Chapter.4 水族館編
あっ、こんなところにいたんだ、後輩くん! いやはや、不定期開催みんなで写真を撮りに行くイベントにご参加くださって、どうもありがとうございますね。先輩として嬉しい限りだよ。
ところでチンアナゴってさ、可愛くね? 後輩くんもう見た? あの砂の中からにょきっと生えてる感じ、まじで可愛いよね。後輩くんの五百倍は可愛いよね。あははっ、何その不満げな顔! キミってボクに可愛いって思われたい訳? 可愛いところあんじゃーん、あっ今可愛いって思われてんね、よかったね!
折角だし一緒に回ろーよ。ふふっ、こんな美人の先輩と一緒に水族館を回れるなんて、正直めっちゃ嬉しいでしょ? え、そうでもない? むー、どうしてそういうこと言うんだよ、怒るぞ! ……あ、冗談ですって? そ、そんなの初めから見抜いてましたし!
あ、見て見て後輩くん、メンダコいるよ! あの絶妙な赤さがキュートだよね。ねえねえ、ボクとメンダコどっちがキュート? あははっ、そんな面倒そうな顔しないでよー! ……え、室町先輩に決まってるじゃないですか、って……そ、そんな直球で言われると照れるというか。む、むむ、何笑ってるのさ!
言っておくけどね、ボクはキミの先輩だからね? 何が言いたいかというと、ボクの方が強い立場なんだから! 後輩くんはボクにひれ伏していればいいんだよ? ちょっと、いつまで笑ってるの!
と言うか後輩くんって意外と笑うよね、無表情キャラっぽいところあるのにね。……え、ボクの前だから? そ、そうなの、ありがと……?
……あっ見て見て後輩くん、でっかいマンボウがいるよ! すごー、マンボウってこんなにでっかいんだ、美味しいのかな? ん、何その呆れた顔?
いやだって定番でしょ、水族館に来たら美味しそうかどうか考えるの。え、定番じゃない? いや定番だから。世界はボクを中心として回っているのでボクが定番って言ったらそれはもう定番だから。
そういえば後輩くん、なんか写真撮ったの? 見せて見せてー、どれどれ……あっ、イワシの群れじゃん! これ全部刺身にして食べたいよね、お腹空いた。
あ、あっちの方にクラゲコーナーがあるよ、一緒に行こ!
わあ、青色の照明も相まってめっちゃ幻想的だね! 何というか、恋とか生まれちゃいそうな感じ。……え、あ、いや今のは言葉のあやで! こ、後輩くんのこととかボク、何とも思ってないし!
え、何でちょっと寂しそうなの? そんな顔されると、ボクもちょっと寂しくなっちゃうな……何だろこれ……ああいや、何でもない、独り言!
というかクラゲっていいよね、なんか何も悩みとかなさそうで。え、室町先輩にも悩み事があるのかって? 失敬だなあ、人間なんだしそれなりに悩むことくらいありますよ。
……いつでも相談してくださいね、って……後輩くん、優しいとこあんじゃん! 一ポイントくらい評価上がったよ、一億ポイント獲得まで頑張ってね?
そうだ、折角だし写真撮っとこうかなあ……よっと。
(シャッター音)
よし、撮れた! えへへー、これでいつでもクラゲを見れるって訳だね。あっそうだ、後輩くん、ちょっとこっち向いて?
(シャッター音)
あはは、ばっちり! いや、ボクって後輩くんの写真一枚も持ってないなあって思って。折角だし一枚くらい持っといた方がいいじゃん? 友達にキミの話するときとかさ。
……え、何の話をしてるのかって? べ、別に大した話はしてないからね! 勘違いしないでよ、あくまで世間話として話してるんだからな!
そういえば後輩くんは、どの海洋生物が一番好きなの? ……あー、なるほどね、鯨ね! それはちょっと水族館にはいない気がするね、残念! まあでも鯨はロマンだよね、なんか可愛いよね。デカいしおっとりしてそうだし、仲良くなれそうな気がする。
ん、ボクの一番? そうだなあ……悩ましいけどペンギンかな。あのてちてち歩きがまじで愛おしい。来世はペンギンもありだな。金持ちの家の猫でもいいけど。
というかペンギンはどこいんの? もうちょい先? まあ水族館にペンギンがいない訳ないし、流石にどこかしらにはいるか。よーし、ペンギン探して彷徨おう、後輩くん!
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