
一匹では夜にちょっと小腹がすくだろうが、そのくらいでちょうどいい。生きていければそれでいいのだと思う。
痺れキノコ+も護身用に一本だけポケットにしまう。
三本もズボンのポケットに入れると少しかさばって、歩くたびに足の付け根にあたり煩わしい。
それにポケットから浮き出るシルエットが完全に男性器でなんかちょっと嫌だ。
誰かに見られているわけじゃないが、それでもなんか嫌。
細い蔦を見つけて、キノコを一本ずつ括っていき、端をベルトに巻き付けた。
ぶらぶらと垂れて少し鬱陶しいが、さっきの状態よりはましだろう。
収穫した痺れキノコ+もハンモック下に収納した俺は、森の散策に出かける。
景色にところどころ見覚えが出だして、この森をだいぶ自由に歩けるようになった。
一体どこまで続いているのかはわからないが、そのうち端を目指して歩いてみてもいいかもしれない。
そのためには十分な食料と、武器となるキノコたち、更にはもう少しステータスが欲しいな。
基準が分からないが、レベル10とかあればなんかキリもいい気がする。
レベルがあがったら、そこらへんをめどに遠くまで歩いてみよう。
探索を終えて、一旦馴染の川まで戻り、全裸になって深いところへとだいぶする。
昼過ぎの暖かい時間に、開放的に泳ぎ回るのは最高に気持ちがいい。
汗臭い体を流して、乾いた喉も潤していく。
いつになったら煮沸消毒した水が飲めるのか。
そういえば煮込み料理とかも食べたいな。
今日捕れたうさぎとか、マツタケ+と一緒に煮込んでもうまそうだなー。
水中を泳ぎながら、いろんな想像をしていく。
こっちに来て以来、欲求がほとんど食事だ。
衛生面や、男性としての欲求もあるにはあるのだ、それらよりもはるかに食欲が勝る。
「ぷはっ!」
水面に顔を出して、ちょっと浮かんで川遊びに満足すると、河辺へと上がる。
体を拭くものはないが、太陽光で自然と乾くから大丈夫だ。
シャツとズボン、下着も川の水で洗っておく。
あまり汚れは取れないが、汗臭いのが取れるだけで十分だ。
ベルトと革靴は日に当てるだけにとどめた。
洗濯を終えて、火炎キノコ+を一つ手に取る。
今朝ウサギもどきを焼いたときに気づいたのだが、火炎キノコはそれ単体で燃え続ける能力がある。
つまり、木材を必要としない。
川辺の石の上において、魔力を流してやるとたちまちに火柱を上げて燃え上がる。
火柱は通常の火炎キノコより大きかったが、警戒したよりは凄いものではなかった。
すぐに火が落ちついて、キノコの周りにちょうど使いやすい量の炎がめらめらと燃え盛る。
+の効果は、火の勢いじゃなくて持続時間だったらいいな。とか、そんな願望を心に思ってみる。
濡れた服を、植物操作の魔法を使って上手に吊り上げて干す。
太陽光と火炎キノコの熱で乾かしていく。
途中、少しだがズボンに火が飛び、お尻に穴が開いちゃった。まあ仕方ない。
失敗はあるさ。
裸のまま木の枝をそこら辺から一本適当に見繕う。
蔦も見つけて、植物操作で枝の先に丈夫に巻き付けていく。
簡易的な竿と釣り糸の完成だ。
垂らした蔦の先には、ちぎった痺れキノコ+を結び付ける。
竿をふりかぶって、勢いよく川へと投げた。
水中にはちらちらと魚が見えるのだ。
頭に変な触覚があって見た目少しグロイのだが、ゲテモノものはうまいと相場が決まっている。
キノコで釣れる気はしないのだが、魔物だって食うのだ。可能性はゼロじゃない。
それに釣れなくても、服を乾かす時間が潰せればそれでいい。
釣りは時間がゆったり過ぎ去るから、もとの世界でも好きだった。
糸代わりの蔦を垂らすこと30分、反応があった。
竿が一瞬強く引っ張られて、その後強い引きが来るのかと思ったが、そんなことはなくプカプカと魚が水面に浮いてきた。
あ、しびれちゃったのね。
少し拍子抜けだが、確実に獲物が取れてこれはラッキーである。
川に飛び込んで魚を回収だ。
異世界でのキノコ釣りは結構楽しく、服が乾いてからも何度か釣ってみた。
結局、痺れキノコを4等分して使った分で4匹の魚が釣れた。
どれもアユくらいのサイズがあって、新鮮でうまそうだ。頭の先にある長い触手と脚があるのを除けば100点満点の御馳走だ。
夕ご飯が今から楽しみである。
4匹は少し釣りすぎたな。
魚の血抜きと内臓をとりながらそんなことを思った。
2匹は今日食べて、残りは天日干しにして明日食べよう。食料の保存にもなるし、違ったうまさも楽しめて良い。
計画が決まったところで、蔦に付けた魚たちをかついで本拠地へと向かう。
「脂がしっかりのった魚だといいなー」
今からその旨味が楽しみで、足早になる。
ちなみに、服は着ていない。手に持って移動している。
少し全裸の解放感が気に入ってきた。
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