第五話

 Mさんが喫茶店で一服するときの話。




 外を眺めると人の往来がある。


 老若男女様々な人がいるわけだが、Mさんは、とりわけ子供に目がいくそうだ。




「その喫茶店だけのことだし、自分にしか見ないっぽいんだけど」




 喫茶店からみる往来、そのなかでも足取りがおぼつかない子供、その足元をよくみると、白い木板のようなものが「とてとて・・・」と歩いているそうだ。




「消しゴムとか、キャラメル箱、ああいう縦長のものが左右交互にひねりながら、『とてとてとて・・・』って、まるで歩いている感じなんです」




 男の子だったり、女の子だったり、性別に関係はなく、ちょうど幼稚園にあがる前ぐらいの子供の後ろに、ソレがぴったりと付けまとっているそうだ。


 とくにそれだけで他には何もない。が。




「子供の後をつけている『とてとて札』。誰かがうっかり踏んじゃったとき、何が起きるのかな~って」




 それだけが気になっているMさんは、いまもその喫茶店に入り浸っている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る