第二十六話

 台風がやってきたあるとき。


 小学生だったBさんは、電話に出た家族から受話器を受け取り、クラスメートとなにか話していた。


 すると、電話も切らずにBさんは嵐のなかを飛び出した。


 家族の者も思わず後を追いかけたが、強烈な雨風のなかで姿を見失ってしまった。




 嵐のなか、町の人たちが捜索すると、すぐに見つかった。

 神社の境内でBさんをはじめ、いなくなった子供たち数人がぼーっとしていたそうだ。



 その後、彼・彼女らはこっぴどく怒られたが、覚えているのは「電話に出たこと」と「さんさんと太陽が輝く境内で、かくれんぼをしていたこと」だけだった。



 ただ、発見された誰もが「誰と一緒にかくれんぼをしていたのか」は、全く覚えていなかったそうだ。

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