第六話
大学生のTさんが、夏休みに夜勤のバイトを終えたときのこと。
帰宅しても、すぐに布団に入って休日を終えることを予見したTさんは、フラフラの体を引きずりながら、最寄りの百貨店に開店時間とともに駆け込んだ。
昨今の不況の影響か、開店したばかりの百貨店はたいへん静かだった。他のお客さんに会うこともなく、眠気と闘いながらどうしても欲しい品物を探し回ったTさんだったが、とうとう目当ての物をみつけることは出来なかった。
諦めてお店から出たとき、ムワっとした外気がTさんを襲った。
思わず顔をしかめたTさんだったが、次の瞬間、違和感に気づいた。
目の前に暗闇が広がっているのだ。
ところどころに電灯がともっている。
「え!」と立ち止まったTさんの脇を、他のお客さんが後ろから出てくる。そして、後方からは『蛍の光』と、「ご来店ありがとうございました」とのアナウンスが聞こえる。
こうしてTさんの休日は終わったという。
奇譚-百貨店-
各話原題『膨れたマネキン』、『とてとて札』、『ある休日』
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