Chapter.3 お出掛け編
(そよ風によって、自然が揺られる音)
ごっめんごめん、お待たせー! いやあ三十分も遅刻しちゃって悪かったよ、許して! でもね、女の子には色々準備があるんだよ? まあ主な遅刻理由としては寝坊なんだけど……あはは、そんな目で見ないでよ!
ん、髪型? ああ、そうそう、今日はポニーテールにしてみたんだ。いつも何もアレンジしないで下ろしっぱだからさ、たまにはいいかなと思って。遅刻確定してたから逆に落ち着いて髪結べたよね。ふふ、ごめんって、溜め息つかないでよ!
ほらほら後輩くん、どう? ポニーテールで色気たっぷり、水色のワンピース姿で美しさ満点の雪歌先輩の姿は? どうなのさ! ……え、可愛い? そ、そうやって直球で言われるとなんか照れるな……うう。後輩くんの癖に生意気だぞ!
というかキミの私服姿、初めて見るな。黒シャツにホワイトジーンズか。何というか、素朴だね? 点数を付けるなら六十点くらい? あはは、落ち込むなって!
ボクから高得点を叩き出せるように、次回以降は頑張ってね? まあよく似合ってて、かっこいいとは思うけど……べ、別に何でもない! ほら、さっさと行きますよ!
というかあれだね、初めての撮影場所には公園を選んだんだ。まあボクもここ好きだよ、学校から近いから何回かお散歩に来たりしてるし。だだっ広いし自然多いしね。
後輩くんは自然とか好き? ほーん、好きなんだ、それじゃあ同志だね! 自然ってほんと癒しだよね、まあお寿司の癒しには負けるけど。
そんで後輩くんは、どんな写真を撮りたい訳? ほうほう、自然と動物が同居している写真、か。まあベタだけどいいんじゃない? 動物可愛いし、可愛いは正義だし。
問題はこの公園に動物がいるかってことだよね、いやまあいるんだろうけどさ、ぱっと見でいる訳じゃないもんね。ま、探しますか! 超絶探知能力に優れた雪歌先輩を侮っちゃいけないよー、ふふ。
後輩くんはどんな動物が好き? ああ、猫ね。まあ猫はとにかく可愛いよね、ボクも大好き。……そうだ! ねえねえ、ボクに耳近づけてくれる? あはは、ありがと、それじゃあいくよ……
にゃーん♡
っぷ、あはは、めっちゃ動揺してんじゃん! 可愛ー! ねえねえどうだった、猫ちゃんな雪歌先輩は? 可愛いっしょ?
というか後輩くん耳弱いんだね、覚えとくよ。あはは、そんな目で見ないでよー、ごめんごめん。キミって何だか、ついついからかいたくなっちゃうんだよね!
あっ、見て見て、あそこに沢山の鳥さんがいるよ! どうやら鳩の群れみたいだ、広場に集まってるね。折角だし撮ってみようよ。
ゆっくり近付いて……ほらほら、シャッターチャンスだよ! スマホを向けてさ、えーとね、ほら、こうやってちょびっと拡大してさ。おっ、いいじゃん、この画角!
(シャッター音)
どう、撮れた? 見せて見せて……うん、いい感じ! 後はね、こういう感じのフィルターとかかけてみるといいよ。ほら、これだけで結構雰囲気変わるっしょ? よーし、この調子で色々撮ってこう!
その前に……えーいっ! あはは、逃げてった。ん、何してるのかって? 決まってんじゃん、鳩たちと鬼ごっこ! いやー、鳩がいるとついついやりたくなっちゃうよねえ。
ん、何で笑ってんの? ……え、ボクが子どもみたいだって!? そ、そんなことないもん! ボクはね、見た目も中身も超絶大人ですから! むう、さらに笑いやがって……
あっ、後輩くん、あそこわかる? 猫! 猫いる! かーわいー、めっちゃ可愛ー! ほらほら、この機会を逃しちゃいけないよ、撮り行こ!
うわあ、近くで見るとさらに可愛いな、やばいな……えっ、待って、ひっくり返った! お腹見せてる……警戒心ゼロかよ、ボクたちが悪人だったら大変だぞ?
とは言ったもののそんなことどうでもいいレベルに可愛いな! ほら後輩くん、撮りなよ! もう十枚くらい撮っちゃえ! ボクも撮る!
(何回かのシャッター音)
はああ、いい写真が撮れた。ほんと猫って可愛い、可愛さの暴力。ちょっと近付いても逃げないかな? うん、逃げないよね、そろりそろり。うっわあ、ほんとに可愛い、えへへ、ごろにゃーん……
(シャッター音)
ん、え、待って今ボクのこと撮った? 可愛かったから、って……まあ別にいいけどさ、その写真報告会には出すなよ、冷やかされたらめんどいし、なんか恥ずかしいし……あーもう、後輩くんもこっち来なよ! 一緒に猫を愛でよう!
……あ。え、いや、何でもないよ。あそこの家族連れ、ちょっと見てただけ。ほら、あっちの砂場にいる、ご両親と女の子の。
……家族っていいよね。ボクもいつか、誰かと家族になれたらなあって思うよ。それでずっと、生きるの。ずっとずっと生きて、笑い合うんだ。
あー、なんかしんみりしちゃった、ボクらしくない! あっしかも、猫が急にすたすたとこの場を去った! 気まぐれだなほんとに。まあそういうところも可愛いんだけど。
追いかけよ、後輩くん! ほらほら早く立って、置いてくよー! あははっ!
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