2022年7月23日 最悪で最高な旅行 前編

 今、角田光代さんのエッセイを読んでいる。角田さんが体験された旅のあれこれをまとめたエッセイ。それを読みながら、私も20代の頃の九州旅行を思い出したので今日はその話。


 社会に出て数年たった頃、年末のお疲れ会として大学時代の友人と九州旅行をすることになった。参加者は私含め女4人。我々は中国地方に住んでいたので車で行こうとなり、レンタカーも準備した。各自の仕事が休みに入った12月30日に出発して、31日の夜に帰るという一泊二日の予定だった。行先は大分県の由布院にした。少し贅沢して、少々お値段が張る温泉宿も予約した。

 ワクワクで迎えた当日はお天気にも恵まれ、レンタカーにお菓子屋ドリンクもたっぷり詰め込んでいざ出発した。しかしこの旅行、今考えても面白いくらい次から次へトラブルが起きたのだ。


 出発して数時間は順調に車を走らせ、北九州あたりでラーメン屋さんに入り、昼食をとった。4人のうちAという友人だけが、確か海鮮ちゃんぽんを、残り3名はとんこつラーメンを頼んだ。昼食後、再び車に乗って30分くらい走ったころ、海鮮ちゃんぽんを食べたAが「車に酔った、気持ちが悪い」といい始めた。高速道路ではなかなか止まれないので、急遽高速を降りてコンビニを探した。


 そこからはコンビニが見える事に、Aはトイレへ。かわいそうに顔色も悪く、水を飲んでも辛そうだ。どうやらお昼のちゃんぽんが合わなかったのか…。こうして予定よりも2時間ほど遅れて、目的地である湯布院の宿へ到着。Aはそのままお部屋へ直行してトイレと布団を行き来していた。Aがしきりに「みんなは観光してきて。私は大丈夫だし、みんなに見守られるのもしんどい」というので、私たち3人は、お宿の方に、時折り様子を見て頂くようお願いして、観光に出ることにした。


 湯布院に来た目的は、温泉だけでなく、実はもう一つあった。それは占いである。友人Bが「湯布院でめちゃめちゃ当たる占いがある」と聞きつけて、あらかじめ予約を取ってくれていたのだ。しかし湯布院に到着した時点ですでに2時間ほど予定よりも遅れていた私たち。すでに予約した時間を10分ほど過ぎていた。お店に電話してみるもつながらず、とりあえず行くだけ行ってみようとなった。

 

 占いのお店はすぐに見つかった。喫茶店のような作りで入りやすく、お客さん全員が占いの為にきているわけでもなさそうだった。予約名などを受付の方にお伝えし、遅れてしまったことを詫びた。すると「先生(占ってくれる人)は忙しいお方ですよ、キャンセル待ちもたくさんいらっしゃるので、遅れるなんてもってのほか!!」といきなり大声で怒鳴られた。なんやかんや怒られ続けたけども最終的には3名一緒なら占ってあげるといわれた。

 20代半ばの女子の占いと言えば、もちろん恋愛についてだ。私たちは普段からお互いの恋愛についてもよく話をしていたので、隠すことでもないし3人でいいよねとなって、3人まとめての占いをお願いした。(占い代は3人分払いましたよ)


 この占いを見つけてくれた友人Bは我々の中でもリーダー的存在で明るくて社交的。旅行の計画をいろいろと練ってくれたのも彼女だった。そしてもう一人の友人Cはおだやかでいつも周りのことを一番に考えてくれる優しい友人で、美人だった。


 占い師はおじさんだった。3人の顔しげしげとみて、その後名前の画数などをチェックして、それから「何について占ってほしいの?」と聞いてきた。私たちは口をそろえて「恋愛についてお願いします」と言った。そこからおじさんの顔色が少し変わったかなーと思った瞬間、おじさんは友人Cのことをあれこれ言い始めた。

・Cが今付き合ってる男性は、Cの顔しかみてない

・あなた(C)は幸せにはなれない

・(Cは)結婚には恵まれない

と次第にエスカレートしていき、しまいにはおじさんは大声で

・顔にだけ頼っていたら、いつか痛い思いをするぞ

を言った。Cはついに泣き始めてしまった。様子を見に来た受付の人が「そろそろ時間です~ご退室ください」と言ってきた。私と友人Bは、Cへの集中攻撃について必死に異議を唱えたものの、受け入れてくれず部屋に出された。


 あのおじさん(占い師)は、過去に美人からどんな仕打ちをされたんだろうか。

占いからの帰り道、私と友人Bは、泣きじゃくる友人Cを慰めながら宿に帰った。


続く…



 

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