第二十話

 Gさんという男性の体験。


 当時のGさんは好奇心旺盛で、いまから考えると「行動力のある馬鹿」だったという。 放課後になると、当時流行してハマりこんでいた『こっくりさん』をよくやっていたそうだ。


 その日も性懲りもなく『こっくりさん』をしていると、誰かがおふざけ半分で「みんないつ死ぬのか聞いてみようぜ」と言い出した。


 それはいわゆるタブーの一つであった。

 ただ、昨今のこっくりさんがはなつ、意味のない言葉の羅列に飽き飽きしていたGさんは(どうせ今日もそうだろう)と鷹をくくっていた。


 他のメンバーも同じだったようで大変乗り気だった。

 しかし、いざこっくりさんを始めると、誰がその質問をするか押し付け合いになった。 そこでなんだかんだいって「行動力のある馬鹿」だったGさんに白羽の矢がたってしまったという。 




 誰もが十円玉に指をおいて黙りこむなか、いつもの自分からは想像できない震えてうわずった声で「こっくりさん…こっくりさん…ぼくたちはいつ死にますか?」と呟く。


 すると十円玉はひとりでに

「く」

「る」

「し」

「ん」

「で」



 ・・・と軽やかに動くと、そのまま

「し」

「し」

「し」

 ・・・と、『し』の周りをぐるぐるぐると回りだした。

 そのままずっとぐるぐるぐるぐる回り続けるだけで止まる様子がない。


 みな一斉に叫びだし喚くなか、誰かが急に動いた弾みで机が倒れ、十円玉から指を離してしまった。




 ひらひらと舞い落ちた五十音の紙。

 その『し』の部分は、まるで鉛筆で強くぐるぐるぐると○印で囲んだところを、十円玉でかき回したようになっていた。



 なんだこれはと一同が喚くなか、Gさんは手に違和感があった。

 それは十円玉においていた利き手の方ではない。

 そのまま視線を逆手の方におろすと、見覚えのない女児ものの鉛筆を握っていた。 




「もう頭がパンクしそうでしたよ。だって、当時のぼく、女子から嫌われてて誰も一緒にこっくりさんやってくれませんでしたもん」


 もはや声も出せずにGさんは「あ…あ…」と握りしめたえんぴつを皆にみせた。

 しかし、誰もがそれをみても無視するので、さらに怖くなったGさんは二度とこっくりさんの類いには手を出さず、今日までこの話は胸にしまいこんでいたという。

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