第二十一話

 これまた先述のGさんの体験。


 仕事終わり、帰路についていたとき。

 溜まりに溜まった疲れからか、その日に限ってGさんの足取りはふらふらしていた。


 あー。自分ももう歳かなあ。

 そんなことを心のなかで嘆いていると、足がもたついて倒れかかった。




 足取りがおぼつかないなか、ふと自分の足元が目にはいる。




 小学生や運動するおじさんが履きそうなくたびれたランニングシューズ。






「あれ?これ俺の靴じゃないぞ」


 そう思った途端に、車道に飛び出しそうな足取りが急にピタッと止まり、目の前を自動車が猛スピーチで突っ切って電柱に衝突した。


 急いで救急車を呼んでいる最中、自動車から若い女性が降りてきて、ふらふらと倒れこんだそうだ。


 結局、いままで履いていた革靴はみつからず、覚えのないランニングシューズだけが残った。

 気味が悪くてその靴はお焚きあげしてもらったという。





 決して靴をはきかえることのない職場で働くGさんと、事故を起こしたYさんから聞いた話。



奇譚-『無意識』-

 各原題『うら“ない”』、『ぐるぐるぐる』、『俺の靴』

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